adamomanのこだわりブログ

特撮ヒーロー、アメコミヒーローを中心にこだわりを語るストライクゾーンの狭すぎるブログ

ウルトラ兄弟の功罪〜なぜ新マンはぺったんこにしぼんだのか〜

◆カラータイマーを取られるとしぼむのは本当か?

ルトラマンタロウ52話「ウルトラの命を盗め!」にて、帰ってきたウルトラマンのカラータイマーが怪獣ドロボンに奪われるという珍事が発生。更にその後、ウルトラマンはぺったんこにしぼんでしまった

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ウルトラの命を盗め!

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この描写をもって、「トリビアの泉」では「ウルトラマンはカラータイマーを取られるとしぼむ」というトリビアが紹介され、一躍話題となった。

だが、これを全シリーズ共通の「設定」と捉えて良いか否かについては解釈が分かれるところである。

過去シリーズを遡るとすれば、ゼットンにカラータイマーを破壊された初代ウルトラマンがまず挙げられるだろう。「取り外し」ていないとは言え、その破壊は、完全なる死をもたらすことが象徴的に描かれた。

事実、ゾフィが持ってきた2つの命によってウルトラマンは辛くも蘇生している。カラータイマーを元に戻せば生き返るような単純な構造ではないのだ。

 

次いで挙げられるのがウルトラマンエース27話「奇跡!ウルトラの父」におけるウルトラの父の死であろう。ここではウルトラの父が自らの意思でカラータイマーを外し、兄弟たちにエネルギーを分け与える場面が描かれた。そしてその後、やはりウルトラの父は死に、ウルトラ兄弟たちの手でウルトラの星へとその亡骸が運ばれることとなった。

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ここでも、その体がペラペラにしぼむこともなければ(逞しい大胸筋は健在のまま)、カラータイマーを付け直すことで生き返る描写もない

 

では、なぜ「ウルトラマンタロウ」においてのみそのような描かれ方がなされたのであろうか。

そこには、ウルトラシリーズが抱える厄介で複雑な問題が横たわっている。それは、バラバラだった作品群を一つに束ねる「ウルトラ兄弟」という設定の存在と、各作品が固有に持っている「作風の違い」という相反する二者の対立だ。そして一般的には前者の方が強く押し出され、後者は言外のものとして語られる機会は少なかったように思う。今回は、これらを同時に包括して分析したい。

◆ウルトラ兄弟という設定

ルトラ兄弟という設定は、ヒーロー界においては非常に特殊な生い立ちをもって成立している。児童誌の編集者らが雑誌内で展開した「実はウルトラマンたちは兄弟で、ゾフィが長男、次男が…」というものを公式が逆輸入したものだと言われている。当時の児童誌がいかに力を持っていたかが伺い知れるエピソードだ。

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考えてみれば当然のことかもしれない。現代と違い、スマホはおろか、録画機能すらもない時代。児童誌で情報をとことん先取りし、定刻通りにテレビにかじりつき、もう一度雑誌を読み返す。わかったようなわからないような「隙間」を、多彩なスチールと情報で埋めてくれたのが児童誌だった。

公式がこの設定を利用したのも当然だったであろう。1年ごとに終わる各作品を「兄弟」という設定で貫けば、過去作品のキャラクターがゲスト登場するイベントの盛り上がりは視聴率へ、そして関連グッズ販促へ、とメリットづくしだったのだ。

◆各作品が持つ「固有の作風」

ルトラ兄弟」という設定の誕生によって、それまで1年ごとに終わっていた各作品の壁が溶け、全てが一連の繋がりを持った「ウルトラシリーズ」として串刺しにすることができるようになった(それはまるで近年の「仮面ライダーディケイド」や「海賊戦隊ゴーカイジャー」、そして「仮面ライダージオウ」の先駆的存在)。

しかし、同じ時間軸=共通した1つの世界線に落とし込むには、各作品があまりにも個性的であった。ここからは、通称「第二期ウルトラシリーズ」と呼ばれる3作品の作風の違いを振り返りたい。

◆帰ってきたウルトラマン

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「帰ってきたウルトラマン」では、主人公・郷秀樹の人間的な側面が掘り下げられ、悩み、へこたれ、その度に強くなっていく新たなウルトラマン像が描かれた。これはhttps://www.adamokodawari.com/entry/2019/11/22/161435

でも紹介した通り、怪獣が主役の「怪獣モノ」として始まった初代「ウルトラマン」とも全く違っており、意外に思われるかもしれないが、本作が本格的に「ウルトラマンが主役のヒーロー路線」へと脱皮した作品でもあった。

時代背景も、初期ウルトラシリーズにあったような「近未来設定」ではなく、視聴者の日常と地続きの昭和の日本が舞台となった。それもあってか、怪獣そっちのけで人間ドラマが掘り下げられた見応えのあるエピソードも多い。

