ずっと疑問だったんですけど、ウルトラ兄弟って「タロウ」の頃はあんなしょっちゅう地球に来てたのになんで「レオ」の頃になると全然来なくなっちゃったんでしょうか?
どうやら「行きたくても行けなかった」ようです。
超危険地帯・地球
レオがM78星雲出身じゃないから、という理由は、ウルトラ兄弟が地球に来なくなった理由にはなりません。だって当時の地球の防衛を担当していたのはセブンだったからです。仮に赤の他人であるレオを助ける義理がなかったとしても、同じ兄弟であるセブンは助けに来るべきでしょう。それに、そもそもウルトラ兄弟は皆地球を深く愛していたはずです。「自分の管轄外だから」という理由だけで疎遠になるとも思えません。
なお、セブンが変身不能になっている事実はウルトラ兄弟たちも掴んでいたようで、「レオ」第34話にて、帰ってきたウルトラマンが怪獣ボールを持って地球を訪れています。
しかしこれ、ちょっと遅すぎやしないでしょうか?第1話でセブンの脚がバッキバキに折られてから半年近く、誰も地球の救援には来てくれませんでした。
どうやら彼らは、地球に来なかったのではなく、行きたくても行けなかったようです。そのことは、レオ34話を見ればなんとなく察しがつくところです。
地球に向かう帰ってきたウルトラマンを早速アシュランが襲います。あの帰ってきたウルトラマンでも普通に勝てないほどの強豪が、ウルトラの星と地球の間を普通にうろついているという事実。これよく考えると恐ろしすぎます。
地球での郷秀樹の言動の全てから断定することは困難ですが、郷秀樹は、他のウルトラ兄弟たちの反対を押し切ってセブンの元に向かったのではないでしょうか?以前から地球は強豪の怪獣や宇宙人が集まる危険地帯ではありましたが、レオ期になると、もはや近づくことすら困難で、地球周辺は常にアシュランレベルの強豪怪獣がうろつく超危険地帯になってしまっていたのかもしれません。
だからこそ郷秀樹は、「カプセル怪獣」ではなく圧倒的な戦闘力を持つ「怪獣ボール」を届けようとしたのでしょう。
しかし、1年地球での戦闘経験を積んだ大ベテランのウルトラ兄弟でも、1人では地球に無事に到着することすらままならないほどの危険地帯を飛ぶ任務です。おそらくゾフィーも父も許可を出せなかったのではないでしょうか?
暗黒宇宙の衝突
さて、なぜここまで地球周辺の治安が悪くなってしまったのか?これは、前回記事でも扱った「タロウ誕生」と「ウルトラの星の地球化」が関わっていると考えられます。
M78星雲が「光の国」とも称されるように、星が生まれる美しく光り輝く空間のそばには必ず「影」が生まれます。それが、「暗黒星雲」です。
実際の宇宙科学の定義においても「暗黒星雲」とは光り輝く恒星を覆い隠すほどの塵とガスの集まりとされ、恒星が輝けば輝くほど影の暗さは深みを増すものとされています。
この言葉にピンと来る人は多いと思います。ババルウ星人の二つ名にもなっている「暗黒宇宙」(の支配者)という言葉です。
前回の記事でも指摘した通り、東光太郎とタロウの命が融合したことで、ウルトラの星は「地球化」し、地球は「ウルトラ化」を続け、似た二つの星を包む宇宙は収縮を開始したものと思われます。マルチバースの融合現象です。
結果、地球とウルトラの星は「タロウ」の頃から接近し始めていたはずです。そしてこれを回避するためのコントロール装置こそが、ウルトラキーだったのかもしれません。だからウルトラキーを抜かれた途端、ウルトラの星は地球に向かって一直線に飛んできたものと思われます。
星の軌道のコントロール以上に、マルチバースの融合現象という宇宙法則にも抗う力を持った魔道具がウルトラキーだったとすれば、そりゃあ星一つくらい簡単に吹き飛ばせそうです。
しかし一方で、暗黒宇宙にはそんな装置は無かったと思われます。だから、ウルトラの星よりも先に暗黒星雲の方が地球に衝突していた可能性もあります。当時の地球はすでに暗黒宇宙に包まれていたのです。
そしてその最初の尖兵こそがマグマ星人であり、双子怪獣が東京を襲ってから約2ヶ月間、日本の空は分厚い雲に覆われたまま=闇に包まれたままでした。
黒いウルトラマンたち
レオ期が始まる前後には、光り輝くウルトラの星の「対の存在」である「暗黒宇宙」もまた、ウルトラの星と共にマルチバースの収縮に巻き込まれたと見て良いでしょう。結果、「黒いウルトラマン」が地球近辺でも見られ始めます。
