本記事は「ウルトラの父はなぜ死んだのか?」考察からの派生でヒッポリト星人について深めた記事です。
何度見てもヒッポリト星人マジでつええよなあと思ったのでそのことをなるべく劇中描写のみから考察してまとめてみました。ですので各種書籍に記載のカタログスペックについては触れませんので悪しからず。
宇宙最強の「ある能力」
「ウルトラマンA」の第26〜27話に登場し、ウルトラ五兄弟を全滅させた挙句、ウルトラの父まで倒した強豪中の強豪、ヒッポリト星人ですが、よくよく本編を見るとめちゃくちゃ多彩な技を持っています。劇中で確認できたものを列挙すると…
- 風地獄(口から突風を噴き出す)
- 火炎地獄(口から火炎放射)
- 両手の間からミサイル発射
- 自身の巨大な虚像をスモッグに投影する
- 岩投げ
- 瞬間移動
- ヒッポリトカプセルの遠隔操作
- ヒッポリトタールによるブロンズ化
- 火炎拳(両手に炎を纏った攻撃)
- 目から怪光線
- 頭部閃光による目くらまし
- 腹部球体からの光線
二話連続で登場した時点で特殊ではありますが、それにしてもかなり豊富な武器を持っていますね。そのことにも驚きですが、今回私が最も注目したのは、「頭部閃光による目くらまし」攻撃が、ウルトラの父のウルトラアレイを受けた直後、まるでそれを模倣するかのように発せられた点です。公式設定でもなんでもないただの妄想ですが、ヒッポリト星人には相手から受けた攻撃をそのまま即座に模倣できる「コピー」の能力が備わっているのではないでしょうか?
その仮説を元に他の能力も確認してみましたが、例えば「両手の間からのミサイル発射」は、TACから細胞破壊ミサイルを投下された直後に披露しています。TACの最強武器さえも瞬時にコピーしていたのです。
そう考えると、他の能力に関しても実は元々ヒッポリト星人に備わっていた能力ではなく、他の星の生物らとの交戦時に身につけた(模倣した)能力だったのかもしれません。
地球に現れて真っ先に「我らは宇宙で一番強い生き物、ヒッポリト星人」と自称していましたが、その二つ名にも恥じない、まさに最強の能力を持っているのかもしれません。
怪獣化したウルトラマン
また、ババルウ星人の考察記事からの派生で考えると、ヒッポリト星人にもウルトラ族の血が混ざっていることが予想できます。
↑ババルウ星人の正体がウルトラ族と他の星系の邪悪生物との混血ではないか?ということと、ウルトラ族の生態について考察しています。
少々こじつけっぽさはありますが腹部の赤い球体はカラータイマーの名残であり、黄色の複眼と背部の大きなヒレ状のものもウルトラ族の名残と見ることができます。
ただ、体表組織や尻尾のようなものの存在も含めて考えると、「地獄星人」の異名もさることながらその見た目はもはや怪獣(超獣)に近いように感じます。実際、初登場時は地球人に「超獣だ!」と言われていましたし。
また、腹部の球体は常に赤い状態で点滅することもなく、カラータイマーとしての機能はないようでした。よって、ウルトラ族の血は薄いように思われますが、上述の「コピー能力」と「他の超獣とは比べ物にならないほど高い戦闘能力」から考えても、ウルトラマンに近い存在であると考えた方がむしろしっくりきます。ウルトラマンもまた、地球に「入植」することで人間を「模倣」し、すっかり人間らしくなってしまった存在だったからです。
知略に長けた殺人鬼
エースとの初戦の接近戦では結構一方的にボコられていましたが、その後のセブン戦やウルトラの父戦では彼らと対等に渡り合っていたことから、これはエースを油断させるための芝居だったのではないかと思われます。もしくは、このときエースの戦術をもコピーしていたのかもしれません。(だから後にセブンや父をも圧倒できた?)
