またまたベンアフレック演じたバットマンの魅力を語ります。もうこれだけ書いたから書くことないわと思ってても見返す度に新たな発見があります。
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男と女とワインと薬
©︎2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. TM&©︎DC Comics
何百回も言ってますがこのシーン本当に好き。
両親の墓から突如現れる黒い血とマンバット。その悪夢から目覚めたブルースの傍らには、そんな彼に気付きもせず背を向けて眠る女性。快楽のためだけの関係であることが窺える見事な撮り方(初見時はいることすら気付かなかった)。
この、存在はするけど背景に沈む登場人物の見せ方は西洋絵画と全く同じ。左側に脱ぎ捨てられたヒールとか服とか、無作為に見えるけど多分全て計算し尽くされて配置されてると思います。
そしてワインで薬を流し込む。睡眠薬だろうか?おそらく2時か3時に眠りについただろうに、(もしくはなかなか眠れず4〜5時?)外の景色から察するに朝の5〜6時には目覚めてしまう。
20年にも渡る夜の自警団生活ですっかり身も心も擦り減ってしまい、彼の人生から安らかな夜は消えてしまったことが象徴的に描かれています。
バットマンではない夜のブルースを描くことで、バットマンとしての傷の深さをこんなに美しく描くなんて、これは天才の仕事です。
そしてこのシーンの後、レックス邸に忍び込むためにバットスーツが必要だとアルフレッドを説得するシーンに繋がります。
バットマンでいるときだけが彼の心が解放され、心が休まる。そのタイミングを失った彼は苛立ちを隠せない。
バットケイブでバットスーツを見つめるブルースの顔に水面の光が映ります。
©︎2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. TM&©︎DC Comics
己の中の怪物に依存し切っている、もはや堕落した蝙蝠。そんな彼の有様を、バットマンの姿を通してではなく、ブルースの表情で見せたベンアフレックもまたやはり天才です。
ブルース・ウェインの中に巣食うバットマンがブルースの目つきや表情に刻まれた皺の中に見事に描かれているから、ベンバッツは骨の髄までバットマンしてて本当にカッコいい。
二つの悪夢
ムービー・マスターピース バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 1/6スケールフィギュア バットマン(ナイトメア版)
ちなみにブルースは本作で二度も悪夢を見ます。一つは上述の墓のマンバット。もう一つは退廃した未来でスーパーマンに処刑されるナイトメア。
どうしても夢かぶりしてしまいますが、実はこの二つ、意味合いが全く異なります。
前者はブルースの個人的なトラウマに根差した悪夢です。両親の死とそれに囚われたブルースの人生。そしてこの悪夢、本作終盤でマーサを救出することで超克されます。
しかし後者は、バットマンとしての最後の使命につながる悪夢です。彼が後に結成することとなるジャスティスリーグの使命を果たすために彼が乗り越えるべき未来の運命の暗示です。だからこそ、この悪夢から目覚めた瞬間は、未来フラッシュの来訪によって発生した嵐の影響で吹き飛んだ書類がまだ宙を舞っています。この夢は夢ではなく現実なのです。
ちなみにこの映画、「水」の表現がめちゃくちゃ多い。
- クラークとロイスの入浴シーン
- バットケイブに流れる水
- ブルースの部屋の前の湖
- ブルースのシャワーシーン
- カーチェイスシーンの水たまり
- 決戦時のどしゃぶりの雨
- クリプトン船のジェネシス・チャンバー
- 水に沈んだクリプトナイトの槍
そして、その対極の表現として砂漠に覆われたナイトメア世界が存在します。「生命」の象徴として水が描かれているとすれば、それを奪う反生命方程式に支配された世界が砂漠化しているのは納得です。
アクションがヘタなヒーロー⁈
