adamomanのこだわりブログ

特撮ヒーロー、アメコミヒーローを中心にこだわりを語るストライクゾーンの狭すぎるブログ

怪奇大作戦 第7話「青い血の女」〜自己矛盾を抱えた奇妙なAIと孤立する老人たち〜

本シリーズでは、稀代の科学ミステリー番組「怪奇大作戦」の中でも選りすぐりのエピソードをご紹介。

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とりわけ、

①特撮と合成を駆使した不気味な映像表現

②50年前とは思えない先見性に富んだドラマ

の2つを軸に語ってゆきたい。

1968年、「ウルトラセブン」最終回の翌週より始まった本作。円谷作品には、所謂「ウルトラシリーズ」とは全く違う世界観を持つ特撮番組があったことを、多くの方々にも知っていただきたく思う。

〜あらすじ〜

SRI(科学捜査研究所)の捜査官・三沢京助は、友人・鬼島夫婦の家を訪れたが、どうやら鬼島とその父親・竹彦の関係が悪化していることを感じ取る。

帰路についた三沢を襲う小さな影-刃物を持ったフランス人形-。その場は軽傷で済んだものの、近場で殺害されたサラリーマンや女性の件で、三沢が重要参考人として疑われてしまう。

いずれの事件でも、同時刻にテレビ映像の乱れが発生していたことから、SRIは強力な電波の発生源として竹彦の家を特定。警察らと共に乗り込み、通り魔人形を破壊。

しかしそこに待ち受けていた真犯人=人形を操っていた者の正体もまたなんと人形であった。

息子に捨てられ、孤独な余生を強いられた竹彦は、自分を裏切らない娘に見立てた人形を製作。その人形が、「老人を捨てる子どもは許せない」という竹彦の意を汲み、鬼島夫婦と似た風貌の若い男女を、ブロンドの洋風人形を操って無差別に襲わせていたのだ。

しかし彼女もまたいずれ老人を捨てるかもしれない。その自己矛盾に錯乱を始め、自らその身を投げ出す。

その後には青い血が広がっていた。

◆刃物片手に夜道を徘徊する人形

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ず、本話最大のインパクトはここにある。ストーリーを全く覚えていなくとも、刃物を片手に夜道を徘徊する人形の姿だけは強烈なインパクトと共に強く印象付けられるだろう(トラウマ必至)。

特に女性殺害シーンでは、車の外から、中からと執拗に追い回し、更には自宅まで追跡。息の根を止めるまで徹底的につけ回した。

拳銃で破壊された頭部も、機械なのになんだかグロテスク。

50年前のゴールデンタイムにはこんな恐怖映像が流れていたのだ。まさに元祖「チャイルドプレイ」。映画レベルの映像が、お茶の間で、テレビで楽しめる。円谷作品の真骨頂。

更におぞましいのが青い血の女の姿。日本人形を思わせる長い黒髪と、妙に雑なつくりの顔がまた恐ろしく不気味だ。これがまた少女のような棒読みの声で喋るのだからたまらない。

わずか30分のテレビ番組の中に、洋人形・和人形両方の怖さを詰め込んだ、ホラー要素てんこ盛りのエピソードとなっている(並みの子供なら今話で多分視聴を切る)。

 

◆時代の先をゆく先見性

はり驚くべきは、50年以上も前の作品でありながら、(現代風に言えば)「老人の孤独死問題」にメスを入れている点だ。

それまでの「ムラ」(共同体集落)を飛び出し、華やかな都会で華やかな恋愛結婚に向かった若者たち。しかしそれは同時に、親たちへの反逆と孤立を意味していた。

いずれ孤独に死んでゆくであろう老人たち(そして未来の老人=若者たち)。社会の発展と共に置き去りにされたマイノリティにスポットを当てる独自の鋭い目線に「円谷作品らしさ」を感じる。しかしその鋭さは、50年経った今だからこそ現実のものとして我々に真に迫ってくるのだ。

◆二段階の恐怖

々(主にお茶の間)を恐怖に陥れた殺人人形の正体は、電波で遠隔操作されたロボットであったことが発覚。SRIの調査で、あっさり発信源も割り出され、一気に事件は解決に向かう。

だが、人形を操っていた真犯人は竹彦ではなかった。人形を操っていたのもまた人形だったのだ。背筋がゾッと寒くなる。この展開がここまで恐ろしく感じるのは、「科学の力で怪奇を暴く」という作品テーマがあっさり裏切られるからだろう。

つまり、最初に得体の知れない殺人人形の恐怖を見せつけ、それがロボットによる犯行だった=科学的に解明されたと安心させた上で、更にその人形を操る不気味な異形の姿をもって視聴者を真の恐怖に陥れる。恐怖の波が2度にわたって見る者に襲いかかる。まさに一級のSFホラーだ。

 

◆自己矛盾に苦しむAI

かもこの女、老人を捨てた若者をブッ殺すことを目的とする一方で「いつまでも子供扱いされては困る、早く大人になりたい」と願っている。

つまり、自分もいずれ老人を捨てることになる、自分も憎むべきあの若者たちと同じようになってしまうと自覚している。その自己矛盾に苦しみ、最終的には「自分を殺さなきゃ」という判断に至り、自害する。

自己矛盾に苦しむAIと言えば、「2001年宇宙の旅」に登場する人工知能「HAL」(奇しくも同じ1968年公開)。

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HALもまた、「クルーたちと協力するように」と命令をされながら「ミッションの真の目的をクルーに話してはならない」という矛盾した命令を与えられ混乱。結果、HALは恐ろしい暴挙に出ることとなる。

ここで私が強調しておきたいのは、孤独に暮れた一老人の発明は、宇宙を飛ぶスパコンAIと肩を並べるレベルにある=換言すれば、何も海外の世界的SF映画にまで手を伸ばさなくとも、この日本には、既に一流のSF作品が、しかもテレビで放映されていたということだ。

◆「アレ」とは?

ンディングを前に、SRIの面々が今回の件について語り合う。

その中で、あの不気味な存在は、ただひたすらに「アレ」と呼ばれる。人形でも、人間でもない、不気味なアレ。ノムの言葉が印象に残る。

世の中がだんだん奇妙になると、みんなアレになるんですよ

アレ、能面のような感情の乏しい青白い顔。その体には、温かく赤い血は流れてはいなかった。どこか冷たい無情な青

サブタイトルは、「青い血の人形」ではなく「青い血の女」とある。老人を追い出し、己の春を謳歌する人々。我々の血はもしかしたらもう、青いのかもしれない。

 

しかしながら、そんなアレに対してSRIはとことん非力だ。今話で彼らがやったことといえば、電波の発信源を突き止めた程度のもの。

社会の変化と共にある生活様式の変化や心の変化は、科学ではどうしようもない。それは勿論、この世界にウルトラマンやウルトラセブンがいたって同じ

そんな社会の闇を、高度経済成長期の真っ只中に暴き出そうとした本作の千里眼に、私は感服してしまうのである。

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