前回の記事で、龍騎世界のライダーバトルとは陰陽道の文脈を悪用した呪いの儀式である可能性を指摘しました。
※前回記事の内容を前提に今回も話を進めるので未読の方は是非。
その儀式に用いられる装置として最も重要なのが、アドベントカードです。
あまり他所でも深められていないようなので、そもそ"Advent"という言葉の意味から龍騎世界の「ライダーシステム」について掘り下げてみます。
"Advent"という降霊術
"Advent"という英語は元はラテン語の"Adventus"が語源で、「出現」「到来」「顕現」といった意味を持つ英語です。
劇中のイメージから「呼び出す」とか「使う」とか「発動させる」であれば、"summon"とか"activate"とか他の語彙でも良さそうな気もしますが、これらの語彙と"Advent"はかなりニュアンスが異なります。
"Advent"における「到来」は、「別の領域」、つまり「異界」から何かがこちら側にやってくるという意味で、やはり龍騎の作品世界においてカードを使うという行為そのものが「異界との交流」だったことがわかります。
あくまでも「到来」ですから、カード使用者=仮面ライダーが全てを司っているわけではなく、「異界のものを顕現させてしまう」という「畏れ」を含んだニュアンスも感じ取れます。
より陰陽道的な言い方をすれば「降霊」に近い。そしてモンスターの身体の一部を自身の武器として使用するカードの効用から考えてもそれは確かだと感じます。
他方、クリスマスシーズンに「アドベントカレンダー」といった言葉を聞くこともあると思いますが、現在では一般的に「神やキリストの到来」というニュアンスで使われることが多く、クリスマスシーズンの到来を予期させる、神聖で祝福すべきポジティブな言葉のイメージが強いです。
が、本来「お祝いの言葉」として使われるべき言葉が「戦うための言葉」として使われていることに違和感を覚えたことはないでしょうか?
ここに「呪術の基本原則」が存在しています。何かを呪うとき、「物事を反転させる」(あべこべにする)というのはよく使われる手法だからです。
呪術と「逆さごと」
例えば日本の葬儀体系には「逆さごと」という習わしがあります。
「着物を左前に着る」、「履物を左右逆にする」、「逆さ屏風」、「北枕」…といった日常生活とは逆の様式をとることで、本来の正しい配置とは逆の状態を「死者用」または「境界用」として区別します。
「逆さごと」は死者を正しく弔うための儀礼的習慣ですが、本来死者に向けるべき行為を生きた人間に対して行うことは忌むべきことですよね?
子どもの頃、お茶碗いっぱいの白米に箸を突き立てて叱られたことはありませんでしたか?これは無意識の行為がたまたま死者に向けるべきものだった、というケースですが、例えばクラスメイトの机の上に花が置いてあったら、もしくは自分の机の上に花が置いてあったら、どう思いますか?死んだ人を弔うための行為を生きている人間に向けてしまえば、それは「呪詛」となります。
※都市伝説系のホラー話でよく見かける「逆拍手」が恐怖の対象となるのも同様の発想からきていると思われます。
正しい神事においては「現世と異界の境界を明確にするため」=秩序を保つために逆さごとが守られますが、その様式を逆手に取り、本来あるべき状態のものを逆さに配置して、現世と異界の境界を曖昧にし秩序を破壊することは呪術師の常套手段です。
そして、龍騎における"Advent"も、本来祝うべき「神の降臨の言葉」を「戦いのため」、「殺し合いの儀式のための言葉」として使っているところに呪術的側面が見出せます。
「アドベント」が発声されると、祝福の言葉と共に争いが激化する「あべこべ」が生まれ、この「あべこべ」の連続によって、ミラーワールドという「異界」と「現実」の境界は曖昧になってゆくのです。
※最終決戦時のシアゴースト大量発生と現実世界への侵食は必然だったと考えることもできます。
「仮面ライダー」の逆さごと
龍騎世界における「逆さごと」は他にも見出せます。
