①キモイ
正直言って大した活躍もしていない怪人なんですが、なぜだかコイツどうしても面白くて好きです。
もう一言で言ってしまえば「佇まい」がサイコーです。
派手な赤タイツに華奢な体格。なんだか挙動はちょっとノロマで、飛び出した目玉は焦点が定まらず、人間的な知性の光が失われている。多分まともな会話はできない。
実際、改造後のヤモゲラスは人語を話していません。まぁ要はちょっとアホっぽいんですよね。んでかざした両手をただゆらゆら揺らす動きがいかにも低脳。
いやしかしヤモゲラス最大の魅力といえば「目」でしょう。ずっとイっちゃった感じの白い目玉を剥き出しにして奇声を上げながら笑っている姿は実に偏差値が低そうで良い。
初期のショッカー怪人らしい気持ち悪さがちゃんと全面に出ているけれど、2号編直前だから画面は結構明るいので白昼の殺人鬼と化しているというこのコントラスト。
「この頃の仮面ライダー」でしか見られない独特のキモさが炸裂しているこのヤモゲラスの魅力を全力でお伝えしたい。
②弱い
じゃあ戦闘力はどうかというと、実はちょっと微妙です。
本編を見られた方はよくご存知かと思いますが、性能チェックがてら通りすがりのボクサーを襲うんですが、普通に殴られて吹っ飛ばされてしまいます。
一般人に殴り飛ばされる改造人間。個人的な記憶の限りですが、コイツ以外にそんな怪人いなかったと思います。
ヤモゲラスの特殊能力といえば、口から吐く白い凝固液と、垂直の壁もよじ登れる手足くらいのもので、あとは手にしたデンジャーライトが武器なんですが、これ奪われたらコイツ終わりなんですよね。実際デンジャーライトでトドメ刺されてるし。
だから、一見懐中電灯持ってタイツ着てうろついてるだけの変態なんですよコイツ。それを「改造人間」って設定で見せてくる「仮面ライダー」という番組の強引さが私は大好きです。
マジの考察をするなら、多分ヤモゲラスは「デンジャーライトの情報を盗む」という諜報活動用に開発された改造人間なんだと思います。それに、上述の通りデンジャーライトさえ持たせられればほぼ最強怪人なのでゲバコンドルみたいに戦闘力を爆上げする必要がないんですよね。
③怖い
で、通りすがりのボクサーに殴り飛ばされたヤモゲラス。徒手空拳では敵わないと見て口から白い凝固液を吐き出しボクサーを固めてしまいます。これで殺害完了かと思ったのですが、殴り飛ばされたのがよほど頭に来たのか、白く固めたボクサーを抱えて近くの川に投げ捨てます。死体遺棄までやり切ってテスト完了。弱いんだけどここまでやる残酷さが良い。ちゃんと、怖い。その間もずっと目がイっちゃってるのもヤバイ。
そして何より、この奇行が白昼堂々行われるところが良いのです。
旧1号編といえば「暗い」「怖い」「グロい」で有名ですが、旧1号編終盤とも言える本作(12話)の頃にもなると、だいぶテコ入れが入り始めたのか、ナイトシーンはほとんどなくなっていました。その結果、これらの奇行凶行が全て白昼堂々行われることとなったのです。
真っ昼間からこんな目がイってる赤タイツの変人と出くわすなんて、それはそれで非常に怖い。「ミッドサマー」みたいな感じですよね。なんかこういう異質なホラーに近い怖さがヤモゲラスには漂ってて、そこがたまらなく好きなんです。
その後も標的の家に侵入して台所の天井に貼り付いていたところを奥さんに発見され絶叫を浴びせられます。そら天井にこんなキモイやつ貼り付いてたら怖いわ。
なんというかこう、ショッカーの技術によって強化された!って感じが薄いんですよねヤモゲラスって。正直なんか造形もちゃちな感じだし、怪人としてはどう考えても弱そうだし実際弱いんですけど、その分余計「怖い変質者」「怖い人間」のニュアンスが全面に出ちゃってるところが良い。
だからタイトルも「殺人ヤモゲラス」なのが絶妙です。改造されててもされてなくても多分コイツは殺しが好きなんだと思います。そういう狂気が絶妙に漂っているところがたまらなく良いですね。
◆まとめ
この12話「殺人ヤモゲラス」は旧1号編最終回とも言える13話「トカゲロンと怪人大軍団」の直前のエピソードということもあって、2号編に向けた路線変更の萌芽が見られ始める頃でもあります。
更には主役の藤岡弘氏が怪我で不在ということもあり、特に本話はヒロインの緑川ルリ子が大大大活躍するエピソードでもあります。
とりわけ本郷猛不在を誤魔化すための苦肉の策があちこちに見られるのも面白いですが、多分子どもだったらほとんど気にならないと思いますね。当時のスタッフの苦労は計り知れませんがすごいと思います。
※強いて言うなら冒頭のルリ子さんの吹替ライダーはヤバイですどう見てもルリ子さんではなくピンクのつなぎ着たガタイの良いおっさんです。
あとはネット情報で知ったんですけど改造前のヤモゲラスこと柴田を演じた役者の方、本当に人を◯しちゃって逮捕された...なんて後日談があるらしいですが個人的には結構どうでもいい話かな。まぁ殺人怪人役の人が本当に人殺しになっちゃったってのは興味深い話ではありますけどね。
...とまぁ、結構掘れば色々出てくる本話ですが、私はやはりヤモゲラスの勇姿にこそ見惚れてしまいます。
なんだろう、なんか懐かしい感じがするんですよね。タイツ着てただふらふらうろついてるあの感じは、あぁそうか、
ステテコ一丁でビール買いに、歩いた方が早いくらいのスピードでノロノロ自転車漕いでた、うちのじいちゃんに似てるんだよなぁ。。。そんな、昭和ノスタルジーがヤモゲラスには漂っています(違
(了)