アダモマンのこだわりブログ

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怪奇大作戦 第15話「24年目の復讐」〜終戦を知らなかった日本兵は何と戦っていたのか〜

DVD 怪奇大作戦 Vol.4

DVD 怪奇大作戦 Vol.4

  • 発売日: 2004/02/27
  • メディア: DVD
 

〜あらすじ〜

の横須賀。デート中のアベックが水中から現れた黒い人影に襲われるという怪事件が発生。しかも米軍海兵のみが海中に引きずり込まれ死亡した。

被害者の米兵と一緒にいた女性・吉村千恵子は、男性殺害の容疑で取り調べを受けるも容疑を否認。しかし黒い人影の存在を主張しても信じてもらえない。

しつこく迫る刑事らに対し、SRIの牧は独自に調査を開始。水中を自在に動き回る「水棲人間説」を提唱する。

千恵子が働くナイトクラブを訪れ、彼女に捜査協力を依頼した牧は、自ら海兵隊員になりすまし、水棲人間との接触に成功する。しかし、牧が日本人だとわかるや否や、男は再び海に消えた。

男の所持品とSRIでの実験結果を元に、男が旧日本軍の未帰還兵で、未だに米軍を見つけては殺害している可能性が高いと判断。牧は単身、海軍施設のあった猿島へ。

そこで男のアジトと日記を発見。木村というその男と再び対峙し、戦争が終わったことを伝えるも、木村は全く聞く耳を持たない。全身に爆薬を巻き付け、SRIの制止を振り切って米軍艦船へ特攻。非業の自爆を遂げた。

◆まさに予言:終戦を知らなかった日本兵

1972年2月、グアムで奇妙な日本人が発見・保護された。男の名は横井庄一。終戦後も日本が負けたことを知らぬまま、28年もの長きに渡り、島でのサバイバル生活を続けていたのだ。戦前教育の影響か、生きて帰国するつもりはなかったらしく「恥ずかしながら帰って参りました」という言葉がその年の流行語大賞にもなったとか。

更にその2年後、フィリピンのルバング島では小野田寛郎が、終戦後30年の時を経て投降。

いずれも、怪奇大作戦第15話「24年目の復讐」が放送された1968年から4年以上経った後のことである。本話の脚本を手掛けた上原正三氏らしい、戦争へのアンチテーゼと共に先見性に富んだエピソードと言えるだろう。

また、短いカットながら木村を演じた天本英世の鋭い眼光は印象深い。

後に「仮面ライダー」の死神博士役で一躍有名になる彼だが、やはりその怪演ぶりと存在感はこのときから健在だったと言えるだろう。否むしろ「日本でこの役を演じられる俳優といえば天本英世以外に思いつかない」と言っても過言ではなかろう。

 

◆牧と千恵子と横須賀の街

かしながら、水棲人間絡みのエピソードだけでは話が持たない。本話はメインに牧を据え、彼の亡き姉への想いをベースに物語が進んでゆく。実質の主役は牧だ。

ちょっとした映像に垣間見える、牧の哀愁漂う姿が絵になる。煙草一本吸うだけで様になる(岸田森ファン必見、是非映像で確認していただきたい)。

ナイトクラブでしつこく千恵子を追い回した結果、店員にボコボコにされるのも牧らしくて良い。ちょっと変人ぽさがあって、どこか理解されにくいキャラクターともマッチしていた。

それでいて海兵になりすました姿はどこか愛嬌があって可笑しい。牧の色々な顔が楽しめる。

牧が距離を縮める千恵子もまた魅力的なキャラクターだ。気が強く色好きな感じや、夜の街で働く設定など、妙に甘美な香りが漂うところは番組のカラーともマッチしている。

高村光太郎の「檸檬哀歌」さえ彷彿とさせられる程にどこか文学的な千恵子という名前は、今は亡き姉と同じ名前だったことが牧の口より語られる。

そんな2人を引き合わせる横須賀の街並みも派手で良い。牧の場違い感も含めて、夜の昭和が楽しめる味わい深い映像だ。

その反面、猿島の山でバッタリ再会し、牧にそっと柿を渡した千恵子は妙に子供っぽくて、「夜の横須賀の女」とはまた違った顔を見せてくれる。そしてそんな彼女のささやかな気遣いが、牧の幼き日の記憶を蘇らせる。

◆亡き姉の思い出

の脳裏に去来する幼き日の記憶。赤とんぼの曲がまた感傷的だ。

家の庭先で遊ぶ姉弟。空より急襲する米軍機。立ち上がる砂埃

あとに残されたのは、動かなくなった姉の姿だけであった。

戦後とは言っても、戦争は終わっていない。大切な家族を奪った銃弾への恐怖と悲しみは、今もずっと牧の心深くに焼きついている。

そしてその悲しみは、現代を生きる我々の心をも強く打つはずだ。

終戦を知らずに戦い続けた木村二等水兵だけではない。誰にとっても、この戦争は終わっていなかった。そのことを今一度茶の間に突き付けたところにこそ(エピソードの先見性以上に)、本話の真髄がある。

50年以上前の作品、裏を返せば戦後僅か20年後の作品

そんな戦後間もない昭和を生きた人々の息遣いが感じられる本作。語り部が少なくなりゆく昨今、貴重な歴史的価値も見出せると私は思う。

 

◆自爆の意味は

それにしても最後の自爆シーン。どうも米軍艦をうまく巻き込めたようには見えない。彼はただ1人自爆したのだ。

彼の耳にも、静かに語る牧の言葉は届いていたのだろう。戦争は終わった。日本は負けた。しかし彼はそれを受け入れることができなかった。それを認めてしまえば、この24年の全てを否定してしまうことになるからだ

数多の米兵を手にかけながらも、彼は決してアメリカと戦っていた訳ではない。彼は「永遠に終わらない戦争」と戦っていたのだ。そしていつしか、彼自身が「戦争」になった。戦争の化け物と化してしまった。

もはや終戦後の日本にも彼の居場所はない。狂人となった彼は、爆炎と共に死ぬしかなかったのだ。

怪奇大作戦 Blu-ray BOX

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  • 発売日: 2019/03/06
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