【映画パンフレット】 ザ・フラッシュ 監督 アンディ・ムスキエティ 出演 エズラ・ミラー、ベン・アフレック、
辛めに書くので、この映画でめっちゃくちゃエキサイトした!って人は読まない方がいいです。
◆感想まとめ(微バレあり)
のっけから感想を一言でまとめちゃうと、「大して心に残らない映画」でした。
駄作ではないけど傑作でもない。だから多分見返さないし、かと言って酷評もしない、毒にも薬にもならない中途半端な出来の映画でした(これ酷評かな)。
なんでか色々考えたんですが、総じて「クロスオーバーに頼りすぎ」なんです。何でもかんでもクロスオーバーで誤魔化そうとしている。クロスオーバーそのものをオチに使いすぎなんです。
だからこの映画の最大瞬間風速は冒頭の戦闘シーン、「ジャスティス・リーグの一員として頑張ってるフラッシュ」でした。ここはまぁまぁ面白かった。
だけども肝心の「単独ヒーローとしてのフラッシュ」の掘り下げは中途半端だった。それはなぜか。繰り返しになりますが、バリーの物語として帰結させるべきトコロもクロスオーバーで誤魔化して終わっちゃうからなんです。
フラッシュによるタイムワープやマルチバースのゴタゴタも、結局単なるイベントとして盛り上げて終わり。そこにバリー個人の葛藤とかドラマが深まっていかない。
全く無いわけじゃない。でも掘り下げが足りない。だから中途半端なんです。
あ、あとそんな本作のクロスオーバーについてしみじみ思ったことで言えば、私は「ベンアフレックのバットマンや、マイケルキートンのバットマンが好き」なのではなくて、「ザックスナイダーが描くベンアフレックのバットマンが好き」で、「ティムバートンが描くマイケルキートンのバットマンが好き」だったんだよなぁということです。やっぱりそのキャスティングにおけるそのキャラは、その監督だけのものなんですよきっと。
ここからはより細かく具体的にネタバレも含めてあれこれ書いていきます。
↓↓↓以下ガッツリネタバレ↓↓↓
- ◆ジャスティス・リーグ
- ◆ワンダーウーマン
- ◆ベンアフレック
- ◆スピードフォースの新表現
- ◆ギャグシーンについて
- ◆アイリス
- ◆マイケルキートン
- ◆スーパーガール
- ◆本作の致命的欠陥
- ◆超豪華クロスオーバー
- ◆DCEUからの卒業式
◆ジャスティス・リーグ
冒頭から結構度肝抜かれましたよね。だってフツーにアルフレッドは登場するわ、スーパーマンは(一瞬だけとはいえ)登場するわ、セリフで全員の存在が語られてて、結構ちゃんと「ジャスティス・リーグ」(2017)の続編というテイだったんですよね。
…いや、そのことに驚いちゃう方がおかしいんだそもそも。この6年の間にキャスト陣とスタジオの間で何があったか、スタジオの方針が何度変更されたか…なんてメタな現実の問題は気にせず楽しもうよ。
と、思いつつもやっぱり驚きはしましたね。フツーにみんな出てくるんで。
だからガルのワンダーウーマンが出てきた瞬間はホント嬉しかったです。多分この映画でいっちばんテンション上がった瞬間だったかなと(マテ
とりあえず、日々人助けで大忙しのジャスティス・リーグの日常が見られたのは良かった👍どストレート直球でジャスティス・リーグが実写化されてる!って感じられたのは嬉しかったな〜。
ただ、よく考えたら2017年にチーム結成したその続編が見られたのがやっと6年後の今で、しかも今回が最終回ってそれはヤバイよね😅
◆ワンダーウーマン
多分ですが、ガルの演じるワンウー、これが最後でしょう。
だけどヘスティアの縄(真実の投げ縄)に触れたみんなが本音ポロポロ漏らしちゃうのとかもろ2017年版ジャスティス・リーグっぽくて、それってガルに対して敬意を払ったカメオではないよなってちょっと思っちゃいましたよね。ジョスとの追加撮影そのものが彼女にとってはネガティブな経験だったはずなので…。
それから、アングルの問題かワンダーウーマンのスカートがなんか短く見えた気がするのだが…。
元々のDCEUにおけるワンダーウーマンの衣装とガルのキャスティングってのは、闘いの中に生きる「アマゾン族の闘神」ってニュアンスが本来なんですけど、そういう尖った感じが抜けて女性らしさが全面に出ると途端にワンウーの衣装ってフツーに半裸だしセクシーなものになっちゃうんですよね。
「カッコ良さと美しさ」のバランスがここ最近はちょっと崩れがちで、カッコ良さよりも「カワイイ」に振りすぎな印象は受けました。それこそジョス版JL風の?
