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バイオハザードの実写化がうまくいかない理由

バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ (吹替版)

バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ (吹替版)

これまで、何度か実写化の機会に恵まれてきたホラーゲーム界の金字塔・バイオハザードシリーズですが、ことゲームシリーズのファンほど、実写化作品群のクォリティにはどうも納得していないことの方が多いようです

決して映画のクォリティが低いという訳ではないのですが、「あのバイオハザードシリーズの実写化!」として見たときに、やはりコレジャナイ感の方が勝ってしまうのは事実だと思います。今回はその理由を、バイオハザード歴20年以上のこの私が、ちょこっとえらそうに分析してみたいと思います。

◆バイオシリーズの魅力TOP3

バイオハザードディレクターズカット デュアルショックVer.

まず、実写化作品群がなかなかファンに認めてもらえない要因を考えていく前に、そもそもなんでゲーム版バイオハザードシリーズがそんなにおもしろいのか?その魅力を3つに分けて説明しておきたいと思います。

①没入感の高さ

バイオハザードディレクターズカット デュアルショックVer.

まず一つ目は、このゲームがとことんプレイヤーの没入感を高める仕様になっていることです。

一度でも本シリーズをプレイしたことがある人ならわかると思いますが、バイオハザードって何かにつけ不便なゲームです。

弾薬は有限で、しかもどこにどのくらい落ちているかわからない上に、敵がいつ出てくるかもわからない。更にはインクリボンも有限なので、セーブすら迂闊にできない=やめることすら許されない。持てるアイテムにも限りがあるので、同じ場所を何度も行き来しないといけない。回復アイテムも勿論無限ではありません。

こんな不便さが結果として恐怖感や緊張感を高める効果として結実し、稀に見る没入感の高さを実現しているのです。

 

②密室空間こそ主役

バイオハザードディレクターズカット デュアルショックVer.

そんな没入感を高める演出として絶対に欠かせないポイントが、「密室空間に閉じ込められた恐怖」です。

上で挙げたような「不便すぎる有限性」が恐怖演出として機能するための大前提として、本シリーズには「出口の見えない謎解き脱出ゲーム」というそもそものコンセプトが存在します。

コレ結構誤解されがちなんですが、そもそもバイオハザードはゾンビゲームではなくて謎解き脱出ゲームなんです。あくまでゾンビはそれを盛り上げるためのスパイスに過ぎず、その意味で真の主役は「洋館」なのです(1作目で言えば)。

不気味なほど明るくて美しい空間もあれば、悪趣味なデザインの部屋もあったり、妙に不便な間取りになっていたり、要所要所にデス・トラップまで仕掛けられていることもあります。本シリーズの「洋館」=密室空間って、ただ密室であるだけでなく、明確な悪意を持ってプレイヤーを殺しにかかってくる凶器なんです。

「3」以降はオープンマップになって密室要素はだいぶ薄れていくんですが、その分プレイヤーを精神的に追い詰める要素としてマップを越境してくる難敵・「追跡者」が誕生しました。結局密室空間が広くなっただけで、「いつ何が起こるかわからないから早くここから出たい」という恐怖や緊張感は維持され続けてきました。

 

③三つ巴のドラマ

バイオハザードディレクターズカット デュアルショックVer.

バイオシリーズって単純に、「主人公とゾンビが戦うゲーム」って思われがちですが、スパイや裏切り者等、ストーリーの裏側では常に第三勢力が暗躍しているのも本シリーズの魅力です。

プレイヤーはそっち側にも神経をすり減らされることになります。味方だと思っていたキャラが突如裏切る可能性まで用意されているのです。しかし、それがまた面白い。

更にストーリーが進展していくにつれて、事件の黒幕が明らかにされていくそのスリル・ショック・サスペンス。ただ気色悪いクリーチャーに振り回されるだけのB級ホラーではありません。ベタな言い方ですが、「本当に怖いのは人間」というのをいつも痛感させてくれるのがバイオハザードシリーズなのです。

 

