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何があったの⁈「ジャスティスリーグ」〜訳あり劇場公開版からスナイダーカットはどうなる⁈〜


Zack Snyder's Justice League Teaser Trailer (2021) | Movieclips Trailers

いよいよ予告編が公開された、

「ジャスティスリーグ スナイダーカット」!ファンが長年待ち望んだこのザックスナイダー版ジャスティスリーグ、劇場公開版から早3年、本当に色々なことがあった…。

今回はおさらいもかねて、「ジャスティスリーグ」という作品に何があったのか、事情をよくご存じない方も含めてある程度わかるように個人的感想と見解も交えながら色々振り返ってみたい。

ジャスティス・リーグ(字幕版)

◆DCEUとは?

DCEUとは「DCエクステンデッドユニバース」の略称で、2013年公開の「マン・オブ・スティール」に始まる、DCコミックスを原作としたアメコミヒーローたちの映画シリーズの俗称。非公式っぽい呼び名だったが最近公式も認めた模様。

複数の映画を束ねたシリーズ作品といえば「アベンジャーズ」でおなじみ「MCU(マーベルシネマティックユニバース)」が有名だが、それとほぼ同様のものをDCも構想していたと思ってもらって構わない。 

アベンジャーズ/エンドゲーム(吹替版)

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なんだかんだでDCEUも来年公開予定の作品で10作を数える。

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しかし、やはりDCEUの方向性を大きく決定付けたのがど真ん中5作目の「ジャスティスリーグ」だった。簡単に言えば、大きな路線変更の一番の犠牲者となった作品だったのだ。

 

◆失敗作とみなされた「BvS」

一作目となった「マンオブスティール(2013年)」(MoS)からして、それまでのスーパーマン映画とは一線を画した作品だった。

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「明るく爽やかで、どんな局面でも人々を救う無敵のスーパーヒーロー」という従来のスーパーマン像を大きく覆す、「ワイルドで、でもナイーブな悩める等身大の青年」として描写。それは(製作総指揮としても携わった)クリストファーノーランの「ダークナイトシリーズ」のように重厚かつリアルでシリアスな路線のヒーロー映画であった。

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※その作風の違いで、明るく楽しいMCUとの差別化がなされていたように思う。

同じくザックスナイダー監督にて製作された続編が、「バットマンvsスーパーマン(2016年)」(BvS)であった。

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当ブログでも度々取り上げてきたように、私は本作の大ファンである。特にここから初登場のバットマンが素晴らしく、本作で私は一気にDCEUにハマることとなった。

だが、世間的には(一部から)酷評され、興収的にも「失敗作」とみなされたようだ。とりわけザックが描こうとした神話的かつ情緒的で重厚な世界観は、難解で重苦しいと敬遠されてしまったらしい(そこが良いのに)。

増して当時はMCUが「アベンジャーズ エイジオブウルトロン」も大ヒットさせて絶好調の頃。配給元のワーナーブラザーズも焦りに焦っていたのだろう。ただでさえ難解なストーリーに、次作「ジャスティスリーグ」登場予定の新ヒーロー(フラッシュ、アクアマン、サイボーグ)紹介まで詰め込んだことで余計に「訳のわからんストーリー」という印象を強めてしまった。

※本作は確かに見る人を選ぶ作品かもしれない。そこは是非自分の目で確かめてご判断を。これにノレなければ、ザック版JLにもノレないはず。

 

◆テコ入れの嵐と「WW」のヒット

BvSの興行的失敗を受け、焦ったワーナーは公開間近の作品にもテコ入れの魔手を伸ばす。

その最初の犠牲者となったのが、「スーサイド・スクワッド(2016年)」だった。

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私としても「イマイチ」だった本作、監督を務めたデビッドエアー自身も近年になって「かなりの改変を強いられた不本意な作品だった」ことを仄かしている。ジョーカーのシーンが大幅にカットされ、ハーレイとデッドショットの関係も変更、「敵役も実は元々ステッペンウルフだった」なんて情報も出てきており、追加撮影も含めかなりの手が加えられた模様。

※ジャスティスリーグのスナイダーカットがリリースされるように、こちらも「デビッドエアーカット」を強く希望したい。が、完全新作の「ザ・スーサイドスクワッド」(2021年)が公開予定の現在では難しそうだ。

そんな中、続けて公開された「ワンダーウーマン(2017年) 」(WW)が想像を絶する大ヒット!

