ADAMOMANのこだわりブログ

特撮ヒーロー、アメコミヒーローを中心にこだわりを語るストライクゾーンの狭すぎるブログ

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劇場版「仮面ライダー555 パラダイスロスト」を10年ぶりに見た

仮面ライダー555 パラダイス・ロスト ディレクターズ・カット版

仮面ライダー555 パラダイス・ロスト ディレクターズ・カット版

なんか急に懐かしくなって、久しぶりに見たら当時とは全然違う感覚で楽しめましたね。

555にどハマりしてたあの頃

個人的にこの「パラロス」、歴代仮面ライダー映画で一番だと思ってます。それは誰がなんと言おうと譲らないポイントで、ずーっとそう信じて生きてきたんですけど、公開当時から20年経った今また見直すと、当時よりも良い意味で冷静に楽しむことができましたね。

何せ20年前はもうファイズのことで頭がいっぱいでしたからね(笑)

テレビ版については別記事でも語らせてもらってます。

www.adamokodawari.com

録画したビデオテープをクラス中の友達に貸して布教しまくってましたし、とにかくもうファイズに夢中でした。放課後は更衣室で友達と変身ごっこしてましたし(中3)。しかも気がついたら何人か体育座りの観客が並んでて。

毎週月曜日は「見た?!」ってファイズの話題で盛り上がる。ある意味人生で一番楽しかった頃でした。

「龍騎」にももちろんどハマりしてたわけですが、多分「555」、中でもこの劇場版「パラダイス・ロスト」がある意味で私のその後の人生を決定づけたと言っても過言ではないかもしれません。「仮面ライダー」を愛し続けるこの人生は、そして30過ぎても相変わらず仮面ライダーのことを語り続けているこの人生は、多分この「パラロス」鑑賞後の私のあの抜け殻になったような衝撃と絶望とその中に芽生えたある種の恍惚によって決定づけられたのだと思っています。

ここからは諸々のネタバレを含みつつ感想と考察を交えて書いていきます(一応)

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パラレルワールド

第49話

第49話

平成ライダーの歴史で言うと「555」は4番目。「アギト」以降定番となった夏の劇場版も、やはりフツーじゃない変化球を投げてきました。「龍騎」のときが「最終回先行上映!」ってインパクトがあったわけですが、今回はまさかの「パラレルワールド」。オルフェノクに完全に支配されてしまった世界が舞台です。

最終回までのあらすじを踏まえて見直すと、これって結局テレビ版がたどることになった「オルフェノクの死の運命」が存在しない世界観なんでしょうね。だから「オルフェノクの王」というのも存在しないし、草加が体内に宿している「オルフェノクの記号」もおそらく衰えることがない=カイザへの変身能力も半永久的なのだと思います。

単純に人類vsオルフェノクの勢力図がテレビ版と逆転してるのはめっちゃ面白い設定で、特にそれを端的に表してるのが冒頭のカイザの戦闘シーンです。

オルフェノクに人間が襲われていても何も気にしない街の人々。しかし仮面ライダーが登場した瞬間、悲鳴と共に人々が逃げ回る。「仮面ライダーが恐れられている世界」、という映像が非常に面白い。この作品でしか見ることのできないかなり攻めた設定と演出ですよね。

それは終盤のアリーナでの決闘にもハッキリ表れていて、ファイズにはブーイング、しかしサイガとオーガに熱狂する観客たちの姿として実に象徴的に描かれています。

 

草加雅人の変化

第15話

第15話

私、実は大の草加ファンなんです。

なので当時も草加があっさり死んだことが受け入れられなくて本当にショックだったんです。でもネットで「草加が死んで結構スカッとした」みたいな感想もよく目にしたのでそれが尚更信じられなくて...。確かに草加って嫌なやつだけどめちゃくちゃ強くてカッコイイんですよ(彼についてはまたいつか別記事で語らせてください)。

とりあえず一つだけ。確かに性格は悪いけど、同窓会の日に他の同窓生達と共にオルフェノクの記号を埋め込まれながら(改造手術)ただ一人その日の悪夢の記憶を持ったまま脱出し、誰にもその胸の内を明かさぬまま、人間でありながら死のベルトを使いこなして戦う...って本作の世界観において誰よりも草加雅人は「仮面ライダー」してるんですよね。

いやしかし本作の草加がああもあっさりサイガにやられてしまったのはなぜか。真面目に考察するなら「ザコとばかり戦ってお高く止まってたから」だと思ってます。だって本作のカイザってやたらカイザショットで戦おうとするでしょ(笑)