◆実写映画がハマる落とし穴

ここまで読んでもうお気づきでしょうか?今挙げた三つが、実写化作品には大体欠落していることが多いのです。ではなぜそうなってしまうのか?一つ一つ考えていきたいと思います。

①没入感の欠落

これは最早どうしようもないことかもしれませんが、自分自身が主観的にプレイヤーになって物語を進められるゲームとは異なり、あくまで客体となって鑑賞する映画(やドラマ)というメディアでは没入感がグッと下がってしまうのは当然です。

増して、クリスやジル、レオンといった有名キャラクターが実写作品に登場すると、ファンとしては「嬉しい」のは当然なのですが同時に「安心」もしてしまいます。なぜなら彼らは強いし絶対に死なないから。

無論、自分がプレイヤーだった場合は、自分の腕や判断次第で彼らだって簡単に死なせてしまえるわけですが、客観的に鑑賞する立場になるとそれは「絶対的な安心感」に変わってしまうのです。

その点、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演の映画シリーズでは、ゲームキャラとは別に映画オリジナルキャラを主人公に設定した点が秀逸だったわけですが、ミラジョヴォ自身が絶対不死身キャラになっちゃったので作風がまた明後日の方向に飛んでいってしまったわけです。

更に映画ともなれば起承転結がきれいに組まれてしまうので、「お先真っ暗な恐怖」というのも生み出しにくい。

当たり判定のないただの葉っぱのオブジェクトをハーブと勘違いして体当たりし続けたり、アイテムを回収しようとしたら持ち物いっぱいで回収できず、同じところを何度も往復させられたり、ハンドガンしか持ち歩いてないときにボス戦が始まっちゃったり...そういうgdgd展開、映画には当然あるわけない(し必要とも思わない)のですが、実写作品を見ていてもこの先どうなるのか展開が読めない恐怖というのをほとんど感じたことがありません

 

②機能しづらい密室設定

密室という空間設定も、映画になるとやはり機能しづらくなります。

ゲームだから看過されてきたことですが、律儀に鍵を探し回る必要なんてなくて、バリーよろしく鍵のかかった部屋なんて蹴破ればいいだけなのです。だから、謎解き脱出サスペンスの要素というのは、どの実写作品にもほとんど見られません。

そうなると後に残るのはアクション要素だけです。だからゾンビと戦いまくるだけのB級ゾンビ映画っぽくなっちゃうのです。

或いはレーザーで仕上げる人間サイコロステーキ。

もしオリジナル(ゲーム)に近い作風を目指すなら、ゾンビものではなくて、実は「SAW」とか「CUBE」とかはたまた「7(SEVEN)」とかみたいな、そっち路線を進んだ方が案外うまくいくんじゃないかとも思っています。

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今回私が一番言いたかったことはここにあります。

バイオシリーズにおいてゾンビなんて添え物です。主役はあくまでも「洋館」=密室空間が生み出す恐怖なんです。そこに光を当てた実写作品がまるで出てこない。

だから、「バイオハザードの実写化」と言いながら過去の実写作品群の大半は「The House of the Deadの実写化」と言った方が正確です。その意味では優秀な作品群です。

※世代の方はわかりますかねThe House of the Dead。私はゲーセンでよくやってました。

 

③単調なドラマ

但し、様々なものが犠牲になりがちな実写作品においても、ゾンビアクションものの要素と同時に生き残りやすいのが「ドラマ性」です。

定番ではありますが大切な仲間がだんだん自我を失ってゾンビになってしまい、主人公たちの手で仕留めなければならなくなる展開はやはり胸を打つものがあります。

 

...でも、それくらいなんですよね。

それにゲームオリジナルキャラクターが出てきたら何が起こるかって大体予想つくんで、そんなに目新しさはないし、今やバイオ界の王子様と化したレオン様を楽しみたいなら、わざわざ実写化しなくても完璧に描画されたCG映像を楽しんだ方が良い。

