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リアタイ世代が見た「仮面ライダー555-ファイズ-20th パラダイスリゲインド」:ネタバレ感想と考察〜20年かけて素直になれた2人の物語〜

仮面ライダー555(ファイズ) 20th パラダイス・リゲインド

見てきました!良かった!

20年前、リアルタイムで熱狂していた私だからこそ書ける感想、書いていきたいと思います。ネタバレ含めていきます!

 

 

 

◆ファイズらしさ

まー確かにファイズらしい物語でしたね。スタッフがほぼそのままだから当然っちゃ当然なんですけど。やっぱりファイズは井上御大にしか書けないな。

まず巧がカプセルから出てきてスマートブレインの尖兵っぽい感じで登場するとこなんかはターミネーターみたいでこれターミネーター好きの半田健人さんリスペクト及びハイパーバトルビデオのオマージュですよねわかります(違

とりあえずたっくんがよくわからんけど誰にも相談せず悩みまくった末に極端な行動に走るとことか、変わらないですよね。本編でも「ラッキークローバーに入る!」とか色々ありましたし。

あと、とにかくすぐ家出する。ファイズのキャラってみんなすぐ家出して公園とか橋の上とかに逃げ出すんですが、必ず誰かが見つけてくれて、しかもその2人の会話をもう1人が陰で盗み聞きしてて悪いこと企んでるという展開とか、もうそのまんまでした。

相変わらず迷い悩み続ける青い主人公たちの姿と、PG12だからかちょっとエログロな感じと、でも役者は40手前のオッサンたちっていうアンバランスさ?20周年だからこそ生まれた怪作ですねこれ

 

◆新たな物語

あと本作が「パラダイス・ロスト」の逆転ver.であるというところも面白いポイントでした。

  • テレビ本編…オルフェノクが暗躍し始めた頃の物語
  • パラロス…オルフェノクの支配がほぼ完了した世界の物語
  • パラリゲ…人類によるオルフェノクの淘汰がかなり進行している世界の物語

という感じですよね。だからパラリゲの世界ってテレビ本編最終回の後日談として成立しやすい感じはするんですけど、微妙にそれとも違うパラレルとも解釈できる曖昧さがあるのはうまいと思いましたね。

そもそもカイザギアはテレビ本編最終回で破壊されたはず。

あと、巧がスマブレにさらわれて幽閉されてる感じは、テレビ最終回で中途半端に消化しきれなかった巧誘拐シーンの続きを見ているような感じもありました。

 

◆巧と真理

やっぱり本作で一番インパクトがあったであろう出来事は、真理がオルフェノクになって巧とヤっちゃうことでしょうね(すごい文章)。

ただ、個人的にはこれで良かったと思っています。なんか、「やっとか」という感じがしました。きっとこの2人、20年という時間をかけて、更に2人ともがオルフェノクになって初めて素直になれたんだろうな、というそんな気がしました。

過去「パラダイス・ロスト」の感想でも触れましたが、巧と真理って本当ならくっついて然るべきだとは思ってたんです。

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もちろん2人の関係性は、テレビ版でも劇場版でも「人間とオルフェノクの共存の象徴」ですから、2人がべたべた手を握り合ったとしてもあくまでそれはシンボルとしての演出、そう解釈して飲み込んではきたんですが、実のところ2人はやっぱり男女の関係としてもアリなんじゃないか?とずっと思っていました。

ただ、真理って周りにものすごく気を遣うタイプだし、啓太郎の家に間借りしている中草加なんて狂人まで入ってくるわ同窓生は死にまくるわ自分も死ぬわ巧はオルフェノクだったわ…とかでそれどころじゃなかったんですよね。

劇場版も同様で、残り少ない人類解放軍の先頭に立ってみんなをまとめなきゃいけない、そんな状況下で「女の部分が泣いている」とか言われちゃうんですが(笑)、本当にそれどころじゃないわけです。

巧もまた自分よりも周りを大事にするタイプだから、真理に変な気を遣わせたくないし自分の本心なんか絶対に明かせないわけですよ。

ただ、一番収まりがいいのは「巧✖️真理」だと長らく思っていたので、ようやくそこに対して答えを出してくれたのは嬉しかったです。

 

