響鬼のこと当ブログではあんまり語ったことないのに唐突に「後半威吹鬼ヘタレ化問題」というニッチ極まりないネタについて語ろうと思います。
合わせてよく言われる「銃ライダーはヘタレ」というのが事実なのか検証したい。
※この記事には、響鬼前半を持ち上げたり、響鬼後半を貶める意図は全くありません。
威吹鬼さんは噛ませ犬へ
俗に言う「響鬼後半路線変更事件」によって早速31話あたりから威吹鬼は弱体化。
この31話は、それまで響鬼で大切にされてきた設定がことごとく崩されていった回でもある。
- 魔化魍の種別の予想もなく、とりあえずイブキ師弟が現場へ
- 物凄く都会のど真ん中が現場なのに17話のような驚きもない
- ディスクは一応展開するけど、アタリが出た瞬間向こうから襲撃→索敵の意味ほぼなし
- 夏の等身大魔化魍なのに威吹鬼は太鼓ではなく烈風で応戦
今後も、真っ先に駆けつけた威吹鬼1人では魔化魍に対抗しきれず、響鬼さんが駆けつける…という流れがほぼテンプレ化していく。威吹鬼は完全に響鬼=主役が到着するまでの引き立て役、噛ませ犬化してしまうのである。
後半で掘り下げられた宗家の設定
本来、響鬼の弟子になるはずだった明日夢が一向に弟子入りを果たさず、作品の縦系となるはずの主役2人の物語が全く進展しないことこそが響鬼前半のシナリオ上の最大の問題点と言われている。
そのため、残り2クール弱でヒビキと明日夢の関係を進展させるための新キャラとして京介が用意された。憎まれながらも、京介は結果的に明日夢を大きく成長させ、自らは見事響鬼の継承者へと成長した。
そして、大人たちをひたすらに頼れる憧れの存在として描こうとした前半の「響鬼」とは対照的に、後半の「響鬼」は、登場人物たちのネガティブな面をひたすらに掘り起こしていく(後付け設定も含め)。
- 両親を殺されたあきらの過去
- 師匠(先生)に殺されかけた斬鬼の過去
- 斬鬼に甘えっぱなしのトドロキの弱さ
- 宗家の人間故に汚れ仕事を任されるイブキ
- 宗家の人間故にあきらから距離を置かれるイブキ
- 宗家の人間故に決断力のないイブキ
- 宗家の人間なのに戦闘力が斬鬼にも響鬼にも劣るイブキ
...イブキよ(涙)
総じて、宗家なのにパッとしないヤツ(或いは実力の伴わないエリート)、という位置付けにされてしまったイブキ。それは一体なぜなのだろうか?
歴代銃ライダーたちと比較
それではここで、「銃ライダーはヘタレ」という俗説の検証とともに威吹鬼が弱体化した理由を考えてみたい。
まず、「響鬼」までの平成銃ライダーとしてノミネートされるとすれば、
G3(仮面ライダーアギト)、ゾルダ(仮面ライダー龍騎)、デルタ(仮面ライダー555)、ギャレン(仮面ライダー剣)といったあたりだろうか?
なんとなく「あー確かにヘタレばっかりかなぁ〜?」と思いきや、よくよく考えると決してそうとも言い切れない。
G3は確かに序盤、全くアンノウンに歯が立たず、ギルスにぶっ壊されたりもしていたけど、G3-Xにバージョンアップしてからはエルロードとも張り合うまでの戦闘力を獲得。何より氷川くんの成長が著しく、劇場版の「もういいだろ!」や最終決戦の「ただの人間だ!」等の名シーンからはヘタレ感は微塵も感じられない。
ゾルダは「龍騎」の作品世界でも指折りの強キャラ。不治の病に倒れるも、それをもってしてヘタレと言うのもおかしい。
ギャレン、確かに彼はヘタレライダーだ!体はボロボロだし、花火がいいとか言うし、試着した服着て帰るし、もずくにハマるし、すぐ騙されるし、圏外だし。
しかし、「いざという時にしか頼りにならない男」とも呼ばれる通り、覚醒したときのギャレンは恐ろしく強い...!一応ヘタレライダーって呼べそうな気もするけれど、いや、そんなことはない!って反論されて当然の実は隠れ強キャラ。
...もうお気づきだろうか。そう、彼らの中で唯一、威吹鬼の噛ませ扱いに近いのが、デルタだ。というか厳密に言えば三原だ。
ドラゴンオルフェノク(北崎)のおもちゃとしてしばらくファイズやカイザを苦しめたデルタギアだったが、気まぐれな北崎が手放したことで所有者不在となり、多くの流星塾生が死んだ後、突如浮上してきたのが三原だった。
元々の非好戦的な性格が幸いしたのか、デルタの副作用が全く見られなかった彼が一応最終的に正式な装着者となった。(家に帰りたいという劇中のセリフと、演者が実際に当時新婚だったことがダブってネタにされていた)
が、彼がつけるデルタのベルトは超ゆるゆる。すぐ外れる。すぐ変身解除。1人で全然オルフェノク倒してないし、ファイズやカイザとの合体技披露のための人数合わせみたいな扱いに終始。巧が来るまでオルフェノクの相手をさせられる噛ませ感も威吹鬼によく似ている。
キャラが薄い?!