そもそも、正義のヒーローの象徴たる「仮面ライダー」という言葉を、「自分の願いを叶えるために戦う13人」を指す言葉にしてしまったのも「逆さごと」と捉えることができます。特に龍騎は「これが仮面ライダー?!」といった意味でも大変話題になった作品でしたね。
こういうテーマは各世代のファンのこだわりから議論が白熱しがちですが、そもそも「あえて外す」ことを狙って作られていると解釈することはできると思います。
また、仮面ライダーの人数が13人であるというのも実に意義深い。キリスト教的にもカバラ数字的にもいかようにもその意味を解釈することは可能ですが、仮面ライダーという文脈から紐解けば、当然萬画版「仮面ライダー」における偽ライダー編が蘇ります。「13人」とは本郷猛も含めた合計人数であり、12人の悪人が1人の善人を殺す物語を暗示しています。
※それをよりストレートにオマージュしたのがTVスペシャル版。
また、「2号ライダー」ポジションである仮面ライダーナイトのモチーフがコウモリになっているのもかなり意図的なものだと感じます。
本来、シリーズの定石から言えばコウモリは「2番目に登場する怪人」のモチーフです。初代仮面ライダーの第2話に登場したのが蝙蝠男だったからです。
過去の他作品でも初代をオマージュする意味で第2話(もしくは序盤)の怪人にコウモリがモチーフとして選ばれるパターンは多いのですが(アマゾン、スカイライダー、ブラック、クウガetc)、それを本作では仮面ライダーに当てています。さらにその異様さを際立てるかのように、第1話の敵モンスターはちゃっかりクモモチーフのディスパイダーでした。
一見ちゃんと「仮面ライダー」をやろうとしているように見せて、「コウモリモチーフの2号怪人」ではなく「コウモリモチーフの2号ライダー」を持ってくるのは非常に悪質な「逆さごと」だと思います(笑)
龍騎とは「仮面ライダー」をも呪った作品なのかもしれません。
「アドベント」という呪文
ここでまたアドベントカードの話に戻りますが、カードが英語表記である点や、カードの名前が日常的にそこまで聞き馴染みのない"Advent"及びそこからの派生である"〜vent"で統一されている点にも意味があると考えます。
前回も指摘したように、ミラーモンスターが「式神」に相当するとすればアドベントカードは「護符」または「呪符」ということになります。
一般的に、陰陽道における護符には口語的な日本語が一切使われません。祝詞や真言、漢文訓読など、必ず意味が完全にはわからない言葉が選ばれます。この世とは別の「異界」にアクセスするためです。
日本語や口語では「意味がわかってしまう」ため現実世界に引き戻されてしまい、儀式が成立しなくなります。簡単に言えば、意味がわからないことに意味があるのです。
アドベントカードに含まれる「ソードベント」、「シュートベント」、「ファイナルベント」etcは、どういうタイプの技が発動されるかは容易に想像がつくようにできていますが、「アドベント」からの派生の「ベント」の部分はあまり意味が判然としません。それに、英語ベースとはいえ、言葉としては完全に「造語」なので、英語にしても意味は通じません。
何より、劇中の登場人物たちが誰一人として「アドベント」の言葉の意味を考え、理解していたようには見えません。作劇としてもそういうカードの「裏設定」をほぼ深掘りしてくれなかったのは、「意味の理解」によって儀式が中断、もしくは無効化されることを避けるためだったと解釈することもできます。
※香川教授の研究室で発見されたミラーワールドに関する書類資料も一切詳説されないまま燃やされてしまいましたね。
仮面ライダーたちは、ただデッキを持って戦うだけで良い。それ以上専門的な知識も何もいらない。誰でも仮面ライダーになれる。そこに龍騎世界の真の怖さがあります。
呪術的な側面ばかりを取り上げていますが、それが機械的な「システム」としてほぼ自動化され、誰にでも使用可能な状態にあることこそが最も恐ろしいことなのです。
神崎士郎はアメリカで何を学んだのか?