また、四兄弟の前に高笑いとともに姿を現し、彼らの注意を自分に引いておいた上で、真上からヒッポリトカプセルを初代ウルトラマンとゾフィーに投下した手口は実に鮮やかでした。この2人はとりわけ歴戦のベテランですから、真っ先に動きを封じておきたいはずです。
続いて、ウルトラブレスレットに手を添えた瞬間に帰ってきたウルトラマンを捕縛したのもタイミングが完璧で、事前に全ウルトラ戦士のことを綿密に調べ上げていたとしか思えません。
四兄弟を同時に相手にするのは無理ですが、一対一であれば負けないという自信があったのでしょう。残るセブンは普通に格闘戦で圧倒しています。
エースがウルトラサインを出した際も、「ウルトラサインが出たな」と言っており、ウルトラサインのことやウルトラ兄弟のことも熟知していました。最初からウルトラ五兄弟の全滅が目的であったのは間違いありません。
そしてそのために、実はずっと前からヤプールとウルトラ戦士の戦いを観察し分析していたのではないでしょうか?やはり、ヤプール全滅後にヒッポリトが現れたのは偶然ではないはずです。
ウルトラ戦士にとっての「死」
しかし、なんといってもヒッポリトカプセルの威力は凄まじいです。
生きたままタール漬けにしてしまうという猟奇的な殺人方法ばかりが注目されがちですが、カプセルそのものにウルトラ戦士の動きを封じる何らかの仕組みが存在しているように見えます。
ヒッポリト星人の頭部が光ると同時にカプセルの何らかの機能が連動することで、まだタール漬けになっていないのにどのウルトラマンもカラータイマーが即刻赤に変わっています。そして全身がタールで覆われるより前に動きがほぼ止まっていました。実は死因はタール漬けと別のところにあるのかもしれません。
「ウルトラの父はなぜ死んだのか?」考察記事でも触れた通り、ウルトラマンの死には、「エネルギー切れによる活動停止」と、「生命そのものの喪失」の二種類が存在しています。
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いわゆる「ウルトラマンが負けた」と言われるエピソードでは前者のパターンが圧倒的に多いのですが、ゼットン戦での敗北や、今回の兄弟全滅は「生命そのものの喪失」が死因と思われます。事実、ウルトラの父のカラータイマーを受け取ったウルトラ兄弟たちはいずれも(タイマーが点滅はしていたものの)、即座に活動を再開しており、肉体にエネルギーを残したまま死んでいたようです。自動車で例えるなら、ガソリンは残っているのにエンジンだけを抜き取られたような状態です。
なお、ウルトラの父はガソリンがほぼ切れた状態でエンジン(カラータイマー)を外して息子たちに分け与えたことになります。あの場で、命さえ与えれば残りのエネルギーでヒッポリトを倒すことができたのは唯一タールを洗い落とされていたエースしかいなかったのです。
ベーターカプセルとヒッポリトカプセル
つまり、ヒッポリトカプセルには、ウルトラマンの命そのものを直接抜き取る能力があるということです。これは恐ろしい。
そしてなぜヒッポリト星人にそんなことができるのか?それは上述の通り、ヒッポリト星人は怪獣化したウルトラマン=ウルトラマンの反転した存在だったからです(エースキラーがマイナス宇宙に待ち構えていたように、ヒッポリト星人もまた我々の住む世界の裏側の世界の住人)。
ゾフィーを初めとしたウルトラ戦士たちが、一度は死んだウルトラ戦士に命を与える姿を我々は幾度か目にしていますが、ヒッポリト星人はその逆ができるのです。
そしてその装置が「カプセル」というのも面白い。元々ウルトラマンが変身するとき=ウルトラマンをこの世に召喚する際には「ベーターカプセル」を点火する必要がありましたが、その対極にあり、ウルトラマンをこの世から葬り去るために点火されるのが、ヒッポリトカプセルなのです。
