◆緊迫の戦闘シーン
クウガほど、見ていて心拍数が上がって
「このままじゃやられる!」「死ぬ!」って不安と恐怖に駆られたヒーロー番組はなかった。
毎朝、本当にドキドキして、命の駆け引きをしていることを肌で感じていた。
◆止まるBGM
それは第11話、ザイン人間体との格闘に持ち込まれた五代との戦闘シーン。
さすがはザイン、中々すぐに変身させてくれない。
BGMが止まった。
ひたすらザインの唸り声と五代の息遣いと痛々しい打撃音だけが響く。苦痛に顔を歪める五代。これぞクウガ。
小学生だった自分は混乱する。
さっきまで笑顔で恩師との再会を楽しみにしていた五代が、ふた回りは体格の大きいグロンギにボコボコにされている。
これまで見てきた作品ではいつも、ヒーローがピンチに陥れば、BGMもそんな雰囲気に、盛り返せばBGMも勝利の高揚感漂うものに変わっていた。
いや、むしろ逆転していたかもしれない。BGMの変化が先で、あらかじめどんなテンションで見ればいいか教えてくれる「親切な」番組に慣れきっていた。
だから、クウガを見るのは怖かった。何に「乗れば」いいかわからなかったからだ。でも、それがクセになったのだ。
◆火花なんて散らない
クウガの戦闘シーンでは火花が散ることはほとんどない。
響くのは鈍い打撃音、時々流血。
アギト以降のライダーアクションは、火花と受け手のリアクションで表現されることが増えたが、正直それでは記号的で緊迫感が半減どころか10%以下にまで下がる。
火花が散っている内は、スーツに守られているように見えて、「心配しないですむ」のだ。
だが、クウガは違う。視覚的にも、聴覚的にも、これでもかと痛みを突きつけてくる。
◆雄介の声
オダギリジョーのアフレコが神がかっており、痛いときが本当に痛そうで、苦しいときが本当に苦しそう。
ほとんどヒーローのそれではなく、被害者の呻き声にも近い。
アフレコ後、用意された椅子に倒れこむようにして座るのが常だったとか(普通アフレコ現場に椅子はなく、オダギリ用にスタッフがいつからか用意していたらしい)。それほど全力でやっていたというのも頷ける迫真ぶりだ。
五代の苦しみが、荒い息遣いと悲鳴にも近い叫び声からしっかり伝わってきたからこそ、いつもハラハラドキドキさせられた。
◆クウガドキドキランキング
5位:ジャラジ戦
これに関してはちょっと特殊で、いつもグロンギに対して向ける恐怖とか嫌悪が、唯一クウガに向いた瞬間。
殴るたびに飛び散る血しぶき。
クウガが怖かった。
4位:ジャーザ戦(第2R)
第1戦目で酷い目に遭っている分、今度はどこを貫かれるか?という恐怖が常につきまとう。
例によってBGMもない。ライジングドラゴンも無効化。そしてジャーザまさかのフォームチェンジ。
タイタンソード二刀流で対抗。海に落ちる2人。全く読めない戦況。
3位:ジャーザ戦(第1R)
目を疑った。クウガが串刺しにされたのだ。
しかも五感が何倍にも研ぎ澄まされている分、痛覚も通常の何倍ものレベルで五代を襲っているはず。
それがわかる五代の呻き声。
クレームもあってかゴ集団編からは直接的な殺害シーンが減った分、その残酷さ、敵の強大さは五代がその身をもって証明させられる羽目に。
2位:バベル戦
止まるBGM。流血。ジャーザに続いてやはりフォームチェンジを見せるバベル。鉄壁の防御と思われたタイタンアーマーの破壊。五代の呻き声。
繰り返しハンマーを振り下ろすバベル、容赦ない。死ぬとしか思えなかった。
1位:ギノガ戦
「午後7時44分、死亡を確認した」
………
◆五代雄介が死んだ日
この日のことは一生忘れないと思う。
五代雄介が死んだのだ。
死ぬなんて、信じられなかった。
まだ何クール目、なんて発想も何もなかったから、死んだら「死んだ」んだと受け止めるしかなかった。
翌週の朝、7:58、放送直前のジャンクションの変化にも
「そう!死んだよ!どうすんの?!」と焦りと高揚。
まず、ギノガの毒を受けた瞬間の描写が半端なかった。
自分が知ってる毒へのヒーローの反応って
むせる
or
そんなこと俺が知るか
しか見たことなかったのだが、ギノガの毒はそんな甘いものではなかった。
全身の痙攣、即座に白へ弱体化→強制変身解除。五代は顔面蒼白。唇の色も紫に変色。
追い討ちをかける椿からの報告。
「超強力な腐食性の毒、被害者の中にはここまで運ばれる途中で体が崩れ落ちたケースも」
病室の五代。そして鳴り響く心停止の音。
その後ちゃんとクウガは復活を果たしたものの、だからどうとかではなく、
トラウマだけが残った。
あの日、間違いなく自分の中の五代も一度死んだのだった。
勘違いしてほしくない。
メソメソ泣いてもいないし、悲しくもなかった。
ただとにかく、怖かったのだ。
この番組は本当に人を殺すんだな、とわかった瞬間だった。それからより一層、油断なく、本気でこの番組と付き合うことにした。