実はウルトラマンの故郷って、表記ゆれがすごいってことに最近ふと気づきまして。
「M78星雲」
「光の国」
「ウルトラの星」
「ウルトラの国」
...
多分全部同じものを指しているのだろうと思ってちょっと過去作を色々見返していたら、もしかしたらそれぞれ違うものを指してるんじゃないの?ってことに気づいたって話を少しさせてください。
※当記事では、ウルトラシリーズをマルチバースものとして再解釈しており、この記事もその考えをベースに書いています。合わせて下の記事もぜひお読みください。
「ウルトラの星作戦」って何?
このことが気になり出したのは、帰ってきたウルトラマン第38話「ウルトラの星光る時」に登場したモロボシダンのあるセリフからでした。
ナックル星人に捕えられたウルトラマンを救うべく駆けつけた初代ウルトラマンとウルトラセブン。ハヤタとダンの姿になった2人は
「ウルトラマンを救うにはウルトラの星作戦しかありません」
「一緒にウルトラの星を作りましょう」
という会話を交わした後、ウルトラマンを救出します。
...「ウルトラの星を作る」??
まぁウルトラの星と同じようなエネルギー空間を作り出すことでウルトラマンを蘇生させようということだとは思うんですが、なんとも違和感の残る表現でした。
ウルトラの星って人為的に作れるってこと?ということは、もしかしてウルトラの星ってすでに失われているの?それか、元々存在しない星だったの?(...悪い癖ですが色々と妄想が膨らんでしまいます)
ただ、同時に気になったのが「ウルトラの星」という呼称です。
そもそも初代ウルトラマンの頃には「ウルトラの星」という表現はなかったと思います。
調べてみた!歴代の呼称
流石に全話視聴まではできませんでしたが、「ウルトラマン」〜「ウルトラマンレオ」までの各作品において、彼らの故郷にいかなる呼称が使われてきたか、ザーッと調べてみました。もっと詳細をご存知の方がいらっしゃればコメントで教えてください。
「ウルトラマン」
第一話で「M78星雲の宇宙人」であると自己紹介しており、当初から「M78星雲」という言葉は明確に存在しています。
それと合わせてずっと多用されているのが「光の国」という表現です。文脈から察するに、M78星雲の暗喩表現ではないかと私は解釈しています。テレスドン登場回ではウルトラマンのことを「光の子」、「光の国のスーパーマン」とも呼称しています(ナレーション)。
最終回でゾフィが飛来した際には、岩本博士は彼のことを「光の国の使い」と呼称していて、人類の中でもウルトラマンは「光の国」から来た存在である、ということが認識されていたようです。ゾフィ自身も自分のことを「私はM78星雲の宇宙警備隊員」と自己紹介しつつ、ウルトラマンに対して「光の国へ帰ろう」と語りかけており、自分たちの帰るべき場所を「光の国」という言葉で表現しています。
やはり「ウルトラの星」や「ウルトラの国」という表現はこの頃にはまだ一切登場していませんね。
「ウルトラセブン」
セブンは正直全然検証できていないんですが、彼の故郷について間違いなく言及されていたものとして覚えているものを二つ挙げるなら、その一つが「ノンマルトの使者」です。ダンが心の中で「M78星雲では、地球人のことをノンマルトと呼ぶ」と回想していました。
もう一つがあの最終回でのアンヌへの告白です。「僕はね、人間じゃないんだよ。M78星雲から来た、ウルトラセブンなんだよ」というあのシーンです。セブン上司も「M78星雲に帰る時が来たのだ!」とか言ってましたね。
まだあるかもしれませんが、自分の知りうる限り「セブン」では「光の国」という表現はあまり多用されておらず、SF的なニュアンスの強い「M78星雲」が使われていたようです。
「帰ってきたウルトラマン」
OPにて「君にも見えるウルトラの星」というフレーズが登場します。過去二作品では確認されていない「ウルトラの星」という表現がここにきて突如登場しています。
私が個人的に調べうる限りでも、さらにchatGPTを使った結果でも、おそらく本作のOPが「ウルトラの星」という表現を使った最初期のものであるのはほぼ間違いなさそうです。

ちなみに、最終回でのバット星人が結構具体的なことを話しています。
「M78星雲のウルトラ星」という表現です。案外使用頻度の低かった「M78星雲」とセットで「ウルトラ星(せい)」という表現を使っています。また、バット星人によってシリーズ劇中にて初めて「ウルトラ兄弟」という言葉が使われたことも見逃せませんね。※構成員としてゾフィー含む全員の名前まで語られています。
ここで、私の中で一つの仮説が浮かんできます。
「M78星雲=光の国」かつ「M78星雲=ウルトラの星」なら、「光の国=ウルトラの星」と言えそうなものですが、実はこの二つは全く異なるものなのではないでしょうか?
というのも、過去の記事でも触れた通り当ブログでは「初代ウルトラマンと帰ってきたウルトラマンはマルチバースにおける同一人物であり、マルチバースをまたにかけて活躍するウルトラ戦士の同盟を『ウルトラ兄弟』と呼ぶのではないか?」という仮説を立てています。
この2人が元は別世界の別人だったとすれば、彼らの世界における「故郷」の姿もまた少し違ったものだったのではないでしょうか?
