まさか「来ないだろう」と思いながら書いた記事のタイトルが現実のものになるとは…。
シン・ゴジラ、シン・ウルトラマンときて、シン・仮面ライダーとはあまりにも短絡的すぎて信じられなかったが、まさに「仮面ライダー生誕50周年」の今だからこそ実現できることなのだろうか。
◆庵野氏構成メモリアル映像から考える
YouTube上に発表された、庵野氏構成の仮面ライダーメモリアル映像。ここから、シン・仮面ライダーがどんな作品になるかを勝手に予想していきたい。
なぜならこの映像には、庵野氏が「仮面ライダー」という作品をどう解釈し、どう愛しているかが見え隠れしているからだ。
◆ライダージャンプの映像革命
四分割の画面で繰り返される空中でのカット。まさしくライダージャンプの映像の数々だ。
そもそも、ここまで激しく細かいカット割でテンポ良くアクションを魅せる特撮ヒーロー番組はそれまでなかった。
暗くて怖い、と言われる序盤の仮面ライダーだが、暗くて怖くても戦闘シーンには軽快なカッコ良さがあったのは、このトランポリンアクションに秘密があった。
重厚なドラマと軽快なアクションの融合。これを30分の特撮番組で初めて実現したのが、仮面ライダーだった。
シン・仮面ライダーでも、都会のビルとビルを跳び回る仮面ライダーの姿が見られるのではないだろうか。
◆異形のマスク
繰り返しクローズアップされるのが、旧1号と呼ばれる初期のアップ用マスク。
特にこの旧1号は、緑と言うより紺色にも近いマスクと薄桃色の複眼の絶妙なカラーリングが実に渋く、主人公でありながらやはりどこか不気味。
初代ゴジラも、初代ウルトラマンも、そして初代仮面ライダーもみな最初は不気味な姿をしていた。そしてそれがかっこよかったのだ。
そもそも仮面ライダーのデザインがバッタになる前は骸骨マスクの「スカルマン」で決定しかかっていた。ドクロのイメージは、大きな複眼やクラッシャーにも残されているが、やはり男の子は、本能的に怖いものに惹かれる。怖いけどカッコいい。
シン・仮面ライダーもまた、不気味なかっこよさを持った特異な存在としての登場に期待したい。
◆真紅のマフラー
仮面ライダーシリーズ ジグソーパズル 旧1号ライダー 1000ピース 仮面ライダー
前田真宏氏手がけたシン・仮面ライダーのポスターでも、やはりそのスーツやマスクはダークなイメージに包まれている。
しかし、そんな仮面ライダーをヒロイックな姿へと昇華させるワンポイントが、やはりマフラーの赤である。
赤い風車もそうだ。これらはつまり、彼の力の源である「風」を視覚化した色であり、異形の肉体に流れる血潮の色=人間の証明である。
繰り返し登場するジャンプカットは、改めて仮面ライダーが「嵐の男」であることを感じさせてくれる。
それにしてもライダージャンプって跳んでいる映像ももちろんだが、着地の瞬間や、相手を見据えて跳ぶ直前の片膝立てた姿勢さえも色っぽくて、カッコイイ...。
しかし気になるのは、このポスター画像におけるシン・仮面ライダーの変身ベルトの中央部が風車には見えないことだ。或いはこれは風車が回っている瞬間の絵面なのだろうか?
◆変身、そしてバイクアクション
爆走する白きスーパーマシン・サイクロン号と、バイクの力で変身する本郷猛。
風力エネルギーで強化される設定と、男の憧れ=オートバイの魅力が凝縮されたサイクロン号はやはりカッコいい。
なんだかんだ、仮面ライダーを名乗るならバイクに乗ってほしい。
それに、仮面ライダーだからバイクに乗るのではない。そもそも仮面ライダーになるためには、バイクに乗らなければならなかった。そんな初期の変身シーン、シン・仮面ライダーでも見られるのだろうか?
しかしこれだけは言える。孤高のヒーローの側には無言の相棒・サイクロン号が絶対に存在するはずだ。
ちなみにバイクを使った変身シーンでは、段階的に本郷猛の姿が仮面ライダーに近づいていく「仮面ライダー中間体」とも言える映像も存在し(OP映像でも一瞬確認できる)、シン・仮面ライダーにもそんな段階的変身シーンが見られるのではないだろうか。
◆闇夜に浮かぶ異形と異形
とりわけ初期ショッカー怪人たちは、序盤の暗い雰囲気もあって不気味な者が多い。ナイトシーンも多く、その不気味さに拍車がかかっている。
加えて、マスクからのぞく人間の目が妙にギラついて見えて、異形の度合いを増している。怪人たちは、意思疎通不可能な完全なる「カイブツ」ではない。異形とは言えど「れっきとした人間である」というところにショッカー怪人の怖さがあった。
その点ではやはり仮面ライダーと怪人は同質である。そんな2人が闇夜に浮かぶナイトシーンには言い知れぬ気迫が漂っていた。
是非初代に見られた怪奇モノの恐怖を、ナイトシーンに浮かぶ怪人の眼光と共に今一度復活させてほしい。
◆後継者の証・変身ポーズ
そして唐突に登場する一文字隼人とその変身ポーズ。
仮面ライダーの代名詞とも言える変身ポーズの映像だ。一般的な感覚で言えば、これが冒頭に出てきても良さそうなものだが、劇中の時系列に忠実、というより、この編集からはもっと恣意的なものを感じた。
それは、仮面ライダーには必ず後継者が現れるという歴史的事実だ。
「仮面ライダーといえば変身ポーズ」ではなく、魂を継ぐもの=2人目の男の象徴として、変身ポーズがあるのだ。
それでは、シン・仮面ライダーにも一文字隼人は登場するのだろうか?個人的には、後発の2号の方がポーズによる変身が可能という形でアップデートされているという設定がものすごくツボなので、是非それらも踏襲した上で、旧型の1号が新型に負けない展開が見たい!
◆時代が望む時、必ず甦る
ルリ子さんを後ろに乗せて海岸を走る本郷猛。なんとヒロイックな映像だろう。後任に日本を任せ、彼はまた新たな戦場へ消えてゆく。
そして御大の遺言
「-時代が望む時、仮面ライダーは必ず甦る。-」
このタイミングでこの言葉が出るというのは、非常に意地悪な捉え方かもしれないが、半ば現役の作品群の存在を無視している(眼中にない)ようにも思える。テレビというメディアでは本来仮面ライダーが志向していたものを薄めて提供せざるを得ない現状に対し、真っ向から
「本気であの『仮面ライダー』を蘇らせますよ」
という庵野氏の、石ノ森章太郎へのメッセージのように感じられた。
◆シンって何?
シンって何?という戸惑いの声も目立ったが、ものすごくザックリ言ってしまえば「リメイク」である。
以前、別記事でもシン・仮面ライダーというものが作られるとすれば?についてダラダラ書いたこともあるが、
要は
- 怪奇性
- 悲劇性
- アクション性
という三つが仮面ライダーの柱である。特に怪奇性と悲劇性の2つが極端に薄められつつある昨今、ドギツメのダーティSF怪奇アクションドラマに期待したい。
「シン・仮面ライダー」は2023年公開を目指して鋭意準備中のようだ。