この間、アメトーーク!で久しぶりに仮面ライダー芸人をやっていたので見たんですけど、途中ライダーマンのVが流れた瞬間、「え、口が出てる...」というリアクションがありました。
というわけで今回は、「ライダーマンってなんで口が出てるの?」を考えます。
結論を先に言えば、「ライダーマンとは仮面ライダーになろうとしている仮面ライダーっぽい人間」です。そんな半端モノの証として、口が出てるんです。
えっ…⁈
S.H.Figuarts(真骨彫製法) 仮面ライダーV3 ライダーマン 約145mm ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア S.H.フィギュアーツ
とにかく彼の顔を見た人って最初軽く引きますよね。
「…えっ…⁈」
その後に色々な感想が続きます。「顔出てるけどいいの?」とか「予算なかったの?」とか。本当好き放題言われます(笑)
中でも「顔出てるけどいいの?」という感想はこれ結構面白くて、広く一般の方々って「仮面ライダーのマスクは肉体が変化したもの」って解釈しているってことだと思うんです。
「それなのに人間の顔出てるけどいいの?」ということですよね。
ただ、そもそも仮面ライダーの顔が「仮面なのか肉体変化なのか」については解釈の幅があっていいところだと思うんで、個人的にはどっちでもいいとこなんですけど、とりあえずその観点からすればライダーマンって、着ぐるみのチャックが半分開いちゃってるようなもんに見えてしまうのだろうと思います。
で、ついでに「予算不足か?」とまで言われてしまう。いや、昭和をバカにしすぎよ(笑)
なぜ口が出てるの?
歴代の仮面ライダーたちの中で、なぜライダーマンだけ口が出ているのか?を考える上でまずこれを前提に話をしないといけません。
そもそも、ライダーマンが歴代の仮面ライダーにナンバリングされていること自体がイレギュラー。
なにせ、そもそも「ライダーマン」という番組もありませんし、彼はあくまでも「仮面ライダーV3」43話〜51話に登場した脇役キャラです。それに、最終回手前で戦死します。
そんな彼が「仮面ライダー4号」になったことは、とにかく仮面ライダーの歴史においてかなりの異常事態であり、さらにはそれが平成以降の仮面ライダーの多様性につながるわけですが、まぁまずはライダーマンの口元出てる問題を考えていきましょう。
まずはライダーマンそのものの設定に注目してみます。
- 元は悪の組織デストロンの優秀な幹部候補の科学者
- 自分の発明は平和利用されていると信じて組織に従ってきた
- 組織内の派閥争いで大幹部ヨロイ元帥に粛清されかける
- 硫酸のプールで右腕だけを溶かされ瀕死に
- 失った右腕にアタッチメントをつける緊急手術を施されライダーマンに
- 右腕以外は普通の人間
- ヨロイ元帥への復讐を誓って、デストロンが忌み嫌う仮面ライダーを模したスーツを身につけて戦い始める
- 利害が一致するときはライダーV3と共闘するが、それ以外では一切手を組もうとしなかった(ニヒル)
もうどこから掘り下げたらいいか追いつかないくらい面白すぎる設定に満ちていてたまらないんですけど、まず見逃せないのは、体の一部(右腕)だけが改造人間である、ということです。そしてそれをビジュアル的にも象徴するように、口元だけ人間の顔が露出しているんです。ライダーマンのマスクが半分だけになっているのは、「半端なサイボーグ」であることの象徴とも考えられます。
というかぶっちゃけ義手をつけているだけの人間ですからサイボーグとも言えませんよね。彼はほぼ「普通の人間」です。
公式が生んだパチモン
あともうひとつ、特に注目したいのが
ヨロイ元帥への復讐を誓って、デストロンが忌み嫌う仮面ライダーを模したスーツを身につけて戦い始める
という点です。簡単に言えば、ライダーマンは「仮面ライダーのまがいもの」です。ただし「ニセライダー」ではありません。
ニセライダー(ショッカーライダー)には、完璧に仮面ライダーに偽装して悪事を働き、ライダー陣営を陽動する目的がありますが、ライダーマンは「嫌われるため」だけにライダーの名を借りてるんですよね。ライダーっぽいだけの「まがいもの」であり、要は「公式が生んだパチモン」です。
そのことを証明しているのが、「ライダーマン」というネーミングです。ライダーマンだけが、「仮面ライダー◯◯」という法則からも「◯◯ライダー」という法則からも外れたいわば「規格外」の存在です。
「ライダーマン」の「ライダー」は、バイク乗りとしてのライダーではなく、もちろん「仮面ライダー」を指す略称です。その名を借りている男が「ライダーマン」なわけです。このネーミングにも、「彼は正式な仮面ライダーではありませんよ」という区別意識のようなものを感じ取ることができます。
