相変わらずニッチすぎるだろうテーマです。「帰ってきたウルトラマン」第41話に登場したバルタン星人Jr.の生死について、そして更にはこの時期特有のモッサリした二代目スーツの魅力と昭和マルチバース説について語ります。
第41話のあらすじや概略については省略。
◆大爆笑した迷シーン
第41話終盤、見事ビルガモを倒したウルトラマン。しかしいつものように飛び去ることなく何かを警戒。そう、真の黒幕・バルタン星人の気配を感じ取っていたのだ!
というわけで満を持してウルトラマンの前に現れたバルタン星人Jr.。
「まだ試合は1回のオモテだ!」
などとやたら地球人くさい饒舌な態度で誰も質問していないことをペラペラと喋り倒したかと思うと宙空ヘ飛翔。誰の目にも、
「そうか…バルタン星人はしつこく地球を狙い続けていたんだな!くそう、この決着はいつかまた…!!」
なんて思っていたらバルタンの背中に容赦なくスペシウム光線ぶちかますウルトラマン!www今ここで殺る気満々やないかいwww
しかも喰らったバルタン、爆発とも逃亡ともつかない十時の光を残して消滅。
え、死んだの?逃げ切ったの?
間違いなく帰ってきたウルトラマン史上TOP10には入るであろう超名シーン(迷シーン?)です。
◆へんてこなバルタン
ところでこのバルタン星人Jr.、バルタン星人と呼ぶにはちょっと変です。
ハサミが細くて小さいし、なんだか全身黒光り。顔は初代に近い形状をしていますが両腕を上げたときのハサミの向き(ハサミの裏側を前に向けている)は二代目を思わせるもの。ちなみにこのスーツ、ウルトラファイト版がベースになっているそう。だからか、総じて初代や二代目が持っていたシャープなカッコよさや不気味さがまるでありません。
とは言え見た目はしっかりバルタン星人しているんですが、何よりおかしいのは声。
おなじみの「フォッフォッフォッ…」ではなく「ハハハハハ!」と日本語で高笑い。過去のバルタンがみな、人間に憑依することで日本語を操っていたのに対してこのバルタンは本人が直接日本語を話しています。
不気味さやカッコよさを薄めたちょっとダサい三枚目な感じ。そう、これこそが「第二期ウルトラ」と呼ばれる70年代作品群に見られるコレジャナイ感漂う二世怪獣シリーズの特徴なのです!
◆第二期ウルトラ「星人系」
このバルタン星人Jr.、本当に我々の知っているバルタン星人の息子なのでしょうか?バルタン星人Jr.って初期ウルトラシリーズのキャラっぽくないし、むしろこの頃から登場し始めた「星人系」の特徴にこそあてはまります。
「星人系」というのは、同作でいえばグロテス星人、ストラ星人のような、饒舌な悪代官のように妙に人間臭くて作戦もどこか間抜けですがやってることは残酷という70年代らしいシュールな侵略宇宙人の系統です。
この系譜は初代ウルトラマンやウルトラセブンにはあまり見られなかった宇宙人の特徴なので「帰ってきたウルトラマン」〜「ウルトラマンレオ」に登場する宇宙人たちの特徴を総称するかたちで「星人」と呼ばれることが多いようです。
※同作のゼラン星人や「エース」の異次元人ヤプールのように、この系統ともやや異なる異星人も存在します。また「レオ」の頃になると「東京B地区を夜な夜な徘徊する通り魔」へとその意味合いは変化していきます。
つまりバルタン星人Jr.は、第一期シリーズの超有名人気キャラクターたちが持つ「ブランド性」と、第二期シリーズの「星人性」が融合した記念碑的存在でもあったのです。
◆ウルトラマルチバース
バルタン星人を名乗っているくせにキャラが全然バルタンっぽくないバルタン星人Jr.ですが、これについて私は「ウルトラシリーズは全てマルチバースだ」という風に解釈しています。
これは新マンぺったんこ問題考察からの派生的・発展的結論だとも言えます。
要は、各作品の世界観はそれぞれの作品の放送期間=約1年の中で完結している閉じた世界で、「ウルトラ兄弟」のような作品をまたいだ共通設定がいくら登場しようとも全ては独立した別世界として存立しているという解釈です。
しかし「帰ってきたウルトラマン」の世界観の数年前に、ウルトラマンやセブンが地球にいたのは紛れもない事実のようです。
これに関しては、「帰ってきたウルトラマン」の世界における初代ウルトラマンとウルトラセブンは、いわば「アナザーウルトラマン」、「アナザーウルトラセブン」というマルチバースとして存在していると考えることができます。
つまり、我々が知っている初代ウルトラマンと、次郎くんが知っている初代ウルトラマンは実は別人だったかもしれないということです。
更に言えば、翌年「エース」に登場した次郎くんも「帰ってきたウルトラマン」の世界が派生し得たマルチバースの一つに過ぎず、郷さんとの約束通りMATに入隊した次郎くんもどこかのマルチバースにいるのかもしれないのです。
そして今回の件で言えば、初代ウルトラマンがバルタン星人を全滅させ損なっていたとしたら?という世界(マルチバース)の延長にこの「帰ってきたウルトラマン」の世界があるのです。
おそらくこの世界の初代バルタン星人は、甲高い声でハハハハハと笑いながらスペシウム光線で大半が死滅、しかし命からがら黒焦げで生き残った子どもがいたのでしょう。
「二代目」ではなく「Jr.」と呼ばれているのも、この世界線にはバルタン星人二代目が存在しなかったからなのかもしれません。
◆バルタン星人Jr.の生死は?
第二期ウルトラシリーズの作品は「ウルトラ兄弟」という概念の登場によって半ば強引に全て同一の世界観として描写されてきましたが、同時に生まれた大量の矛盾点を無視し続けてきました。
ゾフィーのトサカが黒かったのは初登場時だけで「エース」以降の客演は全てウルトラマンと同じシルバーマスクになってしまいました。
エースの救出にきたセブンはウルトラマンと同じシュワッチ声だったし、タロウに登場した兄弟たちは全員目が黄色でタロウと同じ声でした。
そういった不整合も全て、各作品が実はマルチバースというバラバラの世界だったと考えれば概ね理解できます。
ところで、結局のところあのバルタン星人Jr.は逃げのびたのでしょうか?あそこで死んでしまったのでしょうか?
なんと彼、「もしバルタン星人Jr.が生きて逃げのびていたとしたら…?」という解釈のもとに描かれた内山まもる漫画版には、再登場しているらしいのです。
それも含めて考えると、あの十字の光を残して消えたJr.は、また別のマルチバースへとワープしてしまった、なんて新解釈もできないでしょうか?時空の狭間に吹き飛ばされたバルタン星人Jr.は、漫画の世界でウルトラマンと再戦を果たしているのかもしれません。
じゃあ、なんで70年代に入ってからウルトラシリーズの各世界にマルチバースの扉が開いたのでしょうか?
その原因として、異次元人ヤプールの侵攻が考えられるかもしれません。彼らの住む異次元と地球が接触を始めたことで時空が歪み、様々なマルチバースから過去の怪獣・宇宙人までもが呼び寄せられてしまった。しかし同時に、ウルトラ戦士たちもまたマルチバースから駆けつけた…なんて解釈広げていくのも楽しいな〜なんて思いつつとりあえず今回はここまで。
あくまでこれらは私個人の妄想です。ただ、そういう妄想を許容してくれる程よい「ユルさ」とか「雑さ」みたいなところが、昭和ウルトラの実に楽しいところなんじゃないかなあと思ってます。
(了)