アダモマンのこだわりブログ

特撮ヒーロー、アメコミヒーローを中心にこだわりを語るストライクゾーンの狭すぎるブログ

考察「帰ってきたウルトラマンはなぜ弱かったのか?」〜一体化する地球人と異星人〜

◆郷秀樹とウルトラマン〜分離した人格〜

怪獣総進撃

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盤の2人は、「郷秀樹にウルトラマンが憑依している」ことを示す意味もあってか、結果的に2人が別人格のまま一つの体に存立しているように描写されたシーンが多い。

1話で郷秀樹が突然霧吹山に向かったのも、怪獣アーストロンの存在を感知したからであろうが、この「怪獣探知能力」はこの後一度も披露されることはなかった。劇中の描写からも、このときは明らかにウルトラマンの意思によって郷秀樹が操られているように見える。

同様に、突然人が変わったように空を見上げ唐突に腕を振り上げての初変身。

この瞬間も、ウルトラマンに人格が乗っ取られたような描写がなされていた。

変身シーンといえば決定的だったのは2話。郷秀樹が「ウルトラマンになれ!」と念じても変身できず、郷自身が死力を尽くして初めてウルトラマンが力を貸してくれるという非常にハードルの高い(と同時にドラマティックな)変身方法が説明された回でもあった。

タッコング大逆襲

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このシステムそのものが、郷とウルトラマンを別人格とした発想の元に生まれていると考えて良いだろう。

 

そんな分裂した2人の人格を抱えて戦うウルトラマンに変化が見え始めたのが20話。磁力怪獣マグネドンの回だ(オタク界隈ではエヴァの「ヤシマ作戦」の元ネタで有名な回)。

怪獣は宇宙の流れ星

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超強力な磁力を発するマグネドンに苦戦するウルトラマンのモノローグが戦闘中、郷秀樹の声で流れる

こいつの始末をつけるには地球を離れて戦う以外に方法はない

僅かながら違和感を禁じ得なかった。戦闘中はウルトラマンの人格で戦っていたのではなかったのか?これまでの戦闘にも実は郷秀樹の意思が介在していたのか?或いは、この頃と前後して、郷秀樹とウルトラマンの人格が、本格的に融合を始めたのだろうか?

◆近づいていく2人の人格

のように考えなければ説明のつかない描写が、確かに20話を境に増えていく。24話で一見人畜無害な宇宙怪獣クプクプを銃殺したMAT。その後も壁の落書きとして怪獣は生き延びるわけだが、この回の郷さんが鈍い

戦慄!マンション怪獣誕生

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1話で見せた「怪獣探知能力」だったりを駆使すれば、或いはこういうときこそウルトラマンの人格が表に出れば、宇宙怪獣の正体を見抜くことができたのではないか。

どうも2人の人格の内、郷秀樹の人格の方が強く出始めているように思われてならない(反面、30話でオクスターに語りかけるウルトラマンは依然ウルトラマンとしての人格のように思われる)。

 

その傾向により拍車がかかったのが、31話「悪魔と天使の間に…」であろう。

悪魔と天使の間に…

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詳しいストーリーの紹介はここでは割愛するが、終始郷秀樹が「宇宙人(ウルトラマン)」という立場で物語が進行していく。そして極め付けが、自らの意思で変身するシーンの登場だ。

 

更に35話では、強敵プリズ魔(これまたエヴァに登場するラミエルの元ネタ)に辛勝しウルトラマンが飛び去った後、息も絶え絶えの郷秀樹が登場、

俺にとってギリギリの賭けだった

とセリフを残す。

残酷!光怪獣プリズ魔

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ウルトラマンとしての戦闘・戦略が郷秀樹自身の判断において行われたことを如実に示すシーン。

 

そして37話「ウルトラマン夕陽に死す」にて決定的な瞬間が訪れる。

郷秀樹の「投身自殺変身」と、「ウルトラマン怒りの独白」だ。

この回にて、郷の大切な彼女であり家族である坂田兄妹が宇宙人に惨殺(ひき逃げという妙に生々しい方法で)され、郷の心は嵐のように荒れ狂う。

そんな中、怪獣出現の報を前に、郷秀樹はビルの屋上から飛び降りるようにしてウルトラマンに変身する。

ウルトラマン 夕陽に死す

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彼は彼の中に眠るウルトラマンを試したのかもしれない。「俺はもう死んでも構わない。ならば死ぬ前にウルトラマン、俺に力を貸せ!」そんな彼の心の叫びが聞こえてくるようだ。

そして登場したウルトラマンのセリフにも衝撃を受けた。

やはりそうだ。私の技を研究し、私を倒すために訓練されているのだが負けない。必ず坂田兄妹の復讐をしてやる!

声はウルトラマンのものであったとは言え(郷秀樹であれば「坂田兄妹」とは呼ばない)、ウルトラマンの感情そのものが郷秀樹に限りなく近づいていることを感じさせられるシーンだ。

命を投げ捨てる覚悟で戦いに挑む郷秀樹と同じ気持ちでウルトラマンも戦いに挑んだ。この戦いを境に2人の同化は一層深まってゆく。

◆郷とウルトラマンが完全に一体化

の後は、ウルトラマンの正体を知って郷秀樹の命を狙う宇宙人も登場し、必然的に「宇宙人・郷秀樹」としての描写も増えていく。

 

そして、2人が完全に同化・一体化したことを思わせる瞬間が49話にて訪れる。子どもを救った善良なミステラー星人と郷秀樹の、テレパシーを通じた対話シーンである。

宇宙戦士その名はMAT

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注目すべきは、このときの郷秀樹が、完全に自分の言葉でミステラー星人に関する知識を披露し、ウルトラマンとして対峙している点だ。この段階では既に2人が同一の人格として完全に融合している。