最初からカイザブレイガンを振り回してるか毎週カイザポインターで澤田を殺ろうとしてたテレビ版の草加とは戦い方が違いすぎるんですよ。

ザコとばかり戦ってたのは、この世界が「オルフェノクによって支配された世界」=「使徒再生によってオルフェノク化した者が大半を占めている世界」だからなんですよね。当然使徒再生によって誕生したオルフェノクの戦闘力は自力で蘇生した「オリジナル」には劣ります。

増して草加は人類側に存在する唯一の仮面ライダーです。まぁ図に乗っちゃいますよね。...とまぁそんなこんなで環境は最悪なのに実はぬるま湯に浸かってた草加はあっさり敗北しちゃったんだろうなと。

カイザショット

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オルフェノクトリオの変化

第42話

第42話

木場さんは本当何も変わんない感じなんですけど(すぐ騙されたりすぐ心変わりするところとか)、一番変化を感じたのは結花でしょうね。結花が女性的に強くなっているのは環境の影響があると思うんですが、本来は確かにああいう強かさがあるんですよ彼女。

テレビ版では啓太郎と結ばれることになった結花ですが、パラロスでは海堂とそのままくっついちゃってます。やはり人類からもオルフェノクからも後ろ指を指され続けてきた結果、3人の結束がテレビ版よりもずっと強かったからでしょうね。

あとテレビ版みたいに海堂は何回も家出できなかったと思うし(笑)。出ていっても逃げる先がなかったから海堂も結花のことだけをずっと見続けることになったんだと思います。要は巧サイドの3人組と木場サイドの3人組がテレビ版のように流動的に交わる余裕がなかった:「人間側」と「オルフェノク側」の溝がもっと深い世界だったからでしょうね。

 

真理と巧

I wish 園田真理Voice Mix version

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真理はやはり解放軍の先頭に立ってきたからだと思いますが無理して舐められないように語気が強くなってる感じがしました。元々流星塾時代もいじめっ子から草加を助けてたくらいですから、生来の気の強さがそうさせるのだとは思います。

いやしかし草加の「君の女の部分が泣いているんだ」は笑いますよね、そりゃ劇場版ではカットされるわ(笑)でも草加も全然わかってないのは、彼女が求めてるのは巧だってことですよ。

...ただ、当時中坊ながらずっと疑問だったのは、巧と真理ってなんで恋愛関係に発展しないのかなぁということです。あんなに何回も手を握り合ってんのに付き合ってないのおかしいよ(笑)

いやまぁそりゃ演出の意図としては「人間とオルフェノクが手を取り合って生きる世界」の象徴としての二人ってことなんだとは思いますけどね。頭ではわかってんだけどさ。

しかしあのアリーナでの決闘時にいきなりウルフオルフェノクとしての正体を見せられたからってのもあるとは思いますけど、テレビ版に比べて二人とも全然ウジウジしてないから非常に見ていて気持ちよかったですね(笑)テレビ版の方は巧が正体を明かしてからのグズグズ具合がすごかったから。

真理は割とサクッと巧の正体を受け入れて、「巧は巧だから」って言えるし、巧は「木場の夢」を継いで生きていくって目的がハッキリしてるし。もちろん尺が90分しかないからってのもあるけど、何週間もかけて葛藤を描いたテレビ版とは違って、手を繋いだ二人が光に向かって歩いて消えていくっていうエンディング含めて非常にわかりやすく「555」のテーマが集約的に描かれてて良かったですね。

ちなみに他所でも言われてますが真理は本当脚細い。顔が丸くてぷにぷにしてるから意外に思うんですが本当スタイル良い。

 

もこみちと黒木芽衣

比較的無名時代の速水もこみちが「水原」という解放軍の一人として出演しているんですがまぁ「蛇足」って感じでしたね。事務所の関係かなんなのかわかりませんけど出さないといけないから出したというか役者のために用意したキャラみたいな感じで。

いやしかしなんでこの世界の人類ってこんなに性格悪い自己中ばっかりなんだ?(黒木芽衣演じたミナはまだマシとは言えだいぶ捻じ曲がってたよね色々)

まぁ性格悪いやつしか生き残らなかったってところがまさに「パラダイス・ロスト」。映画限定キャラが揃いも揃って性格悪いのは同じ脚本家による翌年の某映画でも同じなのですが(笑)