任意にウルトラマンを呼び出すためにウルトラマンを幽閉しているのがベーターカプセルだとすれば、ウルトラマンを幽閉し殺害するのがヒッポリトカプセル。
加えて、タール漬けにしているのはヒッポリト星人の趣味というか演出かもしれません。かなり悪趣味に思われるかもしれませんが、ウルトラマンの死を象徴的に演出することが目的でしょう。そして人類を精神的に屈服させることこそが彼らの狙いです。
過去登場したガッツ星人やナックル星人らと手口は似通っています。彼らの狙いはあくまでも地球人類の征服です。
ヒッポリトカプセルは有限
ところで、なぜウルトラの父にはヒッポリトカプセルを使わなかったのでしょうか?それはおそらく、ヒッポリトカプセルの手持ちが無くなったからだと思われます。
ウルトラ五兄弟の5基と、自分の幻影を映し出すための自分専用のものがおそらく2基の、合計7基があったはずですが、自分専用の2基はエースと竜隊長にそれぞれ破壊され、ウルトラの父が到着したときにはすでに手持ちがゼロになっていたと思われます。合計7基のうち1基は普通に考えて予備だと思いますので、やはりウルトラの父の出現は完全に想定外だったようですね。
ポータルとしてのカプセル
東京に現れた実体のないはずのヒッポリトが街の破壊行為が可能だった件について、結構ここをツッコミどころとして手厳しく見る向きがあるようですが、私はあまり気になりませんでした。宇宙最強の異星人の超科学です。物理攻撃可能な映像の投影くらいできそうな気がしますね。おそらく、ヒッポリトカプセル自体がポータルの役目も果たしていて、攻撃によって生じる衝撃波や突風や火炎やミサイルなどをワープさせているのでしょう。そして、そのポータルとしての機能を発展・昇華させたのが、ヒッポリトタールの流入です。あの透明なカプセルそのものに大量のタールが入っているようには見えません。
カプセルそのものがどこからともなく現れるのも同様です。ヒッポリトカプセルの本当の能力は、任意の物体のワープなのです。
最大の弱点
そんなヒッポリト星人の弱点は、攻撃力に比して防御力が極端に弱いことだと思われます。
たまたま通りかかったタクシーに衝突されてバンパーに細胞の破片が残っていたことから、等身大であれば普通乗用車の衝突だけで負傷させることができるようです。
その反省を活かしてか、次からは巨大化して谷に潜んでいました。しかしかえって簡単にエースに発見されてしまうことにもなります。エースが飛来しても無抵抗だったことから、カプセル内で自身の幻影を操っている間は外部からの攻撃に対応できないのかもしれません。
また、ヒッポリト星人最大の武器であるヒッポリトカプセルも、エースのアロー光線で瞬時に爆散していますし、もう1基もチャージ50%の細胞破壊ミサイルで竜隊長によって破壊されていて、外からの攻撃には滅法弱そうです。
ヒッポリト星人自身も最終的にメタリウム光線で爆散していたことから、その耐久力は一般的な超獣と大差ないものと予想できますね。
加えて、街中で暴れているのがスモッグに投影したホログラムであることをエースやTACに見抜かれるとも思っていなかったようで、その直後の戦闘では動揺もあるのか、防戦一方になるか感情的に暴れる姿も見られました。
計画性が高いが故に、想定外の出来事には弱いとも言えます。
また、終盤でヒッポリトカプセルを使用しなかった理由が、頭部発光体の破損による可能性もあります。ウルトラの父との戦闘やTACの一斉射撃でも執拗に頭部が狙われており、特に三つの発光体は、ヒッポリトカプセルの操作に不可欠な器官のようですから、ここが欠損するとあらゆる妖術が使えなくなると思われます。
メタリウム光線直撃前はこの三つの発光体の一つがひん曲がってヨレヨレになっており、ここも弱点だったと言えるでしょう。
(了)