バルキー星人、マグマ星人らがそれに相当します。この二体の特徴は、自らも戦線に身を置くものの、怪獣を生物兵器として使役している点です。これは、カプセル怪獣を使役するセブンと酷似しています。
そして「使役される怪獣」によってセブンが変身不能にされる展開は実に皮肉。
そしてその頂点に君臨するのが「暗黒宇宙の支配者」とも呼ばれ、あのゾフィーも警戒を続けていたババルウ星人です。
当初レオには、西遊記になぞらえて銀角=マグマ星人、金角=ババルウ星人の宿敵が登場予定だったという噂が存在しています。
加えて見逃せないのが、暗黒宇宙の侵略者たちの多くがウルトラ戦士の正体を熟知していることです。レオの34話で、人間の姿であるモロボシダン、郷秀樹、おおとりゲンの3人を見たアシュランは恐れをなして撤退しています。宇宙を飛んでいたただの野良怪獣・アシュランですら彼らの正体を知っていた事実には注目すべきです。
ウルトラ戦士の多くが人間との融合または擬態によって「潜入」することで地球防衛の任に就いているという大前提を当然のように見破っていたことから、彼らの仲間の多くもまた「潜入」していると見て間違いありません。
事実、レオ期の宇宙人の多くは人間大になって暗躍していました。ツルク星人、カーリー星人といった単なる殺し目的で東京を徘徊していた宇宙人たちも暗黒宇宙の住人であり、中には諜報員として彼らの上位存在に情報を提供していた可能性もありますね。
いずれにせよ、ウルトラ戦士の多くが暗黒宇宙の邪悪な侵略者の存在を熟知していたように、暗黒宇宙の存在もまた、ウルトラ戦士のことを実に詳しく調べ抜いていたようです。だからこそババルウは「にせアストラ作戦」で見事に彼らを欺くことができたのでしょう。
ウルトラマンの星人化
ババルウ星人がウルトラの星からウルトラキーを盗み出した第39話において、タロウ以来久しぶりにウルトラの星が再び描かれました。
しかし、再登場したウルトラの星はなんとなく暗く、地球に向かって飛来するウルトラの星もまた、本当にあのウルトラの星か?と思われるほどどす黒く不気味な色をしていました。
タロウの頃にはあんなにキラキラと光り輝いていたウルトラの星が、なぜあんなに暗い星になってしまったのでしょうか?
それはおそらく、東光太郎がウルトラバッジを捨てたからだと私は考えています。
もちろん、ここまでの話の流れからすれば、暗黒星雲接近の影響もあるとは思います。が、そもそも「ウルトラの星」がキラキラとした「ウルトラの国」になったきっかけは、東光太郎の歴史とウルトラマンの歴史が融合したことにあり、ウルトラバッジの放棄によって「ウルトラの星の地球化現象」も止まったと見て良いでしょう。
しかし、東光太郎の体内にウルトラの命があることには変わりありません。融合が解除されたわけではありませんから、「ウルトラマンの人間化」も解除されることはありません。
結果、「ウルトラマンの『星人』化」現象だけが残りました。
「ウルトラマンの『星人』化」とは、文字通りウルトラマンが特定の惑星に住む宇宙人になったということです。
元々、ウルトラマンたちはあくまで「ウルトラマン」と呼称され、他の星からの侵略者たち=「◯◯星人」と呼称される者たちとは明確な区別がなされていました。実際、「M78星雲・光の国」とは「〜星」のような特定の惑星ではなく、星の生まれる場所を指す言葉であり、ウルトラマンたちは星雲が生み出した星のかけらの擬人化でした。
ですが、タロウの誕生とウルトラの星の地球化を経て、ウルトラマンは「ウルトラの星の『ウルトラ星人』」になったのです。
後の「80」にて、妄想ウルトラセブンが現れた際、ユリアンがこう喝破しています。
「あれはウルトラ星人じゃない!」
「80」の頃には彼らも「ウルトラ星人」を自称するまでになっていました。
ここまでを振り返ると、やはりレオがいた頃の地球はかなり苛烈な戦場だったようですね。そして遂にはウルトラ戦士たちの宿敵・暗黒宇宙の支配者ババルウ星人が本格的な破壊活動に乗り出しましたが、レオ兄弟によってそれも阻止され、必殺のレオキックでトドメを刺されました。
そう考えると、レオの功績は実に大きなものに見えますね。あの暗黒宇宙の支配者を退けたのですから、ウルトラ兄弟入りもある意味当然です。
特に、タロウが消え、セブンをも失い、ウルトラ兄弟は実質ほぼ解散状態の中、暗黒宇宙に覆われた地球を守り抜いたレオの戦闘力は私たちが思っている以上にやはり凄まじいのだと思います。そりゃあ、キングも一目置いてくれるわけだ。
(了)