まぁでもミナ(演:黒木芽衣)は巧のファイズ復活を焦らすために良い役回りを演じたと思います。見事に真理と対極の女性として描かれてましたしね。

もしかしたらミナは草加の言う真理の「泣いている女の部分」の象徴だったのかもしれません。ミナと真理って顔のあらゆるパーツが丸いという意味ではビジュアル的にも似てますし。わざと似てる女の子を選んだのかもしれません。二の腕すごい。

真理だって平和な世界においては巧と二人で静かに暮らしたかったのかもしれないけれど、真面目な学級委員タイプの真理は人類を率いるために必死なので自分のことなんか考えてられないんですよ。だから女としての部分は確かに押し殺して頑張ってる(そこが真理と結花の違いでもある。もっと言えば、啓太郎と草加が身近にいなかったら巧と真理は付き合ってたかも知れない。多分二人とも無意識に周りに気を遣っちゃうタイプ)

んで作劇上の用が済んだら水原もミナもまぁ容赦無く簡単に死ぬよね。別に死ななくても良いのに(笑)この辺のあっさりした退場の仕方とかマジでラルクとランス。

 

救世主ファイズ

第44話

第44話

カイザの戦闘力低下を上で指摘しましたが、反対にファイズはめっちゃ強かった。クロコダイル戦等でも顕著ですが巧ってかなりバトルセンスが高くて、相手の不意をついた反撃とかめっちゃ得意なんですよ元々。

巧が生死不明になったライオトルーパー軍団との決戦シーンを見る限りあの大部隊を相手に結構いいとこまで勝負してたようですね。なぜかこの場にカイザの姿がないわけですが(笑)

要はこの世界のファイズ、「1対多」でいじめ抜かれてるんで多分テレビ版よりずっと戦闘力が高いんだと思います。でないと復活してすぐにあの伝説の「多段クリムゾンスマッシュ」は出ないと思います(あれは劇場でも最もぶち上がったシーン)

だからカイザに致命傷を与えたサイガの空中攻撃だってさらっと凌いじゃうし、圧倒的な機動力が武器のサイガを狭い通路に連れ込んで飛行ユニット破壊するし、エクシードチャージしたトンファーエッジ持って突っ込んで来られても手首カシャッのあとカウンターでサクッと倒しちゃうしで物凄い度胸があって頼もしいんですよね。

そんな姿を間近で見て一緒に戦ってればそりゃ「救世主だ!」って思っちゃいます。

てかブラスターフォームが一番活躍したの劇場版では…まさかテレビであんなに使われないとは…。

 

木場の慟哭

本当初見時は衝撃の連続で心に穴があきまくりました。

草加の死、そして結花の死、更には海堂も死に...。

だからあの白い部屋での木場の慟哭ってものすごく感情移入できるものだったんです。でもこれってリアルタイムで視聴していたあの夏の劇場でしか体感できないものだったと思います。毎週大好きで見ているキャラたちが次々に死んでいくんですから...。

ちなみにあの部屋で木場さんが泣き叫びながら叩き落とした水の入った透明のポット、第15話で草加に看病されてたときにも置いてあったのと似ててそれ思い出しちゃいました。木場さんってどこにいても不幸ですよね。

あと、木場さんって落ち込んだときちょっと笑ったような顔をするのが本当木場さんらしくて切なくなります。真理の何気ない一言を超聴覚で聞いてしまったときの木場さんのあの顔、あのお芝居めっちゃ好きだなー。

いやしかし改めて思うけど暗いなーこの映画!(笑)

 

サプライズの連続

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サイガとオーガ、2本の帝王のベルトが出てくることや初の外国人ライダーが登場することとかは事前に公開されてたんですけど、オーガの変身者だけは公開前までずーっと非公開でした。そして当然巧の正体についても。

だから巧がオルフェノクに変身したときはそれはもう天地がひっくり返るかと思うくらいびっくりしました...!

「オルフェノクも人間も関係ないんだよ!」という真理のセリフはごもっともなんですが、実際に巧がオルフェノクだったと知ってやっぱり私の中にはちゃんと「嫌悪感」が芽生えたんです。「え...巧がオルフェノク?やだ...」っていうね。

もう本当頭ん中真っ白になりました。ウルフオルフェノクとホースオルフェノクの戦闘シーンとか半分記憶ないですもん。

でもふと我に返って、「いやこれは製作陣からそんな想いを抱くであろう我々視聴者への挑戦状」なんだと思い直しました。口ではいくらでも綺麗事が言えるだろうけど、それ本気で思えるか?っていう。そこまで突き詰めてこそ本作のテーマはより鮮明になります。

