adamomanのこだわりブログ

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バットマンヴィランズの魅力⑦ジョーカー(ダークナイト)〜這い上がる男を突き落とす者〜

警察が自動小銃を買えば彼らもそれを買い、防弾チョッキを着れば、それを貫通する弾を揃え、君がマスクを着けて屋根から屋根へ飛び回れば、こんな男が出てくる…。

彼はバットマンに呼応する形で姿を現した。「お前が蝙蝠なら、俺はジョーカーだ

⑦ジョーカー(ダークナイト)

①〜⑥のヴィランズ記事はこちら。

◆「犯罪都市」から「怪物都市」に

を救うために誕生したはずのバットマンが犯罪を誘発し、新たな悪を生み出すという皮肉。しかしそれも必然だったのかもしれない。

ゴッサムは米国きっての犯罪都市だ。マフィアが街を牛耳り、法廷は買収され、警察は汚職まみれ。しかしある意味単純な街-犯罪者が跋扈する街-だった。そしてそんな「犯罪都市」の時代は、バットマンによって数年の内に終焉を迎える。

マフィアによる支配は、無法地帯のようでありながら彼らなりのルールを保った(あの男の言葉を借りれば)「退屈な街」だった。そんな退屈な時代を終えた今、それまでなりを潜めてきた怪物たちが動き出す。

元々「ただのコソ泥」だった男は、バットマンという怪物の登場をきっかけに、自らの中に眠っていた怪物を呼び覚ます。

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ジョーカーの登場によりゴッサムは「怪物都市」の時代を迎える。それは、人間的説得も法的拘束も通用しない、真の無法地帯の誕生を意味していた。

 ◆世界が燃えるのを見たい男

犯罪者の心理は単純だ。しかしそれはあくまでも「犯罪者」に通用する言葉。我々の常識が通用しない怪物の存在をアルフレッドはこう表現した。「ただ世界が燃えるのを見たい男」だと。

マフィアの命綱である資金の半分を燃やし、「自分こそがこの街の支配者である」ことをその炎で知らしめる。そして金にすがる悪党を下等な存在だと罵る。警察やバットマンの目を盗んではただ小遣い稼ぎをするようなコソ泥ではなく、彼はその犯罪を通して世間の常識と言われる人々の価値観を転覆させることを生き甲斐とした「混沌からの使者」なのだ。 

◆這い上がる男と突き落とす男

ブルースは「人々に犯罪のない街を見せたい」と願い、バットマンになった。それに対してジョーカーは「ただ世界が燃えるのを見たい」がために、あらゆる仕掛けでゴッサムの人々に揺さぶりをかける。

それまでバットマンを歓迎してきた市民だが、「バットマンが正体を明かすまで毎日1人ずつ市民を殺す」と脅迫された途端世論は一変。沈黙を続けるバットマンに、世論の風当たりは厳しくなってゆく。

そしてリースという男がバットマンの正体を明かそうとした途端、今度は「リースを殺さなければ病院を爆破する」と脅迫。すると、被害者であったはずの市民たちが暴徒と化す非常事態に。ジョークにしては笑えない。

世間の言う常識だの倫理だのといったものは簡単に破壊できる、全てジョークみたいなものだと彼は言う。

狂気っていうのは重力みたいなもんだ。ひと押ししてやるだけで十分

しかしバットマンは信じている。人の心にはどんな闇にも打ち克つ光があることを。バットマンはその闇から這い上がった男だからだ。

だとしたらジョーカーは、井戸の上から突き落とす男だ。ダークナイトシリーズで繰り返し登場する井戸のイメージが、ジョーカーのラストシーンにも貫かれている。

ジョーカー確保のシーン。バットマンはジョーカーをビルから地上の闇へと落としたが、命は救ってやった。だが、本当の意味で闇に突き落ちたのはバットマンの方だった。後にハービーの罪を背負うこととなるバットマンの運命が、ここで暗示されていたのだ(だから最後のジョーカーは逆さ吊りだが反転して正しい向きで喋っている)。

その意味でも本作の真のタイトルは(3作目も踏まえて)「Dark Knight Fallen」であり「Joker Pushes」だと勝手に思っている(ジョークみたいだが)。 