ワンダーウーマン 4K ULTRA HD&ブルーレイセット(2枚組) [Blu-ray]

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実は本作にもテコ入れの魔手が忍び寄っていたようだが、パティジェンキンス監督はそれをほとんどはねのけてしまったらしい(劇場公開時のパンフレットのインタビューにそのことが仄めかされている)。

「ダークナイト」以来ヒット作にあまり恵まれなかったDCも浮ついたに違いない。何せ「ダークナイト」のように暗くもなければリアルでもないのに大ヒットしたのだ。「明るくて可愛くてめっちゃ強い神様の娘が神様と戦う」というぶっ飛んだお話なのに、だ(褒めている)。

この結果に味をしめたワーナー、この「明るいWW路線」を推し進めようと、完成間近だったJLにもテコ入れの魔手を伸ばす。

 

◆何があったの⁈「ジョス」ティスリーグ

当初ザックスナイダーは3時間にも及ぶJLをほぼ完成させていたらしいが、試写したワーナーの幹部はこれを気にいらなかったらしい。


www.youtube.com

※最初に公開されたコミコントレーラーには、当初ザックが完成させようとしていた世界観が色濃く残っている。

何せ3時間と長いわ、画面は暗いわ、ストーリーも重いわ、相変わらず難解だわで、「WW路線」と真逆をいく作風だったからに違いない。

ではここからは、実際に劇場公開されたJLがどのように改編されたのかを紹介していきたい。

 

◆監督の変更

撮影も完了し、後は編集作業にて完成を待つのみだったJLに不幸が襲う。監督・ザックスナイダーの実娘が自殺してしまったのだ。愛する家族の不幸に、これ以上の製作続行は不可能と判断(した?orされた?)、志半ばでザックスナイダーはJLの監督を降板する。

そして後釜として白羽の矢が立ったのがなんとあの「アベンジャーズ(1&2)」で監督を務めたジョスウェドンだったのだ。

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ワーナーがザックの神話的で重厚なストーリーを嫌い、アベンジャーズのような人間味のある比較的ライトなアッセンブル映画を強く求めていたことが窺える。

 

◆まさかの2時間

監督変更に合わせて、ジョスは2500万ドルという追加予算をかけて大幅な再撮影を実施(ほぼ一本映画が撮れるレベル)。なんと元々ザックが撮影した映像の約6割をカットし、ジョスによって撮影された映像と差替え、更に3時間を予定されていた上映時間は、たったの2時間に縮められてしまったのだ。

こういった経緯を踏まえ、ファンの間では劇場公開された「ジャスティスリーグ」を「ジョスティスリーグ」と皮肉を込めて呼んでいる。ジョス監督にザックのJLが塗りつぶされてしまったからだ。

 

◆キャラクターの改編

実はその最大の犠牲者となったのが本作のヴィラン・ステッペンウルフではないかと思われる。BvSのアルティメットエディションの終盤に登場したホログラムのステッペンウルフは、まさに悪魔とも呼べる恐ろしい怪物の姿をしていた。

しかし、実際に劇中登場したステッペンウルフは、ツノのついた被り物をつけた巨人で、かなりそのデザインを変更されていたことが伺える。

Mattel ジャスティス・リーグ スーパーマン バットマン ステッペンウルフ 3パック

Mattel ジャスティス・リーグ スーパーマン バットマン ステッペンウルフ 3パック

正直言って大して強くもなければスーパーマンに半笑いでボコされた終盤の戦闘力を見ても、同じくジョス監督作「アベンジャーズ」に登場したロキのイメージに近い(ツノのついた被り物含め)。

後は本作が初登場となるヒーローたち、フラッシュやアクアマン、サイボーグの出自については大幅にカットされた。


JUSTICE LEAGUE - Official Trailer 1

第2弾や第3弾予告には、フラッシュの片想いの相手アイリスを救出するシーンが断片的に登場するが、劇場版ではごっそりカット。サイボーグが警官を救出するシーンや、人間だった頃のビクターのアメフトシーンに至るまでも丸ごとカット。その点、直前にヒット作を飛ばしていたワンダーウーマンに関しては、セミッシラの描写も含めてかなり優遇されていた印象。

スーパーマンに至っては「ブラックスーツ」そのものが無かったことに…。 

◆劇伴の変更


Batman v Superman Official Soundtrack | Is She With You? - Hans Zimmer & Junkie XL | WaterTower

BvSでのワンダーウーマン初登場シーンが非常に印象的だった劇伴音楽担当のジャンキーXLまでがザック降板と同時に更迭!ザックが構築してきた神話的世界観を表現し得る伝説のソングライターの降板は実に痛い変更だった。