そしてその需要はCG映画作品群が既に満たしてしまっているんです。

ゲームオリジナルキャラたちのもっとかっこいい姿を見たい!って人はこっちを見てればいいんです。

もっとぶっちゃけたことを言っちゃえば、近年の「7」や「8」なんか見ていても特に実感することですが、ゲームそのものが既に4〜5時間分の大作映画レベルに仕上がっちゃっています。実写化する旨味が残ってないんです。それくらい、ゲームのクォリティが映画に追いついてきたとも言えるかもしれません。

それでも「ゾンビもの」が見たいんだー!って人がいるなら、私は迷わず「Walking Dead(ウォーキング・デッド)」をお薦めします。そっち見た方が断然面白い。

 

◆私が見たい実写版はコレだ

じゃあどうすれば良いのか?

とことん世界観をゲームに寄せるしかないかもしれません。

人間の役者にあえて人間らしい芝居をさせず、ぎこちない動きで廊下の隅の植木鉢を拾い、方向転換はその場でくるくる回り、何人で現着しようがどんなやばい状況だろうが「手分けして行動」しましょう。そう、クソ真面目にパロディをやるしかない。

そして結構それに近いチャレンジをしてくれていたのが、最新作「ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」だったかなぁとは思います。

この方向性をもっともっと突き詰めていつか煮詰めすぎた濃厚な「シン・バイオハザード」とか誰か作ってくれないですかね??

でも、結局は「誰か面白い人の実況動画」見れば済む話なんです。いや、これ大真面目な話、プレイ動画、実況動画というジャンルもまた、映画業界の立派なライバルだと思いますよ。


www.youtube.com

...はたまたどうすれば良いか?

少なくとも図るべきは「ゾンビ映画」というジャンルからの脱却です。個人的に思いつくところで参考にすべきは以下。

 

・「シャイニング」

「洋館そのものが主人公」という本来のバイオハザードのコンセプトや密室空間からの脱出という物語の着地点含めマッチング度が高い。その空間にいればいるほどおかしくなっていくという場が生み出す恐怖と狂気、映像から漂う生理的嫌悪感等はオマージュせずにいられないはず。

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・「ローズマリーの赤ちゃん」

人間の怖さ、異常集団の恐怖を描いた作品としてこれに勝るものはないと思う。直接的に化け物が映像として出てこなくてもこんなに人を恐怖に陥れることってできるんですね。アンブレラ社研究員らの非道な人体実験の模様を描くのにも参考になりそう。

・「SAW」

あくまで一作目だけですが、訳もわからず密室空間に閉じ込められたときの恐怖を主観的に描いている点が面白い。更にはそれを仕掛けた裏の存在やラストのドンデン返し等、実写バイオにもぜひ欲しいカラーですね。S.T.A.R.Sを洋館に誘き寄せたアンブレラのやり口なんかはジグソウとよく似てると思います。

・「CUBE」

デス・トラップ付きの密室空間からの脱出といえばコレでしょう!

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例えば、バイオハザード1作目に登場した「かゆうま」研究員目線の映画なんてどうでしょうか?

不気味な洋館で研究を重ねる中、だんだん明るみになってゆく研究内容の異常性、洋館の不気味さ、いよいよ発生してしまう危険なウィルスの大規模なリーク、研究員たちを蝕むゾンビ化の恐怖、そして自身の肉体にも訪れる変化、そんな事故をもデータ収集のために活用しようとする上層部の狂気...。

後半からは我らがS.T.A.R.Sアルファチームの到着と活躍、そして壊滅を描くのも良さそう。いつも気がつくと肉塊になってるアルファチームの皆さんですが、そんな彼らが勇敢に戦った姿をしっかり映像化するならアクションものとしても見応えあるだろうし、誰がどこで死ぬかはある程度自由に物語設計できそうだし、ハラハラさせられそうな気がします(黄道特急?そんなん知らん)。

謎解きあり、アクションあり、鬱展開必至の超絶ダークサイコサスペンスホラー!

まぁそれこそ「こんなのバイオハザードじゃない」って叩かれてしまいそうですけどね。

(了)