何より三原とイブキに共通しているのが「キャラが薄い」ことだ。ファンの方にキレられそうな表現になって申し訳ないが、私自身、特に威吹鬼は大好きだということはここで明言しておきたい。しかし、周りにいるキャラが濃すぎるのだ。
後半戦に差し掛かったイブキの周囲には、もちろん主人公のヒビキとその周りをうろつく京介という濃厚キャラ、そして何より同じサブライダーのトドロキとザンキというこれまた特濃師弟コンビ。この間に挟まれたイブキは「つなぎ」のような役割に終始してしまった。
三原デルタもそう。ライダーサイドには、草加と言う平成ライダーシリーズ屈指の超特濃キャラ、敵サイドのラッキークローバーもすごいメンツだし、村上社長とか癖の強いキャラも多い。加えて海堂もどんどんキャラが立ち始めていた頃。三原が輝くスキマはもうない。
そんな三原デルタ(555)の翌年にギャレン(剣)、そして威吹鬼(響鬼)が続いたもんだから、「銃ライダー」はヘタレなどと言われ始めたのだろう。
終盤の扱いの悪さ
そんなイブキの唯一掘り下げられる要素が「宗家の鬼」という序盤からあまり活かされていなかった隠れ設定だった。
しかし、JK愛弟子にシカトされたり、かすみさんに「泥にまみれたことがない」とガチ目のダメ出しを食らってから結局あきらにも見放され、ろくに挽回の機会にも恵まれなかったイブキ。斬鬼の復活と死、あきらのリタイアと明日夢と京介の弟子入り、とメインどころにそこまで深く食い込めないまま終盤を迎えた。
しかしショックだったのは46話。宗家の鬼として命懸けでオロチを鎮める鬼に指名された威吹鬼は、響鬼に太鼓の特訓を受ける。実戦の場でオオアリ相手に不慣れな太鼓のバチで挑む威吹鬼。全然歯が立たない。
結局見かねた響鬼がなんと威吹鬼の音撃管で援護。え、響鬼さんそんなあっさり音撃管使っちゃうの...威吹鬼の存在意義は...?まぁそりゃあ設定上他の楽器も一応使えるよう特訓はしてるんだろうけどさ...。
威吹鬼は威吹鬼で太鼓すら展開せずひたすらバチでしばきまくってカメラ目線でポーズを決めるというダサすぎる有様...。
そして夜の公園でかすみさんを抱きしめて「死にたくない...!」一方のトドが斬鬼の死を乗り越えて一皮も二皮もむけて逞しく成長しているからこそ、イブキのヘタレ具合が際立ってしまう。
そして結局最終決戦ではヒビキさんに出し抜かれてオロチを鎮める役割も奪われてしまう始末。本当に最後の最後まで主人公を引き立てる噛ませに徹し続ける羽目に。
あんなにクールでかっこよかった序盤の威吹鬼は、そして主役回で武器なしでもボロボロに体を溶かされながら戦い続けたあの威吹鬼は...どこに行ったの??
「響鬼」前半/後半どっち派?
繰り返すが、この記事には、響鬼前半を持ち上げたり、響鬼後半を貶める意図は全くない。
個人的には、前半では「クウガ」以来となる髙寺Pらしい温かく丁寧に構築された世界が楽しめたし、後半では同じキャラクターたちが織りなす「アギト」とか「555」っぽい世界が楽しめた。何かと批判の的になりやすい「恋する鰹」なんか結構好きなエピソードで、そもそも「響鬼」の役者は皆演技力が高いからコメディ回も普通に面白かった。
井上脚本らしい荒削りだが瞬間風速が凄まじい盛り上がりを生み出す濃厚キャラ群像劇も楽しい。特に轟鬼×斬鬼師弟のドラマは熱かった。
だが、その狭間で引き立てきれずに終わってしまったキャラクターが威吹鬼だった。もうこればかりは仕方ないのだろうが、前半後半問わず両方楽しめた私としては、これだけは残念で仕方なかった。
しかし、物語の上で目立たせられなかったのはある程度仕方ないとは言え、戦闘シーンではもう少し輝かせてあげても良かったのでは?と思ってしまう(シナリオとバトルは不可分なのだろうが)。終盤が近づくにつれ、バタバタ走ってって銃で殴りに行って乱戦...という流れが定着しちゃって、鬼ごとの属性もクソもなくなってつまらなくなったのは正直なところ。
要は、サブキャラを弱く見せて主役を相対的に強く見せるやり方が気に入らなかった。
※これは「555」のデルタも同じだし、「カブト」とか含め一部の平成ライダー作品の悪い癖だったと思う。
13話で見せた乱れ童子との長回しの格闘戦なんか、結果的に押されてしまったけれども、平成ライダー史に残る名バトルでしたよ!最終的には響鬼を立てる形になったとは言え、しっかりプロフェッショナルとしての威吹鬼のカッコ良さも光っていた(もちろん「宗家」の名に恥じないカッコ良さでした)。
サブキャラの強さもしっかり見せて、それすらも上回る主役の強さが感じられる。ヒーローの描き方は、ひたすら足し算が良い。
とりあえずそれだけは言っておきたいと思う。