寒くなってきたらデスキャブ聴きたくなります。
中でも好きなこの曲の和訳を意訳気味にやってみました。
和訳(意訳)
The Atlantic was born today
And I'll tell you how
今日生まれたこの海の
いわれを話そう
The clouds above opened up
And let it out
雲の群れが 割れてちぎれて
落ちていく
I was standing on the surface
Of a perforated sphere
When the water
Filled every hole
割れた大地を
雨が潤し
地表は沈み
僕はそれを見ていた
And thousands upon thousands
Made an ocean
Making islands where no
Island should go
長い時を経て
海が生まれ
島が作られ
島が流され
Oh no
あゝ
Most people were overjoyed
They took to their boats
人々は歓喜の中
漕ぎ出していく
I thought it less like a lake
And more like a moat
それは海というより
大きなお堀
The rhythm of my footsteps
Crossing flatlands to your door
Have been silenced forevermore
僕の足音は
君の元には届かない
きっと ずっと
The distance is quite simple
Much too far for me to row
It seems farther than ever before
遠すぎて
もう見えない
遠ざかっていく もっと ずっと
Oh no
I need you so much closer
そばにいてほしい
So come on, come on
お願いだ
解説
デスキャブらしい、切なくてメロウで文学的な歌詞が本当に素晴らしい一曲です。
タイトルの「Transatlanticism」とは「大西洋横断」という意味で、歌詞中では「遠すぎてとても無理だよ」と否定されているものであるというのが皮肉です。
文字通りに受け止めるなら、「大切な人が大西洋を隔てた別の大陸に行ってしまったことを悲しむ歌」なのだと思いますが大西洋というのが心理的な距離の暗喩として使われているだけかもしれません。「とても漕いでいける距離ではない」と言っていますけど飛行機で飛んで行けば良いだけですからね。
ただ、この歌詞の人物が「ボート」しか持ち合わせていないという点がもしかすると彼の心の弱さ、小ささを暗示しているのかもしれません。加えてその対比となる大西洋の存在によって、二人の距離がどれだけ離れているのかもよりはっきりします。
そして何より、海のことを「湖ではなく堀のように思える」と表現しているところが秀逸です。海は、大陸と大陸を、そして二人を隔てるお堀であると捉える感性は素晴らしいですね。
また、歌詞の始まりから考えると、二人の距離が離れてしまったのには何か原因があって、彼もそれをわかっていて静観していたっぽいです。
↓とよく似ています。
だから、大切な人は突然いなくなったのではなく、長い時間をかけて離れていったのであり、それを見ているしかなかった自分の小ささを悔いる、これは「後悔の歌」のようです。
そんな小さな男の小さな心を、「大西洋」という大きな大きな海の物語にすることで壮大な名画のような美しさをかたどる歌詞の奥深さに感服します。
(了)