◆めんどくさいヤツら

改めて思ったけどやっぱ「555」の世界の人間クセ強すぎですよね。

巧がスマートブレインの尖兵というポジションに甘んじてたのって、結局のところ真理に傷ついてほしくないからじゃないですか多分。

オルフェノクを守る生き方はいつか彼女自身を傷つけることになる、そんな心配から、彼女の生き方を変えさせてやりたいという想いがある反面、一度は死を受け入れたはずの自分はどう生きるべきかわからなくなってる。

だったら素直に真理のところに帰ってくればいいのに、オルフェノクを倒す側について行動しちゃうもんだからまた誤解を生んでしまう。そのくせマヨネーズは渡しに来るしさ、ちゃんと思ってること説明しろよ(笑)

20年経ってあんなに渋いオッサンになってんだからいい加減大人になれよ!って感じなんですけど全く成長がないですよねこの人(笑)

更に厄介なのが新キャラの胡桃玲菜です。巧に好意を寄せているようですが、真理が恋敵と知るや、真理を殺害する大義を得るために真理をさらってオルフェノクにしちゃう。とんだヤンデレです。彼女の存在って、オルフェノクでもないただの人間なのにめちゃくちゃ悪いってとこがすごく「555」らしいですよね。

「悪い」っていうか歪んでる。

んでもって井上脚本の世界って、そういう狂人が少しでも人間的な面を見せたら途端に殺されますよね😅

 

◆○○シーン

第35話

やっぱり巧って真理が不幸になったりした途端に自分を見失って暴走しますよね。テレビ本編で真理が死亡したときもそうでした。

本作ではついに真理がオルフェノクになっちゃって(というかならされちゃって)、いよいよあの巧も絶望のドン底から「助けてくれ」って言葉を絞り出すんですが、これだけは巧の20年越しの成長だと思いました

ちゃんと弱音を吐けるって、人として大事ですよね。んで、それをきっかけにしてやっと2人は抱き合えるようになったわけですが…。

まさかオルフェノク態で致すとは思いませんでした(笑)これアリかナシかすっごい際どいラインの演出だな〜(笑)

ただ、これのおかげで「真理はオルフェノクになることでようやく本心から巧と向き合えるようになった」ってことが強調されてる気もします。

でも手を握り合うだけで良かったかな〜キスシーンまではいらんかったかな〜どうだろう?悩むなぁ。多分製作陣も悩んで撮っただろうなって気がしますし半田健人さんがパンフで言ってるのもこのシーンのことだと思うし。

でも、必要なシーンだったことは間違いないと思っています。

 

◆本当のテーマ

なんというか、「仮面ライダー555」という作品の化けの皮がいい意味で剥がれたなぁという気がしていて。結局テレビ本編からずっと巧って「人間とオルフェノクの共存」とかそんなに深く考えて行動してなかったんじゃないかなぁと思いました。

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彼にとって一番大事だったのは、結局のところ真理のことだったんだろうなと。もしくは、真理がいることで保たれる自分自身だったり...ただ単に自分たちを取り巻く日常を必死に守って生きていくってだけの話だったのかもしれないと思いました。そんな「小さな星の話」なんですよきっと。

特にファイズってよく考えると何と戦ってるのかよくわからない作品で、オルフェノクと戦うときもあればスマートブレインと戦うときもあるし、場合によっては人間と戦うときもある。本作のラストバトルはアンドロイド(を操る政府)との戦いでした。

テレビの世界やパラロスの世界では巧って「人間の側に立っている真理の味方」って感じでしたけど、真理がオルフェノクの側に立てば一緒になってオルフェノクを守るし、ものすごくフラフラしているというか日和見というか常にグレーゾーンですよね。

そもそも「人間とオルフェノクだって手を取り合って生きていける!」ってこと(異種共存)がテーマだとすれば、真理は最後まで人間のままでいないと絶対ダメですよね。でも、最後の最後、この20周年作品でそこを崩してきたわけです。そこに本当のテーマがあるわけではないってことです。

