現在公開中「サンダーバード55」観てきました。ネタバレ(?)含めて感想書きます。
※前提として。私は「サンダーバード」好きですがオタクではないです。なので熱心なファンからすると「わかってねーな!」とお叱りを受ける内容かもしれませんが「そこそこ好き」なファンの戯言と思ってお読みいただければと思います。
◆完全新作と言いつつ…
今回劇場まで足を運んだ最大の理由が、「クラウドファンディングで出資を募り、当時と全く同じ手法で新作を撮った」というところに魅力を感じたからでした(但し製作は2017年、今回日本で初めて劇場公開となった)。
あのメカが、あの特撮が、一体どんな映像となって現代に復活するのだろう?それが気になって仕方なかったんです。
で、本編映像ですが、完全新作と銘打ってはいるものの、発進シークエンスなどお馴染みの映像は過去作品の流用です。言わばバンク映像はバシバシ流用しつつ、人形劇のドラマパートと、救出現場をメカが飛ぶシーンや爆破シーン等は完全新作でした。ですから、これは不確実な憶測ですが新撮:流用の比率は6:4〜7:3くらいではないかなぁと思います。
個人的には10:0で文字通り完全なる新作を期待していたのでそこはちょっとガッカリでした。
でも、それでも凄いと思ったのは、新撮映像と旧映像を繋いでも全く違和感が無かったことです。最も違和感が出そうなのが「画質」の部分ですが、おそらく旧映像もリマスターされているからか、本当に違和感がありませんでした。
新撮映像も当時と同じ機材で撮影しているのかもしれませんね。必要以上にギラギラとした高画質ってこともなく、当時のまんまの雰囲気だったことは最大の感動ポイントだと思います。そのクォリティの確認のためだけにでも観に行く価値があります。
特にお馴染みトレーシー邸は当時の映像から3Dスキャンして寸法を割り出しての完全再現。もう本当に60年前の映像そのものでした。
◆劇場用新作として
そして今回公開された新録エピソードですが、
- サンダーバード登場
- 雪男の恐怖
- 大豪邸、襲撃
の3つで、1960年に発売されていたレコード盤音声ドラマを原作としています。いずれもペネロープ嬢がメインとも言える内容となっており、彼女のキャラ人気もうかがえます。
とは言え、いずれもいわゆる「日常回」的なエピソードとなっており、メインとなるあらすじにはあまり派手さがないため、劇場用新作としては味気なさを感じてしまうのも正直なところ。
というかそもそも劇場用に製作された作品ではないという背景は汲んであげるべきところかな。
それに、原作が音声ドラマというのもあって元々アクションなしでも成立してしまうシナリオとなっており、それをカバーするための爆破シーンやメカニックシーンは随分追加アレンジされていたようです。
◆本当に見たかったもの
青島文化教材社 サンダーバード No.10 サンダーバード2号コンテナドック 1/350スケール プラモデル
とは言え、メカニック描写が肝となる本作において物足りなさを感じたのは本音。
私が本当に見たかったもの、それは、多彩で繊細なメカニック描写(新撮)なんです。
じっくり長回しで魅せる出撃シーン、あらゆる機構が連動するワクワクのギミック、思わず目を凝らしてしまうほど手の込んだミニチュアアート、そして特殊重機によるハラハラドキドキの救助シーン…。
そこに期待していた身としてはやはり少々物足りなかった。
それら観たかったものの代わりに続くのは、スーパーマリオネーションによる人形劇。そりゃあ勿論そっちもサンダーバードの大きな魅力の一つなのは確かですが、せっかくの映画館の大スクリーンで堪能するなら…とは思ってしまいますよね。
おそらくそういった想いも汲んでか、合間に特殊メカ紹介映像も挿入されますが、なんかとってつけた感が強く、そんなに嬉しいものでもなかったです。そんな映像より、シナリオ上の必然性から求められて活躍するメカが見たかったですね!
◆主演女優賞
AMIE 1/43 サンダーバード FAB 1 ペネロープ号 完成品 AM43009
本作の強みは、新撮映像もさることながら、当時のレコード音源を使用することでオリキャスの声を活用できることですが、それはあくまで原語版においてのお話。
日本語版として製作されるにあたって、「じゃあペネロープ嬢は黒柳徹子さんに再び演じてもらうの?」というとそこは見事な後継キャストが演じてました。
満島ひかりさんのペネロープ嬢は本当ハマり役でしたね。ルパン3世を栗田さんが引き継いだレベルでぴったりでした。あのなんとも抑揚のない淡々とした語り口から滲み出る浮世離れしたお嬢様感、見事だったと思います。
◆シン・サンダーバードではないけれど
≪2.変化球的なキャラエピソード編≫ 特番:樋口真嗣監督が選ぶ!サンダーバード エピソードBEST3
よく考えると、今回劇場に足を運んだ理由は、「完全新作」という言葉に惹かれただけではなかったのかもしれません。
「樋口真嗣監督による編集版である」ということと「シン・ウルトラマン」と「シン・仮面ライダー」が製作中というタイミングも併せて、それら特撮の原点に立ち帰ろうという「シン〜」の機運を感じたから、そしてそれに乗っかっておきたいと思ったからです。
当然樋口さんだけでなく庵野さん含め今「シン〜シリーズ」を支える名だたるクリエイターたちの原点は「サンダーバード」にあります。
ただそれでも本作が現在公開中のスパイダーマンの影に隠れている印象となってしまっていることや、同じ劇場にいたのがいずれも中年以上の方ばかりだったことに少し寂しさを感じました。
まぁ作りもプロモーションも完全にオタク向けですからね。
要は「あの頃の少年たち」のために作られた映画です。
なんかもっとこう、サンダーバードを知らない人が見ても「うぉーすげーこれ!」ってなるようなうねりみたいなものが感じられなかったのはちょっと残念。
でも本作がこれから始まる「シン〜シリーズ」祭りの前哨戦であるという私の捉え方そのものはいささか間違ってはいないと思ってます。
◆総評
良かったところ
- 新撮映像のクォリティの高さ。「あの頃」が完全再現されており、旧映像と繋げても違和感ゼロ。
- 満島ひかりのアフレコが見事。
- 大スクリーンで日本語版サンダーバードのコーラスが聴けたこと(涙)
物足りなかったところ
- メカアクション少なめ。
- 案外旧映像の流用が多かった。
- 「完全新作」ではあるが実際は「当時の作風の完全再現」であり、それが好きな「あの頃の少年たち」向けで新規ファン獲得は難しそう。
- 元々劇場用新作として製作された訳ではないので物足りなさをカバーする工夫はされているもののカバーしきれているかは微妙。
- 併映の「ネビュラ75」はシュールすぎ(笑)
(了)