時は2000年。
斬新な設定、演出、大人顔負けの濃厚なストーリーで記念碑的作品となった平成ライダーシリーズ第1弾、「仮面ライダークウガ」。
既にその魅力は随所で語り尽くされているものの、当時リアルタイムで熱狂していた身としては、「ここだよここ!」という部分がある。「そこかよ?!」というのも含めて今後連投していきたいと思う。
私なりの、放送20周年を記念した「お祝い」のつもりで書きたい。
◆なぜ超古代の戦士なのか〜90年代オカルトブームを背景に〜
90年代から00年代にかけてリブート、復活した特撮ヒーローには、超古代文明出自のものがやけに多い。
「平成ガメラ3部作」と「ウルトラマンティガ」、そして本作「仮面ライダークウガ」がそうだ。
「超古代文明」という言葉には、独特の響きと説得力がある。
これはかなり個人的な偏った捉え方かもしれないが、90年代というのは「ノストラダムスの大予言」を始め、超古代の言い伝えだのオーパーツの存在だの宇宙人がかつて地球に飛来しただのと、オカルトっぽい話題にも事欠かなかった時代でもあった。
例えば「特命リサーチ200X」という番組をご存知だろうか?
宇宙人やUFOの存在。ビッグフットやチュパカブラといった未確認生物=UMA。バミューダトライアングルやキャトルミューティレーションを始めとした怪奇現象。ナスカの地上絵やクリスタルスカルといった数々のオーパーツや古代文明の謎。更には動く掛け軸の女といった心霊現象に口裂け女といった都市伝説。果ては「なぜ死の危機に瀕すると人生が走馬灯のように蘇るのか?」など、人体の未知なる不思議から、ダイエットのコツに至るまでの生活の知恵。
佐野史郎をチーフに高島礼子や稲垣吾郎といった安心かつミステリアスな布陣で送る、様々な超常現象を科学的に解明するドキュメンタリー風の解説番組だ。
そんな番組が毎週やってたもんだから、「超古代の〜」なんて言われるとそりゃあ「不思議で凄いものなんだろうな」って、スッと自然に思えた。
大晦日の年末特番だって、紅白、K-1ときて、「たけしの超常現象〜」が続いていたような時代。90年代も終わり頃=世紀末ともなると、どこかオカルトっぽい雰囲気が漂っていた。
そんなオカルト趣味は、仮面ライダーが元々持っていた「怪奇性」との相性も良かった。それでいてヒーローらしさを彩る「神秘性」をも纏わせることができる。
結局どれだけリアルな世界観を構築しても、所詮虚構は虚構。けれど、「超古代の戦士」というパワーワードには、「何でもアリ」をも許容し得る懐の大きさがあった。
◆リント文字によって彩られた作品世界
そんなクウガのスーツや武器やベルトには、作品の象徴としてのリント文字が至る所に刻まれた。ヒーローは歩く碑文なのだ。クウガの存在そのものが、未知の古代文字で彩られたオーパーツだったのだ。
リント文字そのもののデザインも素晴らしかった。曲線と円を中心に構成された、わかりやすい象形文字タイプに加え、漢字の「へん」のようなパーツ構成の文字も見られ、かなり作り込まれていることがわかる。争いを好まない、それどころか「戦う」ということすら知らぬ平和な農耕民族という設定と見事にマッチした、どこか温かく神秘的なデザインだった。
番組開始を告げる「テレビを見るときは、部屋を明るくして…」のメッセージも、10文字のリント文字を画面中央に配置(勿論日本語字幕を下部にテロップ)して告知。
終了時は「つづく」の文字を表音文字バージョンの3文字で表示。ちなみに表音文字は[ ]の中に鏡写しにしたカタカナを入れているだけなので、ルールさえわかれば桜子さんでなくても即解読可能。
リント文字は、劇中設定の古代文字という以上に、作品世界を象徴する一種のキャラクターにすらなり得たと思う。
映像作品からでは知る術のない「リントの存在」を肌で感じさせてくれたのが、劇中あちこちに登場したリント文字だったのだ。
オダギリジョー演じる五代雄介の、「泥臭く一生懸命戦う戦士の姿」を、リント文字で彩られた物言わぬ大きな世界観が包み込む感覚。神秘的でどこか温かい光が、常にクウガという戦士には漂っている。