と同時に、ライダーマンは明確に「仮面ライダー」そのものをモチーフにしたキャラクターであることがわかります。バッタやトンボといった実在の生物をモチーフにしてきた仮面ライダーの歴史において初めて「仮面ライダーそのものをモチーフにしたライダー」が登場することになるのです。
復讐の鬼
この「半端もんのパチモン」というライダーマンの出自は、彼自身の信条ともぴったり重なります。
彼に冤罪を着せて処刑しようとしたヨロイ元帥のことは強く憎んでいますが、彼の育ての親でもあるデストロン首領(大ボス)には大変な恩義を感じています。V3が必殺キックを放った際には、思わず盾になってかばってしまうほど。
一見、悪と戦う正義の味方に見えて、実はヨロイ元帥個人を憎んでいるだけ。まだ魂はデストロンに染まったままなんです。これが実に奥深く複雑で面白いキャラクター。
ですから彼は「人類の自由のため」とか「人類の味方」なんてことは一切言いません。ただ「復讐の鬼」を名乗ってデストロンと戦います。ぶっちゃけたことを言えば、個人的な復讐を掲げているだけで誇りも信念もないと言えます。まさしく「まがいもの」です。
V3版ショッカーライダー
で、問題は、なんでそんな「まがいもの」が「仮面ライダーV3」の終盤に突然登場したのか?ということです。
これは私個人の見方ですが、ライダーマン登場前の「仮面ライダーV3」という作品は、結構苦戦と迷走を続けていました。
過去の記事でもこのことについて扱っています。
歴代シリーズの中でもトップの人気を誇る「V3」ですが、前半の初代幹部ドクトルG編以降はわりと視聴率的に苦戦が続きます。特に、最低でも1クール=約3ヶ月は番組の顔になることの多かった「悪の大幹部」を毎月交代させるという実験的挑戦がうまく行ったかどうかは微妙なところで(作品の良し悪しとは別に)、しかしあらゆる手を尽くしてシリーズ全体のマンネリ化と必死に戦っていた印象があります。
とりわけライダーマン編突入直前の39話〜42話では、初代仮面ライダーの過去の印象的なエピソードをそのままトレースするなど、牙一族編やツバサ一族編含め、旧一号編の初期に顕著だった怪奇性の復権と、人間的・ドラマ的な魅力を取り戻そうとしていたことが伺えます。
そんな「V3」という作品が終盤を迎えるにあたって、同じく前作「仮面ライダー」の終盤を大いに盛り上げた「ショッカーライダー編」に目をつけないはずがありません。
しかし、あくまでも作品の最大の敵はシリーズの「マンネリ化」であり、にせライダー編のエピソードをそのまんま丸ごとトレースするはずがありません。結果、ショッカーライダー編を下敷きにしつつ、大幅なアレンジを加えた結果誕生したのが、「ライダーマン編」だったのではないでしょうか?
その名残でしょうか?ライダーマンは歴代で唯一、にせライダーの象徴とも言える、黄色いマフラーを巻いています。
弱いことに意味がある
中でも最大のアレンジポイントは、その「にせライダー」が最終的にV3の味方になる、という点でした。
但しこれは「アレンジポイント」であると同時に「オマージュ」でもありました。萬画版「仮面ライダー」では、12人のショッカーライダーの中の1人が本郷猛によって正義に目覚め、新しい仮面ライダーを襲名することになるからです(一文字隼人)。
とは言え、おそらく当初はライダーマンを「仮面ライダー」にまで昇格するつもりはなかったと思われます。その証拠が、露出した口元です。
口元が露出しているからこそ、私たちはほぼ反射的なまでの速度で彼を「弱い」と理解することができます。
V3の相棒に求められる最大の条件は、「V3より弱いこと」でした。なぜならあくまでも本作の主役はV3だからです。当たり前の話ですよね。ライダーマンの最大の役割は、主役であるV3を立てることにあります。彼自身が仮面ライダーを名乗ることは、間違いなく想定されていませんでした。デザイン時のラフスケッチにも「4号ライダー」のような記述は一切見当たりません。あくまでも彼はV3のサポーターとしての役割しか期待されていなかったようです。
ライダーマンの口が出ている理由、それはズバリ「弱く見せるため」でもあったのです。
平山・阿部の食い違い
非常に興味深いのが、当時の東映プロデューサー・平山亨氏と、テレビ局プロデューサー・阿部征司氏の二人のライダーマンに関する証言の食い違いです。
平山亨氏は、「仮面ライダーV3大全」掲載のインタビューで「ライダーマンについては演じた山口くんには悪いことをした。『V3』の後に彼に主役を張ってもらうこともできたはず」という趣旨の発言を残しています。
しかし、「仮面ライダーX アマゾン ストロンガー大全」では阿部征司氏は真逆のことを語っています。「ライダーマンが主役として成り立つかというとそうではないと思う。次の番組へのつなぎとしては十分機能した」という趣旨のことを語っています。