とは言え出る作品ごとに毎回毎回キャラが変わるワンダーウーマンを見事演じ分けてるガル様は本当にすごいなと。だからね、カッコいいガル様も好きだけど本作みたいなカワイイガル様も大好きです❤️(アホ
◆ベンアフレック
それからベンアフのバットマン。スーツというかカウルがとてつもなくカッコ悪かったのはなんなんだあれ。鼻が潰れててブサイクだったなー。とにかく劣化してたのが気になりました。あと色合いが紺に近かったのも余計ダサく見える要因か?
「白昼のバットマン」って我々はすでに「ダークナイトライジング」で経験済みなんですよ。
ダークナイト版のスーツは白昼でもとにかく映えるカッコいいデザインだったんですが、本作のは全く太刀打ちできてなかったなー…。DCとしての進歩・進化が全く感じられなかったのは残念。
あと、あのデカイバイクですが、JLでバットモービル大破してからはアレがメインマシンなのかな?車乗っててもどうせドア剥がされるからバイクにしたのかな(違
ただ、予告編のときから思ってましたけどあのバイクがあのデザインである意味があんまり感じられなかったのは残念かな。バットマンのガジェットって合理的であるべきだと個人的には思ってるので。
あと、ダイアナとのちょっとしたやり取りとか17年版JLの延長って感じがめっちゃしましたね。ダイアナのことめっちゃ好きそうブルース。なんかすっかり毒気のないバットマンになったなー…。
ただ、「あのシーン」はホントに良かった!
ベンアフレックが本作について、あるカットが演じられたから満足してるって言ってて、そこを本当心待ちにしてたんですがすぐわかりましたよ。
「その傷があるから今の俺がある」
だったかな?過去の悲劇が今の自分を生んだ。だから過去に生きるべきではないというブルースの台詞は本当に良かった。痺れました。それを語るブルースの表情もカッコよかった。これでベンのブルースとはお別れか…。
◆スピードフォースの新表現
あと肝心のフラッシュの新スーツですが、顔が大きく見えるのか首が長いのかボディラインとの一体感がイマイチでなんか気持ち悪いんですよね。
ただ、エズラフラッシュの稲妻が本来青だったのは尊重されてて、あのスーツじゃないときは基本スピードフォースが青だったのは良かったです。
多分周囲へのビリビリとかバチバチの影響を抑える?機能があのオレンジスーツにはあるんだろうなとは思います(勝手な想像ですが)。その辺の設定が推測できる感じなのは好感がもてましたけどね。だから嫌いではないですよ新スーツ。めっちゃコミック寄りだしね。それのおかげで余計に「あ、俺ジャスティスリーグ見てる!」って思えましたし。
あーでもあれ、タイムワープするときのあのコロシアムみたいな空間?あの演出はあんまり好きじゃないかな。単純にテンポが悪い。それに、全部可視化してる割にわかりにくい。
これは本作を語る上で個人的には結構致命的な問題点だったと思ってます。映像表現として(あくまで個人的な意見ですが)そんなにうまくいってると思えなかった。
ああいう異次元空間みたいな映像をフルCGで観るのにちょっともう辟易してるのかな?クアントマニアとかあーいうの多いじゃん。
◆ギャグシーンについて
なんかストレートにかっこいいフラッシュが見たいのに案外少なかったんですよね。
冒頭の赤ちゃん救出シーンとか、もうスローカットなしで全部高速でババっと終わっちゃっても良かったけどねw
なんか腹ごしらえ必要なのとか設定通りではあるけどなんかちょっと説明くさかったのとくどいのとでしんどかったかな。いやこれがラストに向けた伏線になってたならいいんだけど、都合良いくらい終盤のバトルでは別に腹減らないからねコイツw
あと、バリーの交友関係もちょっと描かれてましたね。アイリスも思ってた以上にたくさん登場してましたけど、特にバリーの大学時代の友人?みたいなあの人たちのシーン「いるか?」と思いました。
彼らのシーンに限らずなんだけど、なんか意味ないくだらない下品なギャグ描写みたいなのが地味に多くてノイジーでした。
フラッシュがヘスティアの縄持ったときのセリフとかもそうかな。
でもアメリカ人ああいうの好きだよね何なのあれ。マイケルベイもしょーもない下ネタを必ずぶっ込んでくるけど、ああいうの好きじゃない(でもマイケルベイ作品は総合点がそもそも高いから黙認できる)。
なんか子どもも含め若い人たちが見るだろうからライトな明るい作風にしてるはずなのに(特に最近のDC)、微妙に下ネタとか入れて作品の品性を自ら下げるあの感じはなんなんだ?
