ADAMOMANのこだわりブログ

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駄作と呼ばれた傑作「仮面ライダー剣(ブレイド)」③「仮面ライダー」復権〜會川昇の挑戦〜

◆平成ライダーにおける「仮面ライダー」

謂「ブレイドらしさ」なるものがあるとすれば、平成ライダーでは既に薄まりつつあった「仮面ライダーの資格」を追求した描写の数々が挙げられる。

具体的なものは後ほど紹介するとして、そもそも、前作ファイズまでの平成ライダーシリーズでは、意図的に「仮面ライダー」という言葉の使用は避けられてきた

リアリズム路線を打ち出したクウガの中では全く使用されず、番組の看板として掲げられるのみ。 

アギトも同様、劇中ではもっぱら「アギト」と呼ばれるだけ。続く龍騎では、ハッキリと仮面ライダーという呼称が劇中にも登場したが、「己の願いを叶えるため、殺し合うために神崎史郎によって集められた13人」を指す非常に限定的な意味合いを持つ言葉であった。

ファイズでは再び番組名のみの看板へと後退。ブレイドにて再び劇中での登場を果たした訳である。

しかし、ブレイド劇中におけるその呼称起源には謎が多い。開発したBOARD自らが「ライダーシステム」と自称している(本来であればジョーカーシステムと呼ぶのがしっくりきそうなものだが)一方、一般人キャラクターの多くが(虎太郎、仁、令ら)「都市伝説としての仮面ライダー」を認識しており、ここは後続作ではあるがWとよく似た背景が窺える。

 

◆「仮面ライダー」にこだわった理由

BOARDの呼称か都市伝説かどちらが先かは不明だが、過去作と違い、人々の期待と希望の担い手として「仮面ライダー」と呼称されている点は、実は平成ライダーの中では初めてのことだった。

その背景には、実は前作との差別化以上に、それまで曖昧にされてしまった「仮面ライダー」の持つ意味を再固定しようという意識もあったのではないかと思う。要するに、人殺しでも仮面ライダーを名乗れる=何でもありになってしまった仮面ライダーという名前の持つ本来の重みをもう一度取り戻したいという意図があったと思うのだ。

仮面ライダー1971 [カラー完全版] 1 本郷ライダー編

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それは、常に革新と進化を繰り返してきた平成ライダーにおいて、ブレイドでは一旦刷新するのは止めて、「仮面ライダー」が本来持っていた強さや正しさに光を当てようという試みだった。

そしてそこには、所謂「昭和ライダー」を愛し育ってきた世代の危機感もあったのではないかと思うのだ。

誤解されては困るのだが、決してそれまでの平成ライダーを非難しているわけではない。龍騎もファイズも私は大好きだ。しかし、ブレイドのような王道回帰がかえって「変化球」に感じられてしまうほど、それまでの平成ライダーは一癖も二癖もある変わり種尽くしだったのだ。

◆會川昇の挑戦

んな変化球を投げ込むには、ブレイドという作品は最適だった。

前回紹介した通り、ブレイドの特徴と言えば、BOARDという大組織に所属し、怪物の打倒よりも人命救助にこそ重きを置く=職業ライダーという設定、大きな複眼の昭和っぽいデザインにある。

 

王道のヒーロー路線を突き進む下準備は最初から整っていたと言える。

しかし、平成ライダーの洗礼とも言える謎引っ張りやライダーバトルといった通過儀礼(まわり道)を余儀なくされたブレイドは、とりわけ2クール目以降、ようやく独自の輝きを放ち始める。

◆初期設定の再固定

それは、後半のメインライター會川昇担当エピソードにおいて顕著に見られる。

まずは、それまで劇中で説明の機会が少なかった設定の再確認だ。

印象的だったのは23話、橘が睦月にラウズカードの使い方をレクチャーするシーンだろう。

第23話

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エースアンデッドの役割と、リモートという特殊カードの危険性、そして上級アンデッドの存在(〜強化フォームへの伏線)など、非常にわかりやすい説明がなされた。それはまるで、興味本位で途中参入した視聴者を本気で引き込もうという熱意の現れのようにも感じる。

更には剣崎の強さと、そこには特殊な要因がある可能性についても言及。最終回に向けた重要な伏線ともとれる。

そして相川始=カリスが実はカリスではなかったことも、ドラゴンフライへの変身という衝撃的な映像と共に明示してくれた。カリスとの決着にこだわるイーグルアンデッドには、それまで行動原理が不明瞭だったアンデッドの設定を再補填する意味合いもあっただろう。アンデッドは、最後の1人になるまで戦わなければならないのだ。

◆仮面ライダーの資格

しかしそれ以上に注目したいのが、「仮面ライダーの資格」にこだわったセリフが明確に繰り返し登場し始めることだ。

勿論、カテゴリーエースとの融合係数の高さという意味ではない。ちなみにそれは劇中では「運命」と呼ばれ、最もそれに翻弄されたのが睦月であろう。しかしブレイドライダーズは、それら与えられた条件に甘んじるのではなく、そこに自らの意思や使命を付与し、己の生き方を貫くために抗い、戦う。それは常に利他的な人類愛に満ちており、彼らはその姿にこそ「仮面ライダー」を見出しているのだ。

実はそんな(ややもすれば青臭い)仮面ライダーらしさが最初に描かれたのは、13話(今井脚本回)の「名乗らない剣崎のシーン」辺りではないかと思っている。

そこへのアンサーとして、同じく名乗らない睦月と、そこに誇りを見出し、仮面ライダーレンゲルを名乗る(=仮面ライダー襲名!)名シーンが會川脚本回にて描かれた。

S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーレンゲル

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変身シーンにて同話が終了した(必殺技は次回に持ち越し)ことから見ても、この変身シーン及び襲名シーンそのものをハイライトにしていることは間違いない。

第21話

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※余談だがこの時代に「仮面ライダーレンゲルだ!」なんて自ら堂々と名乗るヒーローは皆無だった。今でこそ名乗りが見せ場となる作品も多いが、そんなのダサいし非現実的だ、といった空気が当時の平成ライダーには漂っていた。

更には、栗原晋殺害の嫌疑をかけられながら言い訳一つせず、ただひたすらに、衝動的に人を守るカリスの姿に、「仮面ライダーか…」とつぶやきながらネガを感光させる神丘。

この2つのシーンでは、場面や文脈は全く違えど「仮面ライダー」という語が持つ特別な響きを象徴的なものとして描いている。

第32話

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32話の剣崎を励ます虎太郎と彼を見送る栞の場面も素晴らしい。

バトルの激化に伴い役割を失いがちな虎太郎ポジションだが、しっかりと主人公をサポート、剣崎は迷いを振り切って始の元へ向かう。

そんな彼の真っ直ぐな姿に、「たとえ相手が何でも、誰かを助けるために走る。それが仮面ライダーよね」と1人つぶやく栞。

ここにきてようやく、おそらくブレイドが本来志向していたであろう、人助けを生業とする男たちの戦いを描いた王道ヒーロー作品、「仮面ライダー」ブレイドがハッキリとその姿を現し始めたのである。

そしてそれは、剣崎のキング戦や、ジョーカーの制御、ひいては最終回に向けた大きな盛り上がりを生むこととなる。

 

www.adamokodawari.com

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