ADAMOMANのこだわりブログ

特撮ヒーロー、アメコミヒーローを中心にこだわりを語るストライクゾーンの狭すぎるブログ

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駄作と呼ばれた傑作「仮面ライダー剣(ブレイド)」①自ら破壊しまくった設定と副産物たるオンドゥル語

平成ライダーの中でどの作品が一番好きか?と問われると

「クウガかなあ?いや、でも555も好きだぞ、響鬼もいいし…」と迷いがちだが、

「一番繰り返し見た作品は?」と問われれば即答できる。

仮面ライダー剣(ブレイド)だ。

このシリーズでは、「仮面ライダー剣」の魅力を余すところなく解き明かしてゆきたい。

そして第1回目では早速まさかのダメ出しから開始する。

①自ら破壊しまくった設定

「剣」は1話からとにかく展開が早い。設定の説明もそこそこに、そのほとんどを自ら殺す。そんなとち狂った番組だ。

◆BOARD壊滅→死に設定「職業ライダー」

まず、ブレイドとギャレンの所属する「人類基盤史研究所」(通称BOARD)はなんと1話で、たった1匹のアンデッドの襲撃により全滅、崩壊する。

第1話

第1話

  • 発売日: 2015/08/27
  • メディア: Prime Video
 

これによって「職業ライダー」という設定がほぼ死んでしまった。

事前に公開されていた情報でも、本作の売りの1つに「職業としての仮面ライダー」というコンセプトがあり、過去作との差別化という意味でも、劇中でどんな描写がなされるのか非常に楽しみにしていた視聴者は多い(今度のライダーは仕事として戦うらしいぞ!)。

しかし「BOARD」壊滅後、虎太郎の家に間借りすることとなった剣崎と広瀬らは、そこを拠点に戦線へ出撃する訳で、それ自体は、一条からの電話を受けてポレポレを飛び出す五代雄介(クウガ)や、敵の気配を察知して駆け出す翔一くんや真司くん(アギト、龍騎)、よく敵と出くわすたっくん(555)らのそれと、大差ないものであった。

仕事っぽさを感じられる描写としては、剣崎くんのセリフ「これが俺の仕事だ!」云々の場面が何度か(つまりセリフにしないと忘れられる設定)と、45話という終盤にしてようやく登場する給与振り込み停止シーン程度のものだった。

要するに、「職業ライダー」として始まった「剣」だが、結局いつも通りのプライベートヒーロースタイルに速攻で落ち着いてしまったという訳だ。

「職業としての仮面ライダー」と言えば、シフト表まで劇中に登場した「響鬼」がまさにしっくり来る。「職業ライダー」の異名を「剣」は「響鬼」に明け渡せ。

 

◆頼りにならない先輩たちと情緒不安定な主人公

上司の存在でも描かれればまだなんか「職業」っぽさが出るものだが、直属の上司、橘さん(ギャレン)は1話で裏切るし、烏丸所長は燃えるし、広瀬さんも父親がどうこうで病んでるし、とにかく頼れる人間が1人もいない状況へと、主人公剣崎一真は追い込まれてしまう。

結果、当然と言えば当然だろうが、序盤の剣崎は常にキレている。とにかくいつも何かにキレている。主人公なのに情緒不安定で何にでも怒鳴り散らすヤンキー状態。

が故にか、傍観者ポジションの虎太郎が最も達観しているという何とも言えない状況に。

そこに更に輪をかけて困ったのが、BOARDの方々みんなすぐキレること。

帰ってきたと思った橘さんも、広瀬さんもすぐキレる。だから集まったら常に喧嘩状態。肝心の烏丸所長も「謝らない」し、誰も収集つけられない。

更に更に輪をかけて困ったのが、剣崎の演技力。当時見ていた誰もが1話にしてそのヤバさに気づいていた。この1年、大丈夫なのだろうか?と。

 

◆アンデッドの意味不明な行動

とりわけストーリーの根幹をなすアンデッドについてだが、彼らはなぜか人間を襲いまくる。設定を考えれば、アンデッド同士で日夜戦っていなければならないはずだが、殺してもなんの得にもならないはずの人間を殺しにノコノコ出てくる。それはまさに夜な夜な東京B地区を走り回る「ウルトラマンレオ」の通り魔星人。わざわざ幼稚園バスに乗り込む輩まで現れたほどだ。

「そんなアンデッドが許せない!人類を守る!」と息巻いて立ち上がる仮面ライダーたちは頼もしいが、敵の行動原理がとことん不可解なため、どうも入り込みづらい。ドラゴンフライのように人質をとって始を誘き出すならまだ理解できるが、無差別に人を殺すのは正直意味不明(1万年前の覇者、ヒューマンアンデッドの末裔への恨みという解釈もできなくはないが、そんなことより他のアンデッドと戦えよという)。

アンデッドついでに、ラウズカードのデザインも解せん。1万年前の戦いを通じて誕生したはずのラウズカードの表記がなぜ「英語」なのか。更にラウザーの読み取り音声はなぜ「日本人発音の英語」なのか。

ちょっと「設定、設定」うるさすぎると思われるかもしれないが、その前年の「555」までは、その辺の世界観の作り込み方がなかなか丁寧なものだった分、何ともいい加減に見えてしまうのだ。