代わって登板したのが、ダニーエルフマン。ティムバートン監督の「バットマン(1989年)」でも音楽を務めた歴史ある大ベテラン。

しかし、「ほら懐かしいでしょ」と言わんばかりのバットマン音楽の押し付けに、「コレジャナイ感」が爆発する仕上がり。ザックが築こうとしていた神話的世界観とは全くフィットしないメルヘンなサウンドにもはや腹が立つ。

  

◆情報戦の末に…

こんな大改編されたもんだから、当然ザックの世界観を期待していたファンは激怒。公開直後から「ジャスティスリーグのザックスナイダー版を求める署名活動」へと発展。公開後なんとわずか1週間で11万人以上の署名を集めてしまった。

しかし発売されたBlu-rayソフトに収録された未公開映像はたったの15分。メーカーも配給元もみんな「無かったこと」にしながら時が過ぎていった。

しかし、撮影に携わったスタッフがSNSを通じて「ザックスナイダー版はある」とする情報を発信。その度に火消しのように「そんなものはない」とする別の関係者が現れるなど、事態は紛糾。

そんな中、ザックスナイダーも現場復帰。彼の代表作の一つ「ウォッチメン」の未公開映像を含めた完全版ともいえるアルティメット・カットが2019年末発表され、俄然ファンも活気付く。

ウォッチメン アルティメット・カット版 [Blu-ray]

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  • 発売日: 2019/12/25
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そして2020年5月、いよいよ「ジャスティスリーグスナイダーカット」のリリースが正式発表!

8月現在判明しているのは、

・正式名称は「ジャスティスリーグスナイダーカット」

・HBO Maxというワーナー傘下の動画配信チャンネルにて2021年配信予定

・各話1時間の計4話(計4時間!)を予定

・配信以外の方法(DVD?)での販売可能性もあり

といったあたりか。

…と、ここまでがザック版ジャスティスリーグ発表までの簡単な流れだ。

 

◆なぜここに来てスナイダー版?

ワーナー側にも一体どんな心変わりがあったのかはよくわからない。

だがその可能性の一つとして、今後(2022年)公開が予定されている「フラッシュ」の存在が実は大きな影響を与えているとは考えられないだろうか?

「フラッシュ」はマルチバース-多元宇宙論-をベースに、タイムトラベルしたフラッシュによって時間改編が行われてしまう「フラッシュポイント」を原題に製作が進められており、マイケルキートン(過去作別世界のバットマン)登場という噂もあって話題となっている。

フラッシュポイント (DC COMICS)

フラッシュポイント (DC COMICS)

 

このマルチバースという設定が恐ろしく便利。この設定を活かせば、劇場版JLは「ある世界が行き着いたひとつの結果」だし、ザック版JLもまた「別のある世界の姿」となる。黒歴史も何もかも同居できてしまうのだ。

 

それともう1点、配信媒体となる「HBO Max」というワーナーが運営する動画配信サイトの滑り出しを快調にするため、絶対的な「惹き」コンテンツが必要だった、その作品としてJLがぴったりだった、というのも大きいだろう。ザックにとっても、4エピソードで4時間という長尺を確保できる配信サイトの方が良かったに違いない。

 

◆ワーナーの本音とファンの本音

JLをスパッと2時間の映画に仕上げ、逃げるように終わらせたワーナー。その本音は、「もうユニバース路線を終わらせたい」というものだったようだ。

JL以降は各作品ごとに独立した世界観を描ききることに注力。結果、「アクアマン」も「シャザム」も大成功。DCEUではないが同じDC原作映画(ややこしい汗)「ジョーカー」の大ヒットも記憶に新しい。その路線変更自体は大成功、正しい判断だったと言えよう。

ジョーカー(字幕版)

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そんな中、ザック版のリリースをここまで出し惜しみしてきた理由がもし、「DCEUの世界にJLが2つ存在するという矛盾問題」にあったのだとしたら、今やそんなこと、実に下らない問題である。

そもそも多くのファンがここまでザック版JLを熱望した理由は、MoS、BvSに続くザックの3部作(スーパーマントリロジー)がちゃんと完結していないからなのだ。彼らの物語を始めたザック自身の手で、彼らの物語に終止符を打ってほしい。

否もっと単純に、ザックが描く神話の世界を、もっと観たかった!それだけなのだ。だから後続作とのつながりに矛盾があったってどうでもいい、そんなもの大人の脳みそでいくらでも都合良く解釈して飲み込んでやる。

最後に、スナイダーカット公表までに尽力された本作のファンの方々や製作陣に心から感謝したい。闇に閉ざされた名作が再び日の目を見る…私の心もまさに「ハレルヤ」を唄いたい気分だ。

(了)

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