そして次の瞬間思い出したんです。あ、そっか『仮面ライダー』って人間ではなくなったバケモノが仮面をつけて戦う話だったな、って。

当たり前なんですけど、乾巧ってやっぱり「仮面ライダー」なんですよね。

そのことに気づいた瞬間、たくさんの愛すべきキャラクターたちの死と主人公のまさかの正体暴露によって打ちのめされてスタボロになっていた当時中3だった私は、「いや、これこそが仮面ライダーの物語なんだ」というある種の確信を得たんです。この残酷な物語こそが俺が心から愛した仮面ライダーの本当の物語じゃないかと。ちょっとやそっとの悲劇を前に目を背けてはいけない、最後まで見届けなければ!っていう謎の使命感です。

 

DC版の追加映像について

当時ディレクターズカット版のDVDが出たので当然購入したんですが友達に貸したりしてる内に無くしちゃったんですよねー。どこいったかなアレ。

で、今回もサブスク使ってDC版を観たんですが、追加映像に関しては正直言ってほとんどがまぁ確かに無くてもいいかなって感じでした。

変身一発のくだりも一回の方がテンポ良いし。総じてくどく感じるような気が私はしました。

ただ中でも、冒頭の戦闘シーンにおけるカイザスラッシュと、真理に擬態するスマートレディ含む木場騙し関連はあった方がいいなと思いました。というか戦闘シーンは基本的にそりゃ多いに越したことないですからね。

 

1万人のエキストラ

1万人のエキストラを使った撮影、当時のスタッフをもってして「奇跡」と言わしめたこの映像は色んな意味ですごいですよね。ファイズがボッコボコにされるのを見て狂喜乱舞する客席。そしてサイガやオーガが敗北した瞬間静まり返るスタンド。

あの人数のど素人が仮面ライダーを睨みつける画はまぁシュールですよ(笑)

でも今思えば本当にすごいのはスーツアクターじゃないですか?子どももいっぱいいましたから、これは想像ですけど裏でしか面を取らなかった(取れなかった)んじゃないでしょうか?そんでもって物凄い熱気でアドレナリンも出まくりだったと思いますし。

ファイズブラスター変身直前のファイズポインターがベルトから外れかけてるのとか初見時から忘れられない映像です。

撮影自体、本当大変だったんだと思います…。

 

ファイズの物語として

第50話

第50話

とにかく嫌なヤツがいっぱい出てきて優しい人がいじめられたり勘違いやスレ違いの連続ですぐケンカおっぱじめるのとか、もうそういう物語運びそのものが良くも悪くも「あーいつものファイズだな〜」って、なんか懐かしいような愛おしい感覚になりましたよね。

それとこの映画、ほぼテレビ版最終回の流れと同じ展開を見せます。

オルフェノクの王は登場しませんが、その代わり帝王のベルトが登場したと解釈することもできます。

何より、メインキャラが辿った運命はほぼテレビ版と同じなんです。特に巧と木場。この2人は同じ理想を胸に抱きながらも必ず戦うことになってしまう。

真理の裏側にミナがいるように、巧の裏にいるのが木場です。だから彼は何がなんでも挫折を味わわなければならない。彼の理想は絶対に挫けてしまう。

そしていつも頼もしく見える木場ですが、実は一番精神的に不安定なのも木場です。彼はいつも両極端な男です。裏切られたと知ったら元カノでもぶっ殺すし、全人類を敵に回してでもスマートブレインの社長になっちゃう。

理想が高くて真面目な分、常に過剰に何かを信じてしまうんだと思います。冷静で落ち着いているように見えて案外妄信的。頼られる自分を演じていないと不安なのでしょう。だから裏切られたときに過剰に反応してしまう。非常に打たれ弱い。

けど根っこはとてつもなくお人好しだから、やっぱり人間を裏切れない。最終的には自分の命を捨ててしまうくらい、とてつもなく人間が好きな男なんです。

その点、巧はブレない。言葉や態度には出さないけど、やっぱり彼も人間の心を大切にしてる。「さぁな!」と言いながら、実は一番実直でまっすぐな男です。

…なんて具合に、キャラクターの芯をブらさずにテレビ本編はまだまだ中盤の段階で、たった90分の映画に「555」の全てを詰め込んだ田崎監督スゲーです。

テレビ本編とのつながりという意味でも、たくさんのサプライズを用意してくれたドラマ作品としても、そして1万人エキストラを始め歴代でも最強にド派手でカッコいいアクションを見せてくれた特撮作品としても、この映画、やっぱりサイコーです。歴代ライダー映画作品でやっぱり一番大好きですね!

(了)

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