巧も真理も、何度も「死」を経験して、バケモノに身を堕としてまでしてようやくお互いがお互いを誰よりも大切に想っていたことに気づけたんだと思います。それが嬉しかった。20年もかかったけど。

何もかもを失って醜いバケモノになった2人が最後に唯一見つけられたのが「抱きしめ合うこと」って美しすぎませんか。やっぱりファイズって人間讃歌だなぁー。パラダイス「リゲインド」(取り戻す)ってこういうことかと。

ただ、はたから見たらそれは「愛」みたいなものに見えるかもしれないけど、そんなたいそうなものでもないと思ってます。もっと不完全で不恰好な、紛い物って感じがします。ただ2人が求めるものが一致する瞬間があった、というだけのことなんだろうなとも。

んでパンフの監督のコメント読んだら「へー、そういう解釈で撮ってたんだ〜」って感じでしたね。

とりあえず本作は巧と真理の個人的(プライベート)な部分に特にフォーカスした作品でしたね。それも多分、木場の死後の物語だったからできたことかもしれません。木場さんがいたらやっぱりファイズは巧と木場の物語になってしまうし、そうなるとやっぱ民族主義っぽい物語になるんですよね。だけどそこから外れて巧と真理にようやくフォーカスできた。20年前に描ききれなかったものが補完できたという意味で、本作の価値は大いにあると思います。

 

◆ジレンマは終わらない

第40話

ただ、監督もパンフで言ってる通り俳優陣の演技力が(当たり前だけど)凄まじく上がってるというか、年齢も重ねてみんなものすごく渋くなってるのに、中身が10代だったあの頃のままなんで可笑しかったですよね。

言い方悪いけど、10代のクソガキが40手前のオッサンオバハンの皮をかぶって暴れてるって言ったらいいのかな?俳優陣はめっちゃ貫禄あるのに言ってることややってることがめっちゃ幼稚っていう非常に特殊な映像作品だと思いますこれ(褒めてる)。

ただ、巧が確か真理に向かって「わからないことは考え続けるのが正解だ」みたいなこと言ってたと思うんですけど、これはやっぱり本編をリアルタイムで見続けてファイズを愛好してきた自分にとっては本当に嬉しいセリフでした。これは巧にしか言えないセリフだし、この年齢の半田健人さんが言うからこそ重みも出てくるセリフって感じもして嬉しかったなぁ。

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↑巧の心境の変化と変身ポーズが連動しているという仮説をまとめています。

 

◆スマートブレインについて

仮面ライダーファイズ 変身ベルト スマートブレイン

北崎と草加がアンドロイドだった、というのは結構重要な描写だなぁと思っていて、新ライダーのミューズがオルフェノクの記号なしでも変身できるっぽいことも含め、もはやオルフェノクよりAIとか機械兵器の方が強くて怖いってことですよねこれ

「子どもが憧れるものはどこか怖いものである」という理屈に従って携帯電話をメインツールに据えて制作されたファイズですけど、それの極致が本作のアンドロイドですよね。AIとか機械が持つ怖さみたいなものを井上作品らしく描いていたと思います。まぁそりゃオルフェノク淘汰されちゃうわなと。

にしてもスマートブレインの社長はファイズのレギュラーキャラが務める義理でもあるんかと(笑)

草加ロイドが、オルフェノクに覚醒する可能性のある真理(流星塾生)の元に派遣されていたところを見るに、里奈とか絶対狙われてるよな...。三原のアンドロイドと暮らしてたらどうしよ(笑)

あと、北崎の次は草加ロイドが社長になるっていう「悪の連鎖」?みたいな描写って。「響鬼」最終回の洋館の男女を思い出しますね。

傀儡のループが続くだけで本当の親玉はいつも見えないところにいる。この見えない巨悪感は非常に「仮面ライダーらしい」なぁと思います。昭和作品の首領たちも結局後付けでいつも傀儡だったことにされてましたしね…。

それから真理が簡単にオルフェノクにさせられてたのは結構驚きで、花形社長があんなに苦労して流星塾生で改造人間(人造オルフェノク)作ろうとして全員「失敗作」に終わった史実から考えると、やはり技術の進歩が大きいんだろうなと。

政府がスマブレを運用しているのもちょっと謎なんですが、テレビ最終回の王との決戦の後社長不在となったスマブレに政府の手が入ったとかかなー?

