ADAMOMANのこだわりブログ

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SSSS_DYNAZENON(ダイナゼノン) 最終回後の考察:黒幕⁈シズムくんを振り返って〜怪獣優生思想って、なに?〜

見事な大団円を迎えた「SSSS_DYNAZENON」。

今回は、これまでのシズムくんの言動を振り返り、彼の真の狙いとは何だったのかを考えてみたい。

勿論ネタバレありで。

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©円谷プロ ©2021 TRIGGER・雨宮哲/「DYNAZENON」製作委員会

◆情動を求めて

怪獣優生思想が初めてガウマ隊に接触したのが2話のラスト。

そしてシズムくんがヨモユメに最初に近づいたのが4話で交換留学生を装ってクラスにやってきたとき。

このときからシズムくんは、自分の体内に隠した怪獣を育てる目的で動いていたのだろうか?

ここで見逃せないのが、なぜ自分たちに近づいてきたのかを夢芽に問われた際の5話のセリフ。

「君たちから情動を感じたんだ。そういったものが怪獣の好物なのかもしれない」

あくまで「〜かもしれない」という確証のない口振り。このことから彼が蓬のクラスにやってきたのは彼自身の意思や計画というよりも、体内の怪獣の意思に導かれたからだったのかもしれない

蓬と夢芽の様子を見て、情動の予感を察知した体内の怪獣が彼を突き動かしたのだろう…怪獣って井上公造氏並みのスキャンダル嗅覚の持ち主なのか?(違

 

◆神出鬼没で不気味

シズムくんはとにかく神出鬼没だ。さっきまでいなかったのに突如現れて会話に入ってくる。コワイ。

4話、校舎の裏でヨモユメが話していたとき、5話、廊下でプールのチケットが当たったことを話していたとき、そして11話、蓬が夢芽に告白したとき。

およそ常人の身体能力を超えた不気味なスピード。これも体内に宿す怪獣がもたらす特殊能力?

※ジャラジ思い出すなぁ…クウガの。

しかし何より恐ろしいのは、たとえ姿は見えていなくてもシズムくんはいつも近くにいたかもしれないということ!そう考えて是非全話見直してほしい。もしかしたらあの場面も、シズムくんは近くで見ていたかもしれない…そんなシーンがたくさん見つかるはずだ。

 

◆数々の計略

順にシズムくんの様子を見ていると、段々と体内の怪獣とシズムくんの意思が一体化していったのがわかる。まさにウルトラ戦士と人間のように

例えば5話。執拗に夢芽の乗るダイナウィングをビームで追尾していたが、今となっては蓬の情動を高めるための行動にさえ見えてくる。

となるとこれは純粋にシズムくんの思考にのみ基づいた攻撃だったのか?あるいは戦闘中のシズムくんの思考にも体内の怪獣がどんどん干渉し始めていたのかもしれない。

そして8話。

シズムくんが意図的に他の3人を怪獣からひたすら遠ざける姿が見られたのも、怪獣の声に導かれたシズムくんの策略だろう。しかし単なる怪獣のような衝動性だけではなく、人間らしい緻密な計画性も感じられる。怪獣の意思とシズムくんの意思が重なり始めているようにも思う。

そもそも「失敗作」と言いながらこの怪獣を最終的に操っていたのはシズムくんであり、このときの戦闘で夢芽が取り残されたmapps(ショッピングモール)に怪獣がよじ登ったのも、蓬の情動を発現させるためor蓬の怪獣使いとしての才覚を発現させるためだったのかもしれない

…だとしたら、蓬があの土手で冗談半分にインドミしたとき、シズムくんも近くで見てたってことだよな…。

但し、他の怪獣使い3人を遠ざけた理由については蓬を怪獣使いにするためなのは勿論、怪獣と繋がっていない怪獣使いを夜通し遊ばせると人間のように眠くなってしまうのか?を確認するための実験だった可能性もある。

 

◆理を守る怪獣使い

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シズムくんは、怪獣優生思想でありながら人間の「理」(ことわり)を務めて守ろうとしていた

ポイ捨てされていたジュースのゴミを拾って捨てたり、プールではカギをどっちの手につけるかにまでこだわったり、監視員の様子を見て走っちゃダメだということを理解していたり、ムジナがダイナストライカーをパクってきたことに対しても「ダメだよ。返してきたら?だって、人のでしょ?」と言う始末。

これも、人間らしく振る舞い続けることで自身の情動さえも怪獣のエサにしようとしていたということなのだろうか?

