「シン・ウルトラマン」公開に向け、初代ウルトラマンの非常識な常識を復習しよう!
- ◆烏天狗が出発点⁈
- ◆口から液体⁈
- ◆3種類のウルトラマン⁈
- ◆ネロンガシリーズ
- ◆いつ・どこの出来事⁇
- ◆スペシウム光線の秘密
- ◆シン・バルタン星人
- ◆ゾフィーの言葉
- ◆そんなに人間が好きになったのか
◆烏天狗が出発点⁈
ウルトラマンのデザインは難航したらしく、何種類もの没スケッチが残されていることは有名だが、かなり初期のものの中には烏天狗があったらしい。
最終的にデザインを固めた成田亨氏はこの烏天狗にも影響を受けつつ、当初は怪物然とした宇宙人だったデザインから余計なものをどんどん削ぎ落としてゆき、最終的にあのシンプルで美しいウルトラマンを誕生させた。
特に今回「シンウルトラマン」で成田氏が志向していた真のウルトラマンの姿としてカラータイマーの無いデザインが発表され、「元々ウルトラマンにはカラータイマーが無かった」事実が広く知れ渡ることとなった。
加えて目の覗き穴も、スーツアクターの視界確保のためやむなく開けられたものであり、成田氏は実にやるせない表情でその目に穴を開けていたそうだ。
◆口から液体⁈
ウルトラマンには当初、「口からシルバーヨードという液体を発射する」という必殺技案があった。
※実際に放つ様子はソノシート版「ウルトラマン危機一髪」にて確認可能。
かなりインパクトがあり、現在のウルトラマンのイメージからはかけ離れているようにも思うが、これは藤原秀郷の大百足退治の故事が元になっている。
一の矢、二の矢は通用せず、三の矢に唾をつけたところ、見事退治できたという伝承から、口から出す液体で怪獣を退治するという攻撃技が考案されたようだ。
そのため、初期のマスクは口元に穴が開いており、時折中の人の口が見える。しかも口元を可動させるため軟質のラテックスが使用されていた。しかし口の可動はうまくいかず、結果的に大きなしわが印象的な通称「Aタイプ」マスクが誕生した。
それにしても、当初の烏天狗案も含めウルトラマンの初期イメージには日本古来の伝説上のヒーローのようなイメージがあったように思える。
そう考えれば、ギャンゴ戦やジラース戦等で見せた妙に人間的で挑発的な仕草にも何となく合点が行く。
◆3種類のウルトラマン⁈
結局、ラテックスマスクで口を動かす案は失敗に終わり、シワが目立つようになったため新しいマスクがFRPで成型されることとなった。同じ型でありながら素材の変化によって全く違った印象に変化したことから、この姿は「Bタイプ」と後年呼ばれることとなる。
ちなみに用済みとなったAタイプスーツは、ニセウルトラマンを経てゾフィへと改造されることとなる。
更にBタイプスーツの後に登場したのが、「ウルトラマンの完成形」とも呼ばれる通称「Cタイプ」。様々なスチル等でもよく見る最も有名な姿で、Bタイプに比べてやや大きめの口元に湛えられた「アルカイックスマイル」が特徴。
成田氏曰く「本当に強い者は戦っているときも笑っている」とのこと。
ちなみに、一番最初に報じられたシン・ウルトラマンの姿は、マスクのイメージも含めて「Aタイプ」に近いように思える。
しかし、予告編動画に登場したウルトラマンは、「Cタイプ」に似ている。
まさか「シン・ゴジラ」のときのような段階的変化をウルトラマンも遂げるというのだろうか?それとも、本放送時同様、何の前触れもなく変わるのだろうか?
◆ネロンガシリーズ
シン・ウルトラマンの予告編にも登場したネロンガ。加えてガボラも登場していたことから話題にもなったが、どちらも元は同じスーツで作られた怪獣である。
更に元をたどると、元祖はバラゴンのスーツである。成田氏のデザインによって、頭を付け替えるだけでまさに「別人」に生まれ変わったのである。
※「フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)」で見られた「巨人対怪獣」の構図は、そのままウルトラマンの作品イメージに繋がったとも言われている。
バラゴンはまず「ウルトラQ」に登場したパゴスに改造され、次いでネロンガ、マグラー、ガボラ、と変遷を辿っていった。ある意味兄弟のような怪獣たちである。
そんな怪獣たちのうち、ネロンガとガボラの二体の登場が確定している「シン・ウルトラマン」。ここに何らかの意味合いを持たせることとなるのだろうか?それとも単なるファンサービスなのだろうか?