また、ウルトラ兄弟の概念が初めて登場した作品でもあり、主人公の苦戦に駆け付ける先輩戦士という展開は、本作で先鞭付けられたとも言える。

◆ウルトラマンエース

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続く「ウルトラマンエース」では、前作の「ヒーロー路線」と「ウルトラ兄弟路線」がより押し進められた。更にウルトラマンたちのヒーロー性が「キリスト教的自己犠牲の精神」と結びついた結果、ウルトラ戦士が地球のために死にまくる描写が非常に多い。

特に14話はキリストへのオマージュが大量に盛り込まれたエピソードとなっており、26話のヒッポリト星人の回も含めてよくウルトラマンが死んだ。ウルトラの父なんか初登場で死んだ。前作でも「負ける」ことは多かったが、死ぬことはほとんどなかった。ウルトラ戦士の死=自己犠牲の姿を通してそのヒーロー性を強調する展開は、本作に際立った特徴と言えるだろう。

◆ウルトラマンタロウ

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そして第二期ウルトラブームの頂点に「ウルトラマンタロウ」がある。しかし本作を「ウルトラシリーズ」としてのみ位置付けると評価を誤ってしまうかもしれない(「荒唐無稽な物語が多い」だの「セブンの頃のような硬派なSF描写が死んだ」etc)。

確かに、各種円谷作品には「ウルトラQ」や「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」だけでなく、「マイティジャック」を始め、「怪奇大作戦」といったウルトラシリーズ以外の作品群も含め大人の鑑賞にも耐え得る「硬派なSF作品群」が多々あった。

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しかしその反面、一部エピソード(「カネゴンの繭」etc)や「快獣ブースカ」といった「ファンタジー路線」、或いは「現代版お伽草子」といった趣の作品群もまた円谷プロのお家芸だった。

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そして、本来硬派なSF作品から派生したウルトラシリーズが、ファンタジー色の強い「現代版SFお伽話」へと融合・進化を果たしたのが「タロウ」だった(※事実、「タロウ」は円谷プロ創立10周年記念作品としても制作された、いわば当時の円谷プロの総決算たる作品でもあった)。

つまり私が強調したいことはここにある。そういうスタンスの作品であると了解の上で見るのと、「ウルトラマン」(or「ウルトラQ」)から続くシリーズの一つとして見るのとでは、評価の仕方が変わってしまうということだ。「タロウ」は言うなれば「ウルトラ昔話」、或いは「ウルトラ妖怪物語」とも言える唯一無二のバラエティ豊かな作品であり、無理に過去作全てと繋げて見る方が、本当は不自然な作品なのだ。

例えば、エレキングにしがみついて生身で戦うウルトラ警備隊なんていなかったし、ベムスターにトリモチを使おうなんてMAT隊員もいなかった。

逆もまた然り。カラータイマーを奪われたとしても、あの帰ってきたウルトラマンのことだ。本来ならブレスレットで絶対何とかできたはず。

それぞれの作品が持つ作風は、やはりその作品内でしか味わえないものであり、各作品のウルトラ戦士には、やはりその作品の中でしか出会えないものなのだ。

◆ウルトラ兄弟の功罪

れでもややこしいのが、「タロウ」という作品があくまでも全ての作品を同じ世界線上に並べようとしてくる点だ。40話「ウルトラ兄弟を超えてゆけ!」では、各作品の放送日までナレーションしてくる始末。

ウルトラ兄弟を超えてゆけ!

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ウルトラ兄弟という設定によって、ウルトラマンの世界観は一気に広がり、50年の時を超え語り継がれるシリーズとなった。しかしその反面、一連のシリーズとして見ると一貫性のない部分が出てきてしまい、こだわりの強いファンからは反感を買う面も多分にあった(リバイバルブームの度に「ウルトラ兄弟」は黒歴史扱いされることが多かった)。

だがその大枠をあえて取り払い、個々の作品の個性を捉え直す中で、それぞれの「味わい」が出てくる。

冒頭で紹介した、ぺったんこになるウルトラマンもその一つかもしれない。「ウルトラ昔話」としての世界観を持った「タロウ」の中では、ウルトラマンもまた「童話のキャラクター」の1人となる。

そもそも呼び方も違ったではないか。彼は「帰ってきたウルトラマン」ではない、「新マン」なのだ。

妖怪のような魑魅魍魎跋扈する白昼の地獄変=「タロウ」の世界観においては、我らがウルトラマンもまた常識を超えた不思議なイキモノであり、カラータイマー1つでしぼんだりふくらんだりしてもおかしくないのだ。

そう捉えてしまった方が、声も違えば目の色も違う、あのなんだか頼りないスーツの先輩戦士たちの姿にも妙に納得がいく。

※独自の世界観を築いた「楳図かずお版ウルトラマン」もその好例。

何か違う、けどこれはこれで良い。

そういう楽しみ方が一番丁度良さそうな気がする。

ウルトラマン 上 (講談社漫画文庫 う 5-9)

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