最近、2歳になる息子と「仮面ライダーV3」を完走。毎日すっかりV3に変身している彼だが、次はアマゾンが見たいらしいので続いて「仮面ライダーアマゾン」に着手。
ところが横で見ていた嫁の感想に衝撃を受けたので、私自身の感想も含めて4話あたりまでの感想をまとめておきたい。
特に、そのインパクトのみが一人歩きしがちなアマゾンの本当の魅力を、初見、未見の方にもしっかり伝えたいと思う。
◆人か野獣か?!密林から来たヘンテコライダー!
私自身、「アマゾン」は中学生時代にファミリー劇場で全話視聴済、だったのだが、この年齢になって改めて観るとたくさんの「新たな発見」に出会うこととなった。
やっぱり一番最初に感じたことは、「全然仮面ライダーぽくない!」ということ。
タイトルに「仮面ライダー」と冠されていなければ、あるいはアマゾンに赤い複眼がついていなければ、これが仮面ライダーシリーズの一作品とはとても思えない。
それこそ近年の平成〜令和ライダーシリーズも何かにつけて「こんなの仮面ライダーじゃない」と揶揄されてきたが、1974年、シリーズ4作目である大先輩の「アマゾン」の段階からとっくにコレジャナイ感MAXだった。
なにせ、主人公であるアマゾン(山本大介)はパンツ一丁で奇声を上げながら木々の間を跳び回っているのだ。
加えて日本語も話せない。ウーとかアーしか言えない。
当然、現代日本を生きる社会性も持ち合わせていない。
つまり、一見ただの不審者、変質者。警察やマスコミにも囲まれてしまう。
変化球の多い仮面ライダーシリーズにおいてさえ、後にも先にもこんなライダーは他に存在しないのだ。
◆アマゾンが2番目に覚えた日本語は…
しかし、そんな超変化球の連続が実は、段々薄れていってしまっていた「仮面ライダーらしさ」復権のキーアイテムにもなっていた。
元々、人ならざるものに改造されてしまった仮面ライダーが抱えていた苦悩、孤独感、疎外感…そういったものが、「アマゾンで育った野生児」という設定を通じて再現されていたのだ。
ゲドンによる殺人現場に居合わせたが故にその見た目だけで犯人扱いされ、石を投げられる。警察に協力しても不審者扱い。事情聴取され、マスコミのフラッシュにさらされる。
元はと言えば長老バゴーが何の説明もなしに勝手にギギの腕輪の移植手術なんかやって謎暗示かけて日本に密入国させたんだから、バゴーこそが彼の人生狂わせてるよなとか思ったりするのだが。
アマゾンが「トモダチ」に続いて2番目に覚えた日本語が、「バカヤロー」であるというのがなんとも彼の悲運を象徴している。これは、何の罪もない彼を人殺し扱いして石を投げたおっさんたちが彼に浴びせた言葉だ。
悔しく悲しいアマゾンは「バカヤロー!」を連呼しながら暴れ回る。
ゲドンに命を狙われ、人々からは迫害されるアマゾンに居場所はない。
段々派手な人気シリーズへと変化していった反面どんどん薄れていってしまった「孤独なヒーローの悲運」という仮面ライダーの根幹にあったテーマの言わば意趣返しだ。
そしてここからあの有名なシーン、パンイチで新宿地下街ランニング「ニンゲンキライ!」事件にも繋がってゆく。是非未見の方には衝撃の映像が待っているので見てほしい。
特に序盤のアマゾンは、しかし後述の良き理解者の存在も含め、「救いはある家なき子」みたいな感じだ。
◆初めて見た嫁の感想がエグイ
前置きが長くなってしまったが、息子と2人でアマゾンを見ている横から口出ししてくる嫁の感想がちょっと面白かった。
特に十面鬼について。
- 何コレきっしょ!(絶叫)
- 頭おかしい!(爆笑)
- 顔赤すぎ、多すぎ
- きしょい梅干し
- (九つの顔が)結構年食ってる…
- 夢に出てきそう
自分は子どもの頃からあらゆる書籍を通じてシリーズに登場する様々なキャラクターに見慣れていたからなんとも思っていなかったのだが、そうか、初見の人にとっては十面鬼ってこんなにとてつもないインパクトを残すんだな…と感嘆した。
あの極楽とんぼ・加藤浩次も十面鬼を子どもの頃のトラウマと語っているし。
改めて、一体どんな脳みそしてたらこんなデザイン思いつくんだろう?と思った。やはり仮面ライダーシリーズは石ノ森章太郎という天才抜きには語れない。
ちなみに、初めてジャングラーを見たときも嫁は大爆笑していた。
デカ過ぎる羽根について「頭おかしい」と笑っていたので珍走団めいたものに見えたのだろう。確かに半裸で改造バイクってのはシュールな絵面だ。
ジャングラーといえば、実はライダーのマスクと同じデザインのバイクってこれが初めて。そして同じコンセプトで後年誕生するのがバトルホッパー。
◆一番好きなシーン〜立花藤兵衛もトモダチに〜
今のところアマゾンで一番いいシーンだなぁと思ったのが第3話、海辺で焚き火を囲むアマゾンと藤兵衛のシーンだ。
本作を「仮面ライダーの物語」として紡ぐキーパーソンといえばやはりこの方・立花藤兵衛。しかしさしもの藤兵衛も、日本語の通じない野生児アマゾンには手を焼く。バイクに無理矢理にでも乗せようとするがアマゾンは激しく抵抗。なんとバイクを海に放り投げてしまう。
最終的には藤兵衛までもが海に落ちてびしょ濡れになってしまう。
服を乾かすため焚き火を囲むトランクス一丁の藤兵衛。そんな彼を見て初めて笑顔を見せるアマゾン。
藤兵衛はアマゾンと同じくハダカになって初めて対等に語り合える存在になれたのだ。
しかしこれは異文化交流の基本なのかもしれない。まずは相手と同じ目線に立つ。相手と同じ姿で向き合う。当たり前のことなのかもしれないが、子どもであるマサヒコを除いて大人の中でそんな風にまっすぐアマゾンとぶつかった人間は、立花藤兵衛だけだった。
こうして藤兵衛は6人目の仮面ライダー、アマゾンの後見人として新たな戦いの場に飛び込んでいくのである。
いやしかし、マサヒコも含めたこのシーンでの3人の笑顔が本当に素敵だ。
アマゾンについてはまだまだ語り足りないことがたくさんあるので続きはまたの機会に。
(了)