◆古代文字の解読
フォームチェンジを始めとした様々な特殊能力、武器の発動には劇中、大きく2つのケースが見られた。
①五代雄介が無意識に能力を発動、その由来や詳細をリント文字で知るケース(→青のクウガ、緑のクウガ、ゴウラム)
②リント文字解読が先で、それを元に戦略を立てるケース(→青のクウガの武器、紫のクウガ、究極の闇をもたらす者)
どちらにせよ、リント文字の解読がストーリーの大きな鍵を握っていたのは確かだ。
例えばメビオ(ヒョウ種怪人)なんかはその俊敏性が武器なのだから本来青の力で倒せそうなものだが、まだ青の能力に目覚めていなかったため、トライチェイサーを駆使した赤のクウガで倒している。
また、体を透明にできるガルメ(カメレオン種怪人)に至っては、最初のゲゲル参戦時に緑の能力に目覚めていなかったため取り逃がし(劇中では語られるのみで映像化されていない)、ゲゲルに成功(唯一?!)、ズ集団からメ集団への昇格を許してしまっている(緑の力がなければ透明化したガルメは発見できない)。
このように、リント文字の解読=クウガの能力の解明であり、それ抜きにクウガは己の能力の全てを発揮できないのである。
初戦で武器を鮮やかに使いこなし、全能力をなんの説明もなしに発揮するこれまでのヒーローモノと決定的に違うリアルなこだわりがここにある。
※鎧武1話で戦極ドライバーを拾った主人公の「これベルトのバックルみたい」(特撮脳)とか。
いやどうみてもベルトのバックルには見えんでしょというツッコミも含めてこれはこれで大好き。
その設定が最もアピールされたのが第6話「青龍」。
初めて青の力が発動し、バヅー(バッタ種怪人)のスピードとジャンプにはついていけたものの、青では攻撃力が半減、全く勝ち目がない。赤では負けるし、青でも勝てない、そんな窮地のクウガの元へ、解読結果を伝えに桜子さんが登場。
「水の心の戦士、長きものを手にして敵を薙ぎ払え!」
あの一言で手すりを振り回そうと思うのも中々だが、まさか手すりが武器に?!という映像的な斬新さとクールなCG、そして起死回生の大逆転に大興奮!
かくしてクウガは勝利を収めた訳だが、この場面でもって桜子の役割が明確化(いずれ戦闘の激化に伴って空気化するヒロインとは違う)、桜子の解読がクウガ勝利のカギとして不可欠なのだ。
◆超古代文明への科学的アプローチ
クウガが更に面白かったのは、そんな超古代文明を科学的に解明しようとした点だ。
榎田の研究で、クウガやグロンギの変身と武器の生成は、物質や身体を一旦分子レベルまで分解してから再構成していたことが判明。
更に、グロンギの弱点が腹部神経の断裂にあると見た榎田らの研究開発で神経断裂弾が完成。見事グロンギの打倒に成功しており、直撃時の音(SE)はクウガの封印エネルギー注入時と酷似。言うなれば人類は神秘なる封印エネルギーの銃弾化に成功した訳だ。
アメイジングマイティへの強化も、「再び電気ショックを受ければ五代の意思とリンクした霊石がもっとクウガを強くするのでは?」という仮説に基づいたもの。これも無茶なようでいて実際はかなり合理的な科学的判断。霊石の特性を学んだ五代は、その神秘を科学的に利用して更に強くなるのだ。
椿の元で毎度見せてもらうレントゲン写真も良かった。常人とは違う体内の写真を劇中で見せてくれた作品を、私はクウガ以外に知らない。
病室のレントゲンという、我々の日常の延長で見せてくれるから入り込める。クウガの能力も、医学的見地から「症状」として語られるからリアルだし緊張感も途切れない。
「超古代文明由来の超科学」と言えど、その現象の数々は現代の科学でも一応の説明がつく。だからこそ、現実味を帯びた独特の世界観が完成する。ただのファンタジーでは終わらせない。そこもやっぱりクウガの大好きなところだ。
◆先代クウガの謎
先代クウガの戦いにはあまりにも謎が多い。
よく議論になるのは以下。
・先代はどうやってグロンギを殺さずに封印したのか?