アドベントカードが英語表記なのは、神崎史郎が自ら開発したからだし、555ギアの音声はスマートブレイン製だけあって綺麗な英語発音。

その点、ラウズカードのデザインやラウザーの音声から、嘘臭さが漂ってきてしまうのだ。BOARD製のライダーならまだしも、天然オリジナルラウザーのカリスラウザーまでがそうなら、もうフォローのしようがない。

 

◆集めても、なぜか使わないラウズカード

とにかくモヤモヤしたのはこれだ。これも本来なら「剣」のウリとなるポイントだったはずで、倒した敵の力がどんどん自分のモノになるという、「龍騎」では具体的に描ききれなかった発展的要素となるはずだったのに、劇中でライダーが全然カードを(効果的に)使わない。

最終話までに一応全カードが出揃った訳だが、劇中で個別に発動されなかったカードはなんと53枚中15枚近くある。「フォーゼ」なんか40種類もあるスイッチを毎回律儀にストーリーに絡めて使ってくれていたのだが、ブレイドライダーズは全然使いたがらない。

例えば、劇中最初にギャレンに封印されたバットアンデッドの「SCOPE」のカード。

仮面ライダーブレイド 醒銃DX ギャレンラウザー

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  • 発売日: 2004/03/27
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

1話冒頭という印象的な登場をしたカードが、まさかの劇中未使用。ブレイドの「METAL」に至っては偽ブレイドやディケイドが使用しなんと本人未使用。カリスの「SHUFFLE」という非常に面白そうなカードも使いかけて未使用。「TIME」なんてチート感MAXのカードも未使用。

実はプロデューサー自身が「CGを少なめにしてあえて生身の戦いを見せたい」と志向しており、「剣」の世界ではなんと「カードを使いまくるやつはダサい」という空気すら漂っていた。(某「最強(笑)」のライダー参照)。

S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーレンゲル

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また、ブレイドとレンゲルの扇型カードトレイの展開は派手な反面、バトルのテンポを削ぐという致命的な弱点も抱えており、使いたがらないという以上に、ここぞという見せ場=必殺技発動時しかカードが使われないという展開がほとんどで、これまた過去作との差別化は不十分であったと思う。

「龍騎」振りのカードバトルが楽しみで見ていた視聴者としては、非常にガッカリもさせられた点。ガイのコンファインベント2枚持ちとか、タイガのフリーズベントに王蛇のファイナルベント2枚持ちで返り討ちとか、カードを使った駆け引きがもっと見たかった。

 

◆それでも大好きなブレイド

…と、ここまで酷評に酷評を重ねてきたのだが、矛盾するようで申し訳ない、それでもブレイドが私は大好きなのだ。なんと上記致命的な欠陥を抱えてスタートした本作が、平成ライダーでベストな作品へと化けてゆくのだ。

まず1つ目、死に設定となった「職業ライダー」、これはもうソッコーで死んだので気にしなくて良し。

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そして2つ目、頼りにならない先輩、特に橘さんが、まず化けます。そして情緒不安定な主人公、剣崎くんは、もっと化けます。

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3つ目、アンデッドの通り魔癖は治らないが、ジョーカーの登場でかなり盛り上がり、しまいにはなんと1万年前のバトルが回想にて登場するなど、きっちり挽回してくるのでご安心を(まさかの死に設定終盤で復活)。

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そして4つ目、なぜか使わないラウズカードだが、それこそが本作の最大の魅力ポイントとなっていく。

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つまり「剣」は、一番最初に見せたウリを序盤で全部自ら殺して、真逆の武器で勝負し、最終的に平成ライダー屈指の傑作へと進化した、非常に稀有な作品だったのだ。

勿論、その分1年追いかけるのは大変だった。一緒に見始めた仲間も、減った減った。

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◆オンドゥル語について

だが、そんな私のモチベーションを爆上げしてくれた起爆剤の1つが、実は「オンドゥル語」だった。

序盤は正直、演者たちの演技力も酷いもので、台詞回しの妙な臭さも相まって、真面目に見れたものではなかった。だからこそ、空耳で何度も見て笑い飛ばすくらいが、本当に丁度良かったのだ。

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だから半分馬鹿にしながら見ていたのも確かなのだが、なんだかんだアクションはカッコいいし、珍しくカード使ってくれるとやっぱり燃えるし、そんで橘さんがダサいのにカッコよくて、気がついたら本当の意味で本作のファンになっていった。オンドゥル語そのものには勿論毛嫌いするファンが大勢いることも承知の上で言いたい。リアルタイムで視聴していた者たちにとっては一緒になって楽しめる「祭り」であった。しかも、それだけではなくて、ちゃんと本編も楽しませてもらっていた。特に、橘さんには。

三枚目な登場人物たちだが、ここぞというときにはしっかり決めてくれる。そんな彼らの姿は、「仮面ライダー剣」という一つの番組の姿とも重なる。粗削りで雑多な印象もある三枚目なのだが、確かに光るものもあった。その「二枚目な部分」が、後半になるにつれて、どんどん輝きを増してゆくのだ。

つづく

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