次々と斬新な設定や展開で新たな仮面ライダーの歴史を築き上げた通称「平成ライダーシリーズ」。こんなの仮面ライダーじゃないなんて揶揄される作品もいくつかあるが、その多くにはちゃっかり「昭和ライダーへのリスペクトとオマージュ」が詰め込まれている。
今回は中でも「クウガ」「アギト」「龍騎」の初期三作品よりその一部を紹介する。
※全てを網羅すると膨大な量になるため、代表的なものを一部抜粋した記事であることをご了承いただきたい。
◆仮面ライダークウガ
・クモ怪人スタート
10年ぶりにスタートしたテレビシリーズ「仮面ライダークウガ」もまた、先例にならって1号怪人はやっぱりクモ。一見してすぐにクモとはわかるが、ふんどしを巻いた姿は実に新しい。テレビ放送版と特別版1話で声が違うグムンだが、個人的にはこもった感じのテレビ放送版が好み。
・城南大学
ヒロインの沢渡桜子が所属する城南大学考古学研究室。城南大学と聞いただけでピンとくるオールドファンも多いだろう。初代本郷猛と彼らは同窓らしい。他にもV3風見志郎も先輩にあたる。ライダーに縁のある大学だ。五台曰く、眉が太くて熱血漢な本郷教授なる人物がいるそうだが...。
・ライダーと相棒
仮面ライダークウガ、五代雄介を支える刑事・一条薫。常人離れした身体能力と不死身の体力、冴え渡る知性や神エイムで何度も五代の窮地を救ってきた。
仮面の戦士の隣に立つ普通の人間という絵面は、初代仮面ライダーに登場した滝和也をイメージしているとは高寺P。
ちなみに、クウガの第1話で遺跡のあの場所に五代が現れなかったら…アマダムは一条を戦士に選んでいたかもしれないそうだ。
・バッタにマフラー⁈
クウガには、なんとバッタの怪人が二体も登場。設定上2人は双子だそうだが、序盤に登場したバヅーはバッタ特有の跳躍力でクウガを翻弄。ライダーキックをも思わせる跳び蹴りも披露。
中盤に登場したバダーはバギブソンというバイクに乗り、紅いマフラーを巻いて、変身ポーズまで披露。バギブソンの最高時速は400km/hとこれも完全にサイクロン。
そんな大先輩を思わせる怪人を打倒することでクウガは歴史を塗り替えた、ということだろうか。
・新型バイクのパラシュート
大先輩を思わせるバッタ種怪人ゴ・バダー・バは、それまでの技が全く通用しない強敵として描かれ、バダー駆るバギブソンをも上回るスーパーマシン・ビートチェイサー2000のデビュー戦を大いに盛り上げてくれた。
そして初陣では見事バダーのバギブソンを大きく引き離して急停車。その急制動にはパラシュートが放たれた。
この映像に強烈な既視感を覚えたファンも多かったことだろう。
初代仮面ライダーの新サイクロンもまた、後部よりパラシュートを射出して急制動。新1号編後期オープニングとしても有名なシークエンス再現に興奮した。
クウガに関しては他の記事でたっぷり扱っているので是非そちらもご参照を。
◆仮面ライダーアギト
・カメとジャガー
アギトで真っ先に暗躍を開始した怪人=アンノウンはジャガーロード。続いて登場したのがトータスロードであった。この順番とモチーフにもニヤリとさせられる。「仮面ライダーV3」のハサミジャガーとカメバズーカモチーフなのは間違いないからだ。平成ライダー2作目の「アギト」には、仮面ライダーシリーズ2作目の「V3」を意識したであろう設定がちらほら登場するのが面白い。
13話、14話に登場したスコーピオンロードなんか、完全にドクトルG。斧に盾、頭に乗っかるサソリなど、潔いまでのまんまデザインだがやっぱりカッコいいし、一度はアギトを完敗させたその強さ。流石である。
・ライダーキック
複雑な設定と人間ドラマで多くの大人のファンも獲得した本作。アギトの放つ必殺キックも、角が展開し地面にアギトの紋章が浮かび…と非常に神秘的。
だが、設定上その名前はなんと「ライダーキック」。これまた潔いまでにストレートなネーミング。
劇中では「仮面ライダー」の呼称すら登場しなかった本作だが、それ故にか設定面ではめちゃくちゃ遊んでいて楽しい。
・レッドアイザー、パーフェクター
本作に登場するメカニックライダー・仮面ライダーG3が中盤バージョンアップされたG3-X。
マスクの赤い複眼はレッドアイザー。口元はパーフェクター。同じメカニックライダーとしての大先輩・仮面ライダーXのマスクを構成するパーツと全く同じ名前なのが面白い。