 

◆PG12について

仮面ライダーでPG12だったからって良かったことって個人的に一度もないと思ってるんですよね。

本作でもなんかこれ見よがしに冒頭からグチャグチャ音鳴らして内臓取り出してましたけど、だから何?って感じしちゃうんです。別にあんなの無くても、解剖中の死体が突然起き上がるって展開さえあればそれでええやんって思っちゃうというか、むしろグロ描写がノイズに感じられちゃうんです。

そのくせ解剖室から突然野音会場で暴れてる場面にワープするとことかは完全に「仮面ライダー」ですよね(笑)、庵野氏の言葉を借りれば「段取り無視の作劇」、ファイズ当時のネットの言い方をすれば「井上ワープ」、健在でしたね。

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真理が飛び降りてベチ!だかグチャ!だか頭打って肉片飛び散るとことかありましたけど、ヒロインが追い詰められて飛び降りるってシーンなんだからむしろそういうの抜きで美しく撮って欲しかったなとか思っちゃいます。

要は、別にニチアサクォリティで充分ですよと。むしろ、日曜朝8:00という究極の縛りの中で放送コードギリギリを攻めて生まれた奇作・怪作こそが平成ライダーだったと思うので、下手に縛りを取っ払わない方が良い作品生まれるんちゃうかなと。

なんか色々できるようになったからヤりまくっちゃう感じとか、童貞卒業したての男子みたいでなんか恥ずかしい感じしちゃうのよな〜(笑)

そのくせラー油でスリップするファイズアクセルとか小学生が喜びそうなギャグ入ってくるしなんか思春期っぽいのよ全体的に。例のラブシーン含めてね。思春期っぽい映画を40手前のキャストで真剣に撮ってる怪作ですよこれ。ほんと変な映画だわ〜。

 

◆ツッコミどころ色々

あとは、見てて吹き出しそうになったとことか、考えたら面白そうなこととか気づいたこととか色々あるんで列挙しておきますね。

  • 新スマートレディ...いい....
  • ライダーの常用ヘルメットといえばSHOEIでしたが今やKABUTOか...つい10年くらい前まではKABUTOなんて安物メーカーだったのにな
  • 胡桃の常用バイク、ちゃっかりHONDAの最新モデルのHAWK11、かっこいいなやっぱり

www.honda.co.jp

  • ファイズアクセルのアクションとか映像は結構好き
  • ファイズアクセルが結局1人も殺さなかったの、絶対わざとよな(全員ドルフィン扱い)
  • 新スマートレディの太もも…
  • 胡桃が真理を腹パンしたとこまじ爆笑
  • 啓太郎の甥?条太郎は本当啓太郎そっくり!
  • 海堂がなんかうるさいなぁと思ってパンフ読んだらそういうことかと(笑)
  • お好み焼き?既視感あるなと思ったら龍騎劇場版か...お好み焼きって男女の愛の食事か何かなの?(笑)
  • なんだあの湯切りはw
  • カイザvs劇場版ライダーはカイザの死亡フラグなのでミューズ戦はハラハラw
  • かと思ったら一瞬カイザの首コキっ?!
  • 新スマートレディ...やっぱりいい...!

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  • 草加がすっかり毒っけが抜けて丸くなったなぁと思ったら、真理しばいた瞬間の草加は紛れもなく草加雅人でしたよw
  • オートバジン来て「おぉ…///」って感じのたっくんがイイ
  • エンドロール、ISSAがまた歌ってくれたの嬉しくて感激
  • ってかえ...この密度で65分なの?!

65分でこの内容の作品が作れちゃうところこそが「仮面ライダー」の凄いところですよホント...。あっぱれでした!!

(了)

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