そう考えるとこの人怪獣の飼育に関しては物凄く健気だな

まぁ単純に「怪獣をも育て得る人間社会の生活に興味を持っていた」というのもあながち嘘ではないと思うが。

 

◆本当の怪獣使いは寝たりしない

「本当の怪獣使いは寝たりしないよ」

7話でのこのセリフ、初めて聞いたときは「?」だったが、要は怪獣使いは怪獣と運命共同体、人間の理から外れた存在になれるということなのだろう。

夜通し怪獣と繋がっていたオニジャとムジナは眠くならないと言っていたし、ラウワンで夜通し遊んでも、そもそも体内の怪獣とずっと繋がっているシズムくんだけは寝ていない

※みんながあくびする中シズムくんだけビリヤードを続けている。

また、ガウマもそれっぽいことは言っていて、蓬の母にバイトで働き詰めであることを心配されると「5000年前に比べれば楽勝」と答えており、今より怪獣がたくさんいて、ずっと怪獣とつながっていられた5000年前は、多分彼らもほとんど寝ていなかったのだと思われる。

その感覚でバイト入れれば調子悪くなるに決まってますよガウマさん(汗

何より、シズムくんだけ腕章の色と関係なくずっと目が赤かったのが何よりの証拠だろう。彼だけはずっと怪獣と繋がっていられたのだ。

要は怪獣使いって不老不死にもなれるってことか…そりゃあイデオロギーとしての「怪獣優生思想」なんて言葉も生まれる訳だ。

 

◆5000年前、何があった?

1話冒頭で怪獣の種をばらまいたのは誰か?という長らくの疑問の答えも、ほぼシズムくんで決まりのような気がする。

5000年前、一旦は死を受け入れ全滅の道を辿った怪獣優生思想。しかしおそらくシズムくんだけが5000年後に復活することを画策して怪獣の種を大量に着服。そして現代に蘇り、ひとつは自分の体内に、そして残りは空からばら撒いた…と考えるのが一番自然だ。

その根拠は10話の5000年前の描写にある。 

5000年前からシズムくんは姫に謁見する皆と距離を置いており、その後の酒宴でも食事にあまり手をつけなかったようだ。

そりゃあ国に仕えるなんて超「不自由」、シズムくんが納得するわけないわな。

更に、ジュウガ、ムジナ、オニジャが次々と倒れる中、シズムくんだけは死亡シーンが一切描かれていない上に、1人離れて行動していたようである。

明確にはされていないが、原作の設定から考えてガウマ以外の怪獣使いも皆毒殺だった可能性が高いが、11話の断片的な映像(及びボイスドラマ)から、酒に毒が盛られたようである

しかしシズムくんだけはこれを回避していた⁈

仮に毒を盛られても怪獣と繋がっていれば毒を無効化できそうだが、その肝心の怪獣の多くはガウマによって倒されたのだろう。それをもってガウマは「裏切り者」と呼ばれることになったのかもしれない。

この場面が10話で描かれた雨の日の決戦か?

新天地(遠い未来)で新たな怪獣の世界を築くことを目指し、シズムくんも一度は死を選ぶ。

いずれにせよ詳しい方法は不明だが、時間や生死をも超越する怪獣の力で5000年の時を超え、シズムくんは現代に蘇ったのだろう

 

◆怪獣優生思想とは?

結局、怪獣優生思想とはなんだったのか?それまで断片的にしか語られてこなかったが、最終話のシズムくんの説明で概ねハッキリしたように思う

時間や空間、生きることや死ぬことからも解放された怪獣という存在と共に無上の自由を謳歌すること=いわば超自由主義だ。

しかしこの極端な思想の前提には、今ある世の中を「ディストピア」と見なし、とことん悲観し否定する厭世主義的思考があると考えざるを得ない。

現実にある様々な社会制度や倫理観、文化的差異や国籍、人種などの全てを否定し取っ払った究極の自由を求める思考である。カッコよく言ったが、簡単に言えば現実否定である

それはさながら藤堂武史であり、新条アカネなのだが、シズムくんが彼らと違っていたのはそのカリスマ性

彼の発する言葉の前に、冷静なジュウガは従い、血気盛んなオニジャも落ち着き、冷めたムジナもやる気を見せる。

その意味でもやはり純然たる「怪獣優生思想」とはシズムくんただ1人だったのかもしれない。

 

しかし、自由を求めるイデオロギーが悪役ポジションのものになったというのは実に興味深い時代変化だと思う。「人類の自由のために!」ってのは基本的に昭和ヒーローの決め台詞だったからだ。

「自由」を追い求めた20世紀を経て、我々がようやく勝ち取った「自由」の正体が結局は現実逃避、現実否定であったというカウンターパンチを初めて21世紀の我々に食らわせたのが、かつて早過ぎた名作と呼ばれた「グリッドマン」シリーズの最新作であった…。

それもまた、本作の先見性の証明であり、時代が本作に課した使命だったのかもしれない。

 

蓬がなぜ怪獣使いになれたのか、姫は何者だったのか、ガウマは死んだのか、そもそもここは結局CWだったのか、残される謎についても引き続き扱っていきたい。

 

 

... と言いつつこの考察の続きは2年後の映画「グリッドマンユニバース」の感想記事へ!(笑)

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