 

そして最終話、宿敵ゼットンを倒した郷秀樹はスーツに身を包み、唐突に次郎くんに投げかける。

ウルトラ5つの誓いを言ってみろ

ウルトラ5つの誓い

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作中における「ウルトラ5つの誓い」の位置付け、誕生の経緯が不明(伏線も一切なし)なので、この問いかけそのものが郷秀樹としてのものなのか、ウルトラマンとしてのものなのかはよくわからない。だが、戦争に巻き込まれようとしている故郷に帰らなければならないと言う郷の瞳は凛々しく、この一年で成長した男の姿でもあり、宇宙人のようにどこか遠い存在にも感じられた。だから次郎くんも一度は「いやだ!」と断ったのかもしれない。

そして、完全に自分の意思で変身する郷秀樹。この瞬間、郷秀樹は本当の意味でウルトラマンになったのかもしれない。

 

そして、一度は断ったウルトラ5つの誓いを泣きながら叫ぶ次郎くん。彼は空に消えるウルトラマンを見上げながら叫んだ。「聞こえるかい、郷さあん!

ウルトラマンでありながら次郎くんに「郷さん」と呼ばれるウルトラマン。この瞬間、ウルトラマンは郷秀樹になったのかもしれない。

DVD帰ってきたウルトラマン Vol.13

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◆「必殺!流星キック」は誰のため?

こまで、時系列に沿ってウルトラマンと郷秀樹の人格の融合について追いかけてきたが、これを踏まえると序盤の展開=弱いウルトラマンには何かしらの意味(意図)があった可能性がある。

帰ってきたウルトラマンが、当時のスポ根ブームを反映しているという根拠としてよく4話「必殺!流星キック」が挙げられるのだが、私はこの論評には疑問を抱いている。

必殺!流星キック

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なぜなら、郷秀樹の特訓シーンが描かれたのは後にも先にもこの4話だけなのだ(増して、もし本当にスポ根ものがやりたいのならあんなノスタルジックで美しい主題歌になるはずがない)。

そもそもこのエピソードには矛盾点が多い。2話でMATの面々を前にとてつもない身体能力の高さを見せつけた郷秀樹。そして何より飛行能力を有するウルトラマンに、跳躍力を鍛えるための特訓など必要ないのではないか?

ここで大胆な仮説を提起してみたい。それは、ウルトラマンが郷秀樹を試す目的で特訓させたのではないか?というものだ。

◆郷を鍛えたのはウルトラマン

で述べたように、後になるにつれ郷秀樹とどんどん一体化していったウルトラマン。実はウルトラマン自身いずれそうなってしまうことをよく知っていたのではないだろうか?

そのこと(自分の人格が変わってしまうこと)を覚悟で地球に赴任してきたのだろう。だからこそ、どんな人間に自分の命と能力を授けるのかは非常に重要な判断となる。自らの命を投げ打って少年と子犬を救うような勇敢な人間との融合は願ってもない千載一遇のチャンスだったはずだ。

しかし郷は若い。若さゆえの甘さと隙もある。そこにウルトラマンの強大な力を授かったとなれば、その力を悪用する恐れもある。だからウルトラマンは郷秀樹には便利な変身道具を与えなかった。ウルトラマンが彼を見初めたその瞬間=自らの命を投げ打って少年と子犬を救ったその瞬間の勇敢な郷秀樹にこそウルトラマンは一体化するのだ。

 

話を元に戻そう。

つまり、「必殺!流星キック」でのウルトラマンは、心を鬼にして自らの能力を一切貸すことなく、人間郷秀樹の強さに賭けたのだ。なんなら初戦での敗北も、郷を試す目的でわざと負けたのかもしれない(流石にそれはないか?)。

それも全て、自分の命と人格を預ける器となる男を鍛えるため。一度や二度の敗北で地球防衛の任務を投げ出すような男では困る。

 

帰ってきたウルトラマンが弱いと言われる所以はここにあるのかもしれない。ウルトラマンは一年かけて郷秀樹を鍛え上げ、徐々に融合を果たしていったのだ。

※そう考えるとウルトラブレスレットの使用を毎回終盤まで引っ張るのも、強大な力へのためらい=郷秀樹への配慮だったのかもしれない。

 

◆三笠の山に出でし月かも

るかかなたに輝く星は

あれが あれが 故郷だ

帰ってきたウルトラマン MUSIC COLLECTION

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帰ってきたウルトラマンのオープニング、3番に登場する歌詞だ。

ここまでの考察を踏まえ、ウルトラマンの心に想いを馳せるとき、涙が溢れそうになる。

遠く はなれて地球にひとり」、自分が見初めた郷秀樹だけを信じ、自分の人格がいつか失われることも覚悟の上で怪獣たちと戦う日々

ふと見上げた夜空に輝くウルトラの星。彼は一体どんな気持ちでそれを見つめていたのだろう。

あのオープニング曲は実は、劇中で一度も語られることのなかったウルトラマン自身の気持ちを歌っていたのだ

故郷を想いながら夜空を見上げる彼の姿は、同様の境遇をうたった阿倍仲麻呂をも想起させる。

遣唐使として中国に渡り、夜空にぽっかり浮かんだ月を見て故郷を一人懐かしんだ彼の歌はあまりにも有名だ。

宇宙人でありながら、使命と郷愁の狭間で心揺れる彼は誰よりも人間らしかった。帰ってきたウルトラマンが「弱くて美しい」と言われる意味が、少しわかったような気がする。

帰ってきたウルトラマン Blu-ray BOX

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