最近のMCUもそうだけど、品のない意味のないくだらないギャグは嫌い。アクションとかドラマのテンポをわざと崩しにかかるあのやり方、流行ってるけどやめてほしい。
汚いおっさんのスネのタトゥーとかIMAXの高画質劇場で見たかないのよこっちはw
◆アイリス
スナイダーカットのアイリスよ何処へ…。
髪型とか衣装とかとにかくキャラの魅せ方がなんか肌に合わんなこの映画。それをもろに感じさせられたのがアイリスかなー。
◆マイケルキートン
ベンアフレックのバットマンよりカッコよかったですね普通に。当然ながらティム・バートン版の頃よりずっとスタイリッシュなガジェットアクションが決まっていて良かったです。
一番最初のクローゼットから飛び出すところも、隠居老人ながら歴戦の老戦士って感じが渋いね。
ただ、やっぱりティム・バートン版の頃のような上品さは無かったですね。「上品な紳士」といううわべの仮面の奥に見え隠れする奇人っぽさみたいなところがキートンブルースの魅力ですが、終始奇人モード全開なんでw
まぁあくまでこれはフラッシュの映画ですから仕方ないかな。
◆スーパーガール
サッシャ・カジェ演じたカーラ・ゾー=エルことスーパーガールはちょっと想定外にサイコーでした。事前情報で見てた印象では「なんか違うなー」みたいな感じだったんですけど、実際に本編で見てめちゃくちゃカッコいいし可愛いしすっごく好きになりましたね。
本作の良かったところを聞かれて多分真っ先に挙げるとすればスーパーガールだと思います。それくらい惚れました。とにかく可愛い。
なんか影のある感じとかも良かったんで、ヘンリーカヴィルのスーパーマンとも並んでみてほしいなーって思いましたね。
とは言え、この世界のカル=エルって死んでるの?ちょっとよくわからんかったんですが。まぁ結局このカーラも死んじゃうんですけど。
総じて本作、クリプトン人の扱いが雑いですよねw
あ、あと彼の言ってることもよくわかりました。まぁそれは仕方ないよね。
◆本作の致命的欠陥
ごめんなさい色々文句言ってるんですけども、本筋の物語はものすごくシンプルでわかりやすいんです。
縦軸としてはあくまでも「お母さんが生きてる世界を守りたい」なので、これ以上なくわかりやすい。だから脚本はね、すごい良いんですよ。お母さん周りのドラマとか演出とか、18歳のバリーが真実を聞いてしまって動揺するとことか、バリーのドラマそのものは感情移入しやすくて良かったですよね。
バリーはこの戦いを通じて「過去の悲劇をありのままに受け入れて今を生きるしかない」ということを学びます。そしてそれは「2人のバットマン」が言っていた通りのことなんですよね。
でも「過去の悲劇が今の自分を作ってる」って本当の意味で理解できるのってそれこそ30代過ぎた後ぐらいからじゃないですか人間的には。だからまだまだ若いバリーは過去を改変してしまう。でもそれで良い。その未熟さゆえの無鉄砲がフラッシュの面白さだから。
…だのに、これだけ多くの犠牲を払って「やはり母の死を受け入れるしかない」って痛感したはずなのに、トマト缶の位置は変えちゃうんですね。父親を救うために。これはダメだろって思いました。