過去のバットマン映画では、ベンバッツほど激しくカッコよく強いバットマンが描かれたことはありませんでした。
キートンバッツは首が回らないし、チャンベバッツは敵が順番待ちしてるこんにゃくだし、犯罪者をやっつけるダークヒーローを標榜する割には実はバットマン映画の戦闘シーンやアクションシーンはイマイチだったのです。特に「一対多」の表現が弱い。
それこそ、身軽なスパイダーマンの方がどのシリーズにおいても見事なアクションを披露してきました。
ではなぜバットマンにおいて魅力的なアクションが実現されてこなかったのでしょうか?それは、
- バットマンは生身の人間で特殊能力を持たないため、その強さは「スーツやガジェットの性能」によって表現されてきた。
- 首まで覆われたカウルや全身を隙間なく覆うスーツと大きなマントのせいで、実は派手なアクションが苦手で動きもノロマ(強みであるはずの「高性能スーツ」設定が逆にアクションの足を引っ張っていた)。
- 殺陣もパンチか回し蹴り程度の単調なものになりやすく、複数人を相手にしても結局一度に相手にできるのは1人ずつ。
- 不殺主義ゆえ、多彩なガジェットはもっぱら牽制か脱出のために使用。
伝説のマーサ救出戦
©︎2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. TM&©︎DC Comics
ところが、「バットマンvsスーパーマン」で描かれたバットマンは、これら全てをひっくり返したのです。
まずは何より、敵がガチでした。
- 全員銃で武装しており、真正面から撃ちまくってくる。
- 1人ずつ殴りかかって1人ずつやられるのを待ったりせず、動けるやつ全員が同時に本気で襲いかかってくる。
- マシンガンが壊れたら拳銃、弾が切れたらナイフ、と全員が複数の武器をちゃんと武装している。
- 誰もがずっと思っていた、「隙あらばゼロ距離で頭撃っちゃえよ!」を本当にやる。
「ダークナイトライジング」なんかでは銃持ってバットマンに駆け寄るバカとかがいましたが、本作にそんな間抜けは1人もいません。
そもそも、戦闘力がインフレしまくっていく本作では忘れられがちですが、終盤に登場した敵は全員レックスに雇われた世界一優秀な傭兵集団です。アフリカでも秘密任務をこなしてスーパーマンを罠にかけ、CIAをも欺いてきた超精鋭中の精鋭なのです。言わば、人類の中でも最強の部類に入るテロリスト集団です。そんな超強敵をバットマンがたった一人でどう迎え撃ったか。
©︎2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. TM&©︎DC Comics
- 外を守るミニガン武装の敵はバットウィングのマシンガンの機銃掃射で一掃。不殺主義もクソもない。撃ってくるやつは容赦なく撃ち殺す。
- 3階に陣取る敵に対して2階から侵入し床を落とすという奇襲をかける。アルフレッドとの連携が見事。
- 床に気を取られる敵を横目に素早くグラップリングで4階に上がり、同時に小型爆弾で敵のマシンガンの大半を破壊。効率的。
- 真っ先に、銃を破壊し損ねた敵を押さえ、腕を折って弾切れまで撃ちまくり残敵を牽制。まずは「飛び道具の無効化」を徹底。
- もっぱら移動用、脱出用だったグラップルガンを敵に突き刺し、牽制用だったバットラングも投げて突き刺す。容赦ない。
- 腕のガントレットでナイフの斬撃を弾きながら3人相手に立ち回る。防御性能のアピールと同時に多人数を相手にする戦闘スキルの高さが光る。
- ゼロ距離脳天射撃がまさかのノーダメージ。過去一の防御性能。そして本作序盤に登場した「テック・カウル」が伏線として効いてくる。
- 頭は固いがボディスーツにナイフは刺さる。ちゃんとダメージ描写が存在していて無敵ではないことも描かれている。
- とにかく腕を折りまくる。戦闘不能にする意味でも効率的であり感情的でもある。とにかく感情むき出しのファイトスタイル。
- 実は全てマントがCG。マントが後付けだからこそ派手に軽やかに動き回れる。
以上!是非このお盆休みに見返して下さい!