となると、開発者である神崎士郎の経歴に俄然注目せざるを得なくなるわけですが、私は彼がアメリカで何を学んだのか?が非常に重要だと思っています。
劇中にも登場したアクレイ大学時代の恩師・ポトラッツ教授は彼の研究について、
「誰にも理解できないでしょう。理論物理学と言えないこともないが...。」
と語っています。
理論物理学とは、数式や物理モデルを用いて自然界の基本法則を解明・予言する物理学の一分野です。内容は全く異なるものですが、その「目的」に関しては陰陽道と非常に近しいものと感じます。
ですが、同じく神崎士郎の研究資料を手にしオルタナティブを開発した香川教授でさえ「全く意味がわからなかった」と言っています。
それは、前回の記事でも明らかにした通り、西洋の死生観と、東洋由来の陰陽道の死生観はまるきり異なったものであり、西洋発の自然科学から派生した理論物理学では、ミラーワールドの存在そのものが全くもって説明不可能だったことを意味しています。
ただし、「新たな命を生み出すための儀式体系」さえ完成すれば、あとはそれを「マテリアライズ」(物質化)するだけです。とりわけ西洋の科学技術は「大量生産」を得意としています。おそらく神崎士郎はこの二つをうまく掛け合わせることに成功したのだと思います。
陰陽道をベースにした霊的な呪術体系と科学技術の融合。そうして、儀式に関われる人間=仮面ライダーを容易に量産できる仕組みを完成させたのです。
それはまさしく往年のショッカーをも彷彿とさせます。
その象徴が、バイザーの電子音声です。本来は儀式に携わる人間が自身で発声しなければならない「アドベント!」というマントラの読み上げを機械に代替させることで、それを「儀式」とは気づかれずに「機械的な処理」だと使用者に誤認させる上、技の発動と同時に、本人の望む望まないに関わらず強制的に「儀礼的処理」が進められてしまうわけです。
龍騎世界における「改造人間」
「カードデッキ」は仮面ライダーの変身アイテムであると同時に、ただそれに触れるだけでミラーワールドを視認しモンスターの接近が検知できるようになります。部分的に「神崎優衣と同質の存在になる」ための神具の一つです。
また、カードデッキに触れるとミラーワールドが認識できるだけでなく、それを機にモンスターに狙われるようになってしまうということが「超全集」に記載されています。
デッキ所持を機に、こちら側から「見えるようになる」だけでなく、あっち側からも「見られてしまう」ようになるのです。デッキに触れること自体が「異界への越境行為」なのです。やっぱり理不尽で霊的な世界観ですね。
龍騎前年の「アギト」までの仮面ライダーは、基本的に全員身体に改造を施されているか特殊能力を身につけているか何らか肉体的に「半分人外」というのが基本でしたが、龍騎に登場する仮面ライダーは全員「身体的には普通の人間」です。
ただ、上述の通りカードデッキを持ったことで半分「神崎優衣化」している=半分「異界の住人と化している」という言い方もできます。
身体的には何の変化もないんですが、カードデッキを所持したその瞬間からライダーバトルという儀式に巻き込まれてしまい、身体ではなく「立場」や「役割」が人間社会から半分逸脱してしまっている、というのが彼らの実態です。その観点からすれば、やはり彼らも半分人間を辞めている。龍騎における仮面ライダーは、人間のまま異界に半分足を突っ込んだ存在なのです。
そしてさらに恐ろしいのが、身体的変化が発生しない分、「誰でも」「いつでも」「即座に」「容易に」仮面ライダーになれてしまうことです。劇中でも度々描かれたように、カードデッキを受け取る or 前任者から継承さえすれば、それだけで仮面ライダーになれてしまう。
だから私はこれを「ライダー『システム』」と呼称したい。厳密には龍騎世界に「ライダーシステム」という用語はありません(「剣」以後登場した用語です)。ですが、「仮面ライダーを量産する仕組み」という意味でこれほど完成度の高いシステムを龍騎以外に見たことがありません。
...ところで、これまでずっと「呪いの儀式」と呼んできたライダーバトルですが、一体誰を呪った儀式だったのでしょうか?
続く③では、それら残された謎に着手していきます。
- 似ている二人-神崎士郎と秋山蓮-
- 「呪いの儀式」において「呪われた」のは誰か?
- 神崎優衣は本当に巫女なのか?
- 神崎優衣はなぜ二十歳で消滅するのか?
- 小川恵里はなぜ意識を失ったのか?
- サバイブのカードとは何だったのか?
- オルタナティブには勝ち残る権利はあったのか?
- 正しい神事が行われればどうなっていたのか?
- 城戸真司の存在をどう解釈するか?
...etc
(了)
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