放送から20年を数えるシリーズの記念碑的作品「仮面ライダークウガ」。
本シリーズではそんなクウガに残された謎や設定の隙間を好き放題考察していく。
クウガの基本4形態の中でも、赤いクウガ=マイティフォームは格闘戦に優れた基本形態と言われている。
しかし、なぜ赤が基本なのか?青や緑が基本形態でもおかしくなかったのではないか?
「自分がクウガなら一生紫でいたい」なんて友人もいたが、今回は赤が基本形態である設定の理由そのものを考察してみた。
◆赤いクウガになる条件
まず、第2話で描かれたように、赤いクウガに変身するには一定の条件が存在している。それは、戦士として戦う覚悟を決めること。
当初の雄介は、「このままでは死ぬ!」という極限状態に追い込まれ、窮地を脱するため、言わば一時凌ぎのような形で戦闘態勢に入っていた。そしてその場合は白いクウガにしか変身できなかった。
この白いクウガは、眼や宝玉が橙色で角が小さくアーマーが白いこと以外は、マイティフォームと全く同じであり、完全に赤いクウガの下位互換であることが伺える。
最終的に、戦士としての覚悟を決めた五代雄介は、石のイメージに導かれるように古代の戦士同様のポーズを決めることで変身する。
クウガにおける変身ポーズは、変身する覚悟を決めるための、精神的な必要性から存在するものとして描かれていた。
そして、「炎の如く」と碑文に描かれたその姿は、戦士の色のみならず、戦士の燃えるような闘志をも表現したものだったように思う。戦士の感情の爆発が最も表面化した姿こそ、赤いクウガだったのだ。
◆霊石アマダムの特性
ここで、霊石アマダムの特性を振り返っておきたい。クウガへの変身だけではなく、新たなフォームの顕現、武器の生成、更には金の力の発動に至るまでその全ては、変身者の意志と密接な繋がりがあった。
高く飛びたいと思えば青い姿に変わり、遠くの敵を見つけたいと思えば緑の戦士に変わった。
心肺蘇生時に受けた電気ショックのエネルギーを金の力に変換させたのも、五代自身のもっと強くなりたいという思いからだった。
これら肉体の変質・強化能力のことを本作設定では総じて「モーフィングパワー」と呼んでいるが、このモーフィングパワーのレベルは、変身者の強い意志によって支えられていると言えるだろう。
◆赤いクウガだけが…
翻って、赤いクウガにのみ見られる特徴と言えば何が思い浮かぶだろう?
その最大の特徴は、武器を使用しないということに尽きる。己の肉体こそが、赤いクウガ最大の武器なのだ。
そしてそのことは、本作において繰り返し描かれてきた「暴力の否定」を最も視覚的に表現した姿でもあった。
第2話冒頭の段階で、五代は己の拳に対して「嫌な感じ」と評しており、そのことは第30話の椿による蝶野への熱いセリフが代弁している。
更には第35話でジャラジの卑劣なゲゲルに怒った五代は、「本当は赤いクウガで金の力を使いたかった」と後に回顧しており、戦士の感情的・精神的な要件で発動するのも赤いクウガならば、同じく感情的・精神的な要件によってクウガが秘めたポテンシャルを最大限に発揮しうるのもまた赤いクウガなのだ。
◆一番強いのは赤いクウガ
武器生成の能力がない赤いクウガを「基本形態」として見るのは、言い換えれば他のフォームの方が進化しているとする見方も可能なのだろうが、これは実は逆なのではないかと私は考えている。
劇中の描写を見る限り、必殺のマイティキックによって封印エネルギーを注入したクウガの右足からは白い煙が立っており、強力な負荷が右脚全体にかかっていることも椿医師によって明かされている。
この描写は他のフォームにおいても見られるが、スプラッシュドラゴンを放った際には、ドラゴンロッドからではなくロッドを握っていた右手から煙が発生していた。ゴウラムによる必殺技を放った際も、ハンドルを握っていた両掌から白い煙の発生が確認されており、結局最大の負荷がかかっているのはクウガ自身の肉体なのだ。
※この描写は、武器を駆使したとしても肉体そのものがリスクを背負っていること、単に武器頼りではないことの証明のようで好きだ。
それは裏を返せば、他フォームでは武器を経由して間接的に封印エネルギーが注入されているということを意味している。つまり、直接クウガの肉体からエネルギーが注入される赤いクウガの技こそが本来の最も効果的な打撃方法であり、他の形態では決め手に欠ける攻撃力を武器で補わざるを得なかったと見ることもできるのである。
◆赤と黒は表裏一体
その意味では、やはり赤いクウガこそが本来の攻撃力を最大限発揮しうる形態であり、他の青・緑・紫は亜種であると見るべきであろう。
そして、赤いクウガが最も高い攻撃力を誇る=変身者の意志をダイレクトに反映させ得る姿であるとするならば、なってはならないアルティメットフォームに最も近いのも、この赤いクウガなのかもしれない。
あの時もし、躊躇なくジャラジを赤の金の力で葬っていれば、アマダムの安全装置が作動するまでもなく、アルティメットフォームになっていたかもしれないのだ。
そのことを証明するかのように、赤の金の力を発動する際、高揚感漂うBGMはピタッと止まり、ダグバをも思わせる嫌悪感と恐怖を煽る劇伴が使用されていた(30話、33話)。
しかしクウガはそのリスクを強さに変えた。極限までアルティメットフォームに近づきつつも、その強さのみを引き出すため更なる変身を果たした黒の金の力・アメイジングマイティは、やはり赤いクウガから派生したものだった。
裏を返せば、古代のアークル開発者たちは、「凄まじき戦士」の能力を最も安全かつ安定した形で使用するための姿として、赤いクウガ・マイティフォームを設計したのかもしれない。