 ◆バットマンが失ったもの

ジョーカーとの戦いを経てバットマンは多くのものを失う。

市民からの信頼(最後まで正体を明かさなかった)、レイチェル、倫理観(ソナー装置転用による街全体の盗聴)、光の騎士と言う名の「後継者」、そして真実(「バットマンの無実」と「レイチェルの想い」というダブルミーニング)…etc

とりわけ「街を守る正義の味方:バットマン」の存在価値にとことん揺さぶりをかけた。その極致が「究極の二択」だ。

あの場面で激昂したバットマンがレイチェルを迷わず選んだこと。そしてジョーカーは敢えて2人の居場所を逆に教えたこと。それらを踏まえるとあのときバットマンのマスクは半分剥がされていたと言って良いかもしれない。あのときのバットマンはバットマンの皮を被ったブルースウェインだった

しかしジョーカーはそこには興味を示さない。彼はマスクの下の人間ではなくバットマンそのものを欲しているからだ。

しかしそんなバットマンも最後の最後まで守り抜いたのが「不殺の誓い」だ。

あの取調室で2人は限りなく等しい存在であることを認め合ったに違いない。だからこそ2人を分かつたった一つの境界線をバットマンは死守せざるを得なかったのだ。

だがそのルールは同時にバットマンが一生背負うことになる呪いでもあった。バットマンがジョーカーを殺さなければ、ジョーカーもバットマンを殺さない。2人の戦いは永遠に終わらないのだ。

 

◆ちぐはぐなオリジン

そんなジョーカーは一体何者なのか?彼は自らの出自について劇中で二度語っている。マフィアの前では、

目の前で母親を殺した親父。今度は俺を見てこう言う、『なんだそのしかめ面は?笑顔にしてやるよ』そう言いながら俺の口にナイフを入れて…

レイチェルにはこう語った。

ギャンブル好きだがお前のように美人な妻がいた。そんな彼女の顔に醜い傷ができた。それでも構わないと伝えたくて自分で口を切り裂いた。そしたら妻は出て行った…

鑑賞中、どっちが本当なんだろう?と混乱しながらどっちもあり得そうな不気味さに背筋が寒くなったのを覚えている。

後で冷静になって考えたとき、その時点でジョーカーの手にまんまと乗せられていたのだと気づいた。ジョーカーは相手を恐怖に陥れるため、相手に応じて話を変えている。マフィアの男には父親の話、レイチェルの前に目をつけた白髪の男性にも父親の話をしようとしていた。そして女性であるレイチェルには妻の話をした。

ジョーカーもまた、バットマン同様恐怖を演出し武器にしている。だからどちらの話も演出であり、相手に恐怖を与えるための嘘である可能性が高い。

しかし、自分が最も恐れている蝙蝠を身に纏ったブルースのように、彼もまた自分が最も恐れているものを自分のアイコンにしたとしたら?

笑えない場面で笑っている人間ほど怖いものはない。だからジョーカーの語る昔話には信憑性はなくとも真実味があるのだ。

◆明かされない秘密

我々がジョーカーに恐怖を覚えるのはなぜか?それは、悪党の目から見たバットマンと同じ体験なのかもしれない。

我々はバットマンのオリジンを「ビギンズ」を通して知っている。その強さの秘密も弱さも共有している。

しかし犯罪者たちはそれを知らない。突然現れ、突然圧倒的な力で彼らを制圧する蝙蝠男。何者か予想もつかない。だから恐れる。

我々も同じだ。ジョーカーが何者で、どこから来て、なぜそんな狂人になったのか誰もわからない(犯罪者とバットマン、我々観客とジョーカー、それぞれ対が裏返しになったような構造)。そして人は、そんな訳のわからないモノを恐れる。そんな我々の心理を突くように、「ジョーカービギンズ」が暴かれることは決してない。

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◆そして…

だが、そんなジョーカーのオリジンが語られる時が来た。しかもバットマンの存在しない世界観で。

ホアキン・フェニックス主演作「JOKER」。

ジョーカー(字幕版)

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いずれ当ブログでもじっくりと取り上げたいと思う。