・GA-04アンタレス
そんなG3システムの装備には、明らかにライダーマンのロープアームそのものとも言えるものが登場する。それが、GA-04アンタレスだ。相手をロープでぐるぐる巻きにして拘束し、必殺技を撃ち込むなど非常に有用な活躍を見せた。
・アナザーアギト
意表をついて登場した「もう1人のアギト」、木野薫が変身するアナザーアギトのデザインは、実に仮面ライダー然としていた。深緑のマスクと全身、肩から伸びるマフラー、そして白い帯のベルト。禍々しい口元のクラッシャーと、骸骨を思わせるその形状は、アダルトにリファインされた旧1号ライダーのようであった。
・進化する色
アギトの最強進化形態・シャイニングフォームでは、角の金色と複眼の赤色が逆転。赤い角に黄色の複眼が鮮烈で印象的だが、この色を反転させるデザイン手法は、V3のデザイン手法と全く同じ。V3もまた、緑のマスクに赤い複眼を反転させて誕生した仮面ライダーだった。
◆仮面ライダー龍騎
・やっぱりクモスタート
ミラーワールド、ライダー同士の戦い、カードバトル…新たな要素てんこ盛りの「龍騎」だが、だからこそ1話はやっぱりクモ怪人で始まった。
しかし、終盤はCGで巨大化した姿が描かれるなど、単なるオマージュでは終わらせない新しさが光るミラーモンスターだった。
・複眼クラッシャー触角
西洋甲冑をイメージしたスリット入りのマスクが特徴の龍騎シリーズだが、赤い大きな垂れ目の複眼が龍騎、牙のようなクラッシャーがナイト、触角状のパーツがゾルダ、と初代仮面ライダーのマスクパーツがメインライダー3人に散りばめられている。中盤以降登場するタイガの胴体なんかもろに初代。奇抜に見えるデザインにも、仮面ライダーのDNAがしっかり刻印されている。
・13人の仮面ライダー
龍騎に登場する仮面ライダーはなんと総勢13人。この数字にピンと来ないはずがない。原作「13人の仮面ライダー」を彷彿とさせられるその数字。そしてその中の2人が正義の味方であることもまた、龍騎とナイトの姿とオーバーラップする(正義の味方ってわけではないが)。
奇しくもそのどちらかが死を迎えるTVスペシャル及びTV版最終回も、石ノ森章太郎描いた原作と重なってくるようだ。
・オルタナティブ・ゼロ
「アギト」のアナザーアギトのように、意表をついて登場したオルタナティブ、そしてオルタナティブ・ゼロ。コオロギのモンスターと契約したその黒い姿はどこか有機的で個性的。しかし、よくよく見るとそのデザイン、かなり王道の仮面ライダースタイル。触角、クラッシャー、大きな目にシルバーのベルト。加えて、オルタナティブとオルタナティブ・ゼロの見た目上の違いは、額のシルバーVと体側面のシルバーライン。まさに旧1号と旧2号の見分け方のようで面白い。
10年以上前、ゾルダ演じた小田井涼平氏がとあるホビー雑誌でオルタナティブのリペイント改造フィギュアを紹介しており、まさに仮面ライダーカラーでリペされていたそれが、想像以上に仮面ライダーでびっくりした記憶がある。
しかしデザイン以上にゼロに変身した神保悟志氏のダンディな魅力がまたオールドファンにはたまらない渋い魅力を放っていた。
◆同族殺しという方程式
仮面ライダー同士が殺し合うなんて仮面ライダーじゃない!という声も囁かれた当時だが、そもそも「仮面ライダー」自体が「同族殺し」をそのテーマの根幹に据えた作品であったことを忘れてはならない。
改造人間にされ、普通の人間にも戻れなければ、同じ改造人間としての苦しみを分かち合えるはずの同胞に命を狙われる孤独な仮面の男の物語。それこそが「仮面ライダー」だった。
それを最大限拡大解釈して展開したのが「龍騎」であり、「龍騎」の挑戦であった。そしてそれは大成功を収めたと言って良いであろう。
また、「クウガ」も元は同じ人間であるグロンギに対して暴力を振るうしかない現実に苦しむ青年の物語であった。
「アギト」は、神によって神に近づいた人間の神殺しの物語である。
異色揃いの平成ライダー三作品も、根幹にあるのは「同族殺し」の悲劇であり、それが根っこにあるからこそ、その作品世界はどこか鬱屈としたダークヒーローたちで彩られていったのだ。
次回は続く「555」、「剣」「響鬼」についても追って扱いたいと思う。