◆いつ・どこの出来事⁇
当初海外展開も視野に入れていたため、なるべく1966年当時の日本を感じさせる描写は避けられている。加えて超カタコトの外人がよく出てくる。
劇中年代を参考にする上でよく引き合いに出されるのが「故郷は地球」に登場したジャミラの慰霊碑の記述だ。
ジャミラの生没年が刻まれているのだが、「1960〜1993」とあり、少なくとも1993年以降の出来事であることが推察される。
更には劇中「ジャミラは何十年もかけてロケットを作り変え…」と語られていることから、この生没年を宇宙で遭難した年と判断すれば、劇中設定は更にその先の20?0年代ということになる。
だが、この設定が貫徹されていた訳でもなく、エピソードによっては66年当時の日本丸出しの展開も時折見られた。
更にはゴモラ登場回のように「怪獣なんて存在しないのが常識となっている世界線」のエピソードも存在するため、「ウルトラマン」は多数のクリエイターによってその世界観を自由に解釈されたオムニバス作品とする見方も存在する。極端に言えば、全エピソードが独立した並行世界なのだ。
◆スペシウム光線の秘密
スペシウム光線がなぜあのポーズなのか?それは、ウルトラマン演じた古谷敏氏自身に秘密があった。
その長身を見込まれてウルトラマンを演じることとなった古谷氏。彼の長い腕を活かしたポーズを、ということで、両手の指をびしっと伸ばしたあのポーズが生まれた。当時のスチルをよく見れば、真っ直ぐ伸びているどころか、その指先はもはや反り返っている。
古谷氏はカラータイマーに被らずカッコよく必殺技が決まるよう、このポーズを鏡の前で何百回と練習したそうだ。
ちなみに、光線を出すときはじっとしているもの、という常識を作ったのもある意味ウルトラマンだ。
当時の光学合成は毎秒24枚の手書き作業。動き回られては光線の軌道が毎秒変わる。だからじっとしておいてもらわなければ困るのだ。
◆シン・バルタン星人
あまりにも有名なバルタン星人のビジュアルだが、これも実はシンプルさを追い求めた成田氏の理想型からはややかけ離れた姿だった。
セミ人間の改造とよく言われるが、口元のパーツぐらいしか共通パーツが見当たらず、案外流用箇所は少ないようだ。
成田氏が本来志向したバルタン星人のデザインイメージは2代目にて実現されている。
初代と比べてシャープなその姿はクールでファンからの人気も高い。「シン・ウルトラマン」に登場するとすればこっちだろうか?
◆ゾフィーの言葉
最終回「さらばウルトラマン」に現れたもう1人のウルトラマン、ゾフィー。
最終回に突如登場した新キャラクターというのもあってか、当時の児童誌などでも情報が錯綜しており、「ゼットンを操る悪の宇宙人ゾーフィ」などと紹介されているものも散見されたようだ。
しかしウルトラマンが当初、「正義の宇宙人ベムラーが怪獣と戦う物語」として企画されていたこととその設定の変遷を考えれば、もしかするとこれも没設定の一つだったのかもしれない。
ちなみに、あまり知られていないが元々ゾフィーのマスク正面のトサカはウルトラマンと違って黒かったことが近年高画質化された本編映像から証明されている。
後年ゲスト出演した段階ではいつものシルバーマスクに変わってしまったのだが、個人的にはこの黒トサカゾフィー、大好きだ。
更にはアクションシーンも無かったからだろう、目には覗き穴も開けられていない。案外このゾフィー、成田氏のイメージに近い造形が実現されている。
「シン・ウルトラマン」では、ゾフィーまで登場するのだろうか。つまり、ウルトラマンの登場からその死までを扱うのだろうか。
...しかしなんと公式HPのトップには、「ゾフィーのセリフ」が大きく掲げられているのだ。
◆そんなに人間が好きになったのか
最終回でゼットンに敗北したウルトラマン。ゾフィーが持ってきたもう一つの命のおかげで、ハヤタとウルトラマンは無事分離された。
その後のハヤタのセリフは結構衝撃的だ。
「あれですよ、あの赤い球ですよ!僕が竜ヶ森で衝突して…その後どうしていたんだ?」
ハヤタの記憶は1話でウルトラマンと一体化して以降、全て残っていなかったのだ。
少なくともウルトラマンが地球防衛の任に就いた1年弱の間、変身前も後もハヤタはずっとウルトラマンの意識で行動していたことになる(もちろんハヤタの思考が無意識に強い影響を与えていた可能性もある)。
この事実をもってして、改めてゾフィーの言葉が去来する。
「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」
そしてこれこそが上述の、「シン・ウルトラマン」HPに掲げられた、ゾフィーの言葉なのだ。
ベーターカプセルとスプーンを間違えた34話も、イデに張り手を食らわせた37話の熱いハヤタも、全てウルトラマン自身の言動だった。第1話、初登場時のウルトラマンは実に不気味な謎のエイリアンであったが、地球に留まるうちに、彼はどんどん人間臭くなっていった。
果たして「シン・ウルトラマン」で斎藤工演じるウルトラマンは、どんな「人間」として描かれるのであろうか。
是非、初代ウルトラマンを見返して劇場公開を待ちたい。