「ウルトラマンA」
話を戻して、続く「エース」の第一話では「銀河連邦」という言葉が登場しますが、これはまた別の世界線の話なので一旦脇に置いておくとして...
案外「M78星雲」という言葉が当初は登場しません。どちらかというとそれはもはや周知の事実としてわざわざ語られる必要がなく、むしろ「ウルトラ兄弟」の方を前面に出していくのが「エース」以降の傾向と言えます。
但し、彼らの故郷について言及されるシーンはちゃんと存在していて、オニデビルの赤豆によって体の自由を奪われたエースをセブンが呼び戻す際、「M78星雲」に戻ってくるよう指示しています。
ウルトラの父初登場(&死亡)回でも「はるかM78星雲から息子たちを救いにやってきたウルトラの父」と紹介されていたように、M78星雲という言葉はここでも登場しています。
一方、「ウルトラの星」という表現も「ウルトラ6番目の弟」と呼ばれたダン少年(黒歴史)とのエピソードの中で繰り返し登場しています。どうやら「ウルトラの星」とは、地上から見上げた夜空に輝く一つの星(=彼らの故郷)を指しているように思われます。
「ウルトラマンタロウ」
この作品では「ウルトラの国」という表現が多用されています。
典型的なのがムルロア回で「それ(ウルトラベル)はウルトラの国にあります」とウルトラの母が語りかけている他、ナレーションも「はるか300万光年の彼方、ウルトラの国、故郷を目指してタロウは飛び続けた」と語っています。同話においてゾフィーが語る歴史紹介のシーンにおいても終始「ウルトラの国」と呼ばれ続けていました。
タロウにおいて「ウルトラの国」呼びが多用されたのは、タロウ目線での物語が多く展開されたためと思われます。彼にとっての住環境(=家)としての世界は、地上から遠く見上げた「星」ではなく、生活感のあふれる「国」として語られる方が自然だったからかもしれません。
「ウルトラマンレオ」
レオでは打って変わって再び「ウルトラの星」呼びが復活します。タロウのように主観的な表現ではなく、ウルトラ兄弟とは基本的に関係のないレオの物語だからこそ、客観的な「ウルトラの星」呼びの方が自然だったのでしょう。
もちろん例のババルウ回においてはずっと「ウルトラの星」呼びが使われていて、「タロウ」にてウルトラの国の都市の様子が直接描写されましたが、本作では「天体」としての丸い「ウルトラの星」が初めて映像化されていました。
ウルトラマンは「星のかけら」
そもそも「星雲」の定義をよくわかっていなかったので調べてみました。
「星雲」というのは、星の元になるガスやちりが集まった場所で、星が生まれたり死んだりする場所のようです。つまり、星雲の中に星があるとは限らないんですよね。
それに、星雲の中で星が生まれた場合、星の回転運動によって周囲のガスやちりが吹き飛ばされてしまうので星は星雲から出ていったように見えるそうです。
M78星雲を「光の国」と表現しているのは言い得て妙で、「星が生まれるところ」、もしくは「光が生まれるところ」、ということなのだと思います。
もしかすると、当初の「光の国」とは「星を生み出す空間」を指していて、ウルトラマンとは「星の化身」だったのかもしれません。そう考えると、彼らの2万歳や3万歳といったとてつもなく長い年齢設定にもしっくりきます。※ちなみに、星の年齢としての「2万歳」はほぼ生まれたての原始星レベルらしく、星雲で生まれた新しい星=ウルトラマンという解釈とも合致します。
非常に勝手な解釈ですが、「ウルトラセブン」または「帰ってきたウルトラマン」(もしくは「エース」)くらいまでのウルトラ戦士は「星のかけら」を擬人化したような存在で、父も母もなく宇宙の自然法則の中から生まれ落ちた「歩く秩序(コスモス)」みたいな人々だったのでしょう。だから、彼らには特定の故郷となる星などなかったのだと思います。
ウルトラの父も同様で、彼は「ウルトラマンの父親」ではなく、宇宙全体の自然法則における「父性」が具現化した存在だと考えています。
大きく言えば、彼らにとっては宇宙全体が父であり母であり故郷だったはずです。だから、「ウルトラの星」なんて特定の「天体」はなく、彼らを生み育てた宇宙の輝きそのものを取り戻すことを「ウルトラの星作戦」と呼んだのだと思われます。
「帰ってきた〜」以降登場する「ウルトラの星」という言葉は、おそらく本来は、自分の生まれたM78星雲・光の国を懐かしんで見上げた夜空に輝く星の瞬き=「郷愁」を具体化した言葉だったのだと思います。やはり「ウルトラの星」とは阿倍仲麻呂よろしく「三笠の山に出でし月」だったのです。
上の記事では、中国から故郷を懐かしんで月を見つめる阿倍仲麻呂とウルトラマンの共通点を指摘しています。
つまり、M78星雲には私たちがイメージするような「星」は存在しないということになります。ウルトラの星やウルトラの国は、M78星雲の中にある「一つの星」であるはずなのですが、「星雲」の定義に照らすと、そこに特定の天体はないはずなのです。
では、「タロウ」や「レオ」の頃には「ウルトラの星」やウルトラマンの存在は一体どう変化していったのか?この続きは「『星人』になったウルトラマン」(仮)にて!
(了)

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