・「究極の闇」にならずどうやってダグバを封印した?自らを楔にして封印するとはどういう能力?
・なぜダグバとクウガは酷似している?
・そもそもアマダムという鉱石をどう入手or発明した?
・リントとグロンギの関係とは?
これらの謎に半分答えを出そうと試みたであろう公式ムック本が「S.I.C. HERO SAGA」だ。

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ここではその詳細は割愛するが、それでも多くの謎は残される。
ただ、一つ参考になると思われるのが、「超全集」に掲載のスタッフインタビュー記事にあった、「超古代の戦いは『中途半端』だった」という結論。

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「殺す」どころか「戦う」という概念すら持たなかったリント。だから「戦い」をただ一人の青年に託した。
しかしその青年もまた、リントの清らかなる心を持った戦士。変身者の意思を具現化するアマダムの特性から考えても、必殺技によって注入される封印エネルギーが「活動停止」或いは「休眠状態にする」という中途半端な攻撃にならざるを得なかったのかもしれない。
霊石アマダムは変身者の意思をダイレクトに反映させて能力を顕現させるため、先代クウガのマイティキックには、腹部神経断裂能力は無かったと思われる(あったらグロンギはとっくに全滅している)。
結果「殺せないクウガ」は、グロンギの大半を地中に鎮めることとなったのだろう。
◆引き継がれる魂
ダグバがクウガを恨む気持ちもよくわかる。ダグバもまた誇り高き戦士。負けたにもかかわらず「殺してくれなかった」訳だから、ダグバにとっては屈辱。否、殺されていない時点で、決着すら着いていないと思っているかもしれない。
そんな中途半端な戦いだったからこそ、2000年に再び悲劇を引き起こす結果となった。
しかしアークルには、先代クウガの「動き」、「戦い方」、「技」までもが記録されていたのではないか?と個人的には考えている。
戦いのド素人であったはずの五代雄介が、突然手にした力で見事に戦っているのが不思議ではないだろうか(五代の2000の技が成せる結果との見方もあろうが)?
マイティフォーム起死回生の肘打ちや、ドラゴンフォーム独特の構え、鮮やかな棒術など、五代が元々持っていた能力ではなく、先代の戦いの記憶が彼を導いているのではないだろうか?臓器移植を受けた患者が、ドナーの記憶を引き継ぐこともあるという、アレに近い発想だ。
現に、変身ポーズやゴウラムの記憶等、様々な場面でアマダムは五代に「映像」を見せている。そのようにして意識に直接働きかけるケースもあれば、無意識に影響を与えている可能性も十分あり得る。
その最たるものが、48話「空我」で見られたダグバとの対話シーンだ。
「だったらあそこで待ってるよ。思い出の、あの場所でね」
と語って消えたダグバに対し、五代は「ダグバは九郎ヶ岳にいる」と断定した。このとき、瞬間的に先代クウガの意識が五代を支配していたようにも見える。一年かけて、五代の意識は先代クウガの意識とも一体化していったと考えられなくはない(まるでウルトラマンのように)。
誰も殺せない己の中途半端さを呪うような気持ちで、先代クウガは自らを棺に封じ込めたのだろう。
その想いが五代の体にも宿り、戦いを続けているのかもしれない。
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