また、死んだはずのライダーマンが劇場版「仮面ライダーX」でしれっと「タヒチから帰ってきた!」と言って再登場した件について平山氏は「私はライダーマンが好きなものだから、いけないいけないと思いつつやっちゃった」と語っています。
本人の言うとおり平山氏はライダーマンを相当気に入っていたのだと思います。ですが、実際の製作現場の感覚はそれとは程遠く、阿部氏が語っていた通りの感じだったのだと思います。何せ最初から「まがいもの」としてキャラクターが造形されていますから。
ですから平山氏の語る、「V3の後番組をライダーマンにすることもできた」という発言は、あくまでも彼個人の感情的なものであって、実際には非現実的なものであったのだと思います。
その後のライダーマン
平山氏のライダーマンへの愛が、彼を正式な「仮面ライダー」に加え、他のライダーたち同様彼を「不死身の戦士」として死地からも蘇らせてしまいました。
それが良いことだったのか悪いことだったのかはわかりません。ただ、ライダーマンを先例として、彼のように肉体的に不完全な改造人間でも「仮面ライダー」を襲名できるようになりました。ライダーマンによって「仮面ライダー」襲名のハードルはグッと下げられると同時に、「仮面ライダーの定義」は非常に抽象的なものに薄められたと思います。
仮面ライダーは、「人間と怪人の狭間にある者」として、その曖昧さに魅力があったはずのキャラクターですが、「V3」までにその曖昧だった輪郭がくっきりとしたイメージ像として固まってしまいました。仮面ライダーは、誰もが知る国民的ヒーローにまで成長したのは良かったのですが、「仮面ライダーらしさ」=「強くてかっこいい正義のヒーロー」といったシンプルなイメージだけが固着してしまったのだと思います。
「V3」当時のスタッフたちはその固着したイメージを打破して、当初根幹にあった「仮面ライダーを名乗る者が抱える悲哀と宿命」を再固定したかったのではないでしょうか?
その結果登場したのが、「人間と仮面ライダーの狭間にある者」=ライダーマンだったのでしょう。そして、仮面ライダーになりきれなかった男が仮面ライダーになるまでの物語は、それこそ主役のV3を食う勢いで面白かった。何せ、「人間と怪人の狭間にある者」より、「人間と仮面ライダーの狭間にある者」、言い換えれば「正義の味方になりきれない人間」の方がめっちゃリアルで、泥臭くて人間的だからです。
彼のように捻れた精神性を抱えたまま、果たしきれなかった正義に取り憑かれた男、という言わば「ライダーマン性」を持ったキャラクターは平成ライダーシリーズにかなりの頻度で登場します。
「アギト」の木野薫や「ブレイド」の桐生豪なんかは「失った右腕」というかなり直接的な形でオマージュされていますし、他にもその断片を見出すことができるキャラクターは非常に多く、多種多様な正義や主義主張が乱立する現代において、50年以上前のライダーマン的なアプローチは実に現代的であったということだと思います。
「失敗作」と呼ばれた草加雅人もまた、仮面ライダーになりきれない「半端者」というライダーマン性を持ったキャラクターと言えます。
平成ライダーが大人っぽくて話が小難しい感じだったり、ライダー同士でよく争ったり口喧嘩している場面が多いのは、大体ライダーマン的なキャラのせいであることが多いです(笑)
まとめ
ここまでで、ライダーマンはあくまでもV3を引き立てるサポート役であり、仮面ライダーより下位の存在であることをわかりやすく示すため、口元が露出した弱そうなデザインのマスクになったことを明らかにしました。やはり、ライダーマンが仮面ライダー第四号を名乗るような流れは当初は全く想定されていなかったと思われます。
また、ライダーマンという「人間と仮面ライダーの狭間にある者」の登場によって、それまで絶対的であった仮面ライダーV3の存在が相対化され、その強さと魅力がより引き立つことになったのは間違いありません。結果、単なる「かっこいい正義の味方」にまで単純化されていた「仮面ライダー」を再定義し直すことにも成功しました。
しかし同時に、人類のために散ったライダーマンを新たな「仮面ライダー第四号」にしてしまったことで、再度定義し直したはずの「仮面ライダーの資格」は拡大され、見方によってはさらに曖昧なものになりました。
ライダーマンの存在が、仮面ライダーの世界に奥行きをもたらし、シリーズをより複雑なものへと変容させたのです。
とは言え、主役にはなれないのもライダーマンの宿命。王道を往く主人公キャラと何度もぶつかり、物語をかき回し、自らは華々しく散りながら主人公をも輝かせる。番組の看板にはなれずとも、ファンの心に強く残る存在、それがライダーマンなのです。
(了)








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