いや、それもバリーの甘さや若さゆえ…って解釈もできなくもないけど、バリーがトマト缶の位置を変えてまたもや過去を改変したのは、めっちゃメタな言い方ですが、ヘンリーカヴィルのスーパーマンとベンアフレックのバットマンをこの世界線から追い出すためだったんですよ。だから元々本作のラストシーンって、ジョージクルーニーじゃなくって、キートンブルースとカーラが帰ってくるはずだったらしいんですね。
その時点でも「おいおい…」なんですよ?だってスタジオの意向による強制的なキャスティング変更を、主役であるバリーのドラマを「寝取って」でもやっちゃうわけですから。
本当はバリーは正攻法=現実の司法の掟にのっとって父親の無罪を勝ち取るべきなのに、その機会を奪い取って別の新キャラの顔見せをしちゃうんですから。これは本来やるべき、「ザ・フラッシュ」の物語への完全なる冒涜です。
とは言え、新たに得た2人の仲間(キートンとカーラ)の死を改変できたという意味ではまだポジティブな終わり方だったとは思います。ちゃんと一本の映画としてはまぁまだ決着がついてて救いがある。
でも、キートンバッツやカーラの存在すらもその後無かったことにしたいスタジオの意向でこれが更に改変に改変を重ねられて、キートンやカーラの死すらも救済されることなくジョージクルーニーを出して終わらせるというこの締めくくり方は、バリーへの冒涜のみならず、キートンブルースやカーラの物語さえも投げ捨てていて…ちょっと凄いなと思います(ドン引き
これが「なんでもかんでもクロスオーバーで片づけすぎ」と冒頭で言った所以です。
◆超豪華クロスオーバー
とにかく本作は豪華すぎるクロスオーバーのせいで本筋が曇って見えにくくなっちゃってるんです。
そもそも、今回の戦いからわかったことってすごく大雑把に言えば「バリーの母親が殺されて、父親が無実の罪で服役したからスーパーマンが誕生してゾッドの侵攻から地球が救われた」ってことなんです。だからやっぱりバリーは不幸に見舞われたとしてもそんな自分の両親を誇りに思えばいいんです。
そしてそのことを涙ながらに自覚するバリーの姿こそが、今を生きる僕たちへのヒーローらしいメッセージになったはずなんです。
でも、やれクリストファーリーヴだニコラスケイジだwwwで映像としてはとにかく超高級食材のオンパレードなんですけど最終的に筋が通ってないんですよね。これは致命的だったと言わざるを得ませぬ…。
まぁそりゃあ、ジョージクルーニーの登場は嬉しいよ!ニコラスケイジのスーパーマンとかそりゃ声出して笑うの我慢しましたけどもww
◆DCEUからの卒業式
上でギャグ描写のことについてちょっと文句言いましたけど、厳密にはそれが嫌いとかじゃなくて多分「飽きてる」んですよ。ああいうライトなノリのヒーロー映画ってMCUがめっちゃやってるんで、見慣れてるんですよね。そりゃヲタクでもない限りDCEUとMCUの見分けなんかつかなくて当然ですよね。
最初は物珍しさもあったし楽しいしで受け入れてたんですけど、なんかおんなじようなのばっかりで辟易してるというか…それくらいヒーロー映画市場って、似たり寄ったりの映画が濫造されちゃってて飽和状態なんです。
これが多くの映画監督たちがぼやいていた、フランチャイズ化された映画市場の怖さですかね。
とりあえず本作を持って私はDCEUを卒業します。今までありがとう。
あ、でも新生DCUが面白いってんならちゃんと観に行くんでね👍
あとこれだけは言わせてくれ。フラッシュはドラマ版すげー面白いぞ。本作に無かったもの、全部あるから。
(了)