平成ガメラ三部作で語られているのが、「ガメラはギャオスに対抗して造られた」ということです。この2体の怪獣は完全に対の存在として描かれていますが、ギャオスが無性生殖によって単一個体でも産卵が可能、無限に増殖できるのに対して、ガメラには生殖機能がなく、たった一匹で無数のギャオスと戦っていました。
そして実はこの「たった一匹で」というところに、なぜガメラが亀のような姿をしているのか?という理由が隠されているように思えるのです。
存在しない亀
はじめに断っておかなければならないのですが、平成ガメラ三部作の世界には「亀」に相当する生物は存在しない(という設定だ)そうです。
だから誰もガメラを見ても「亀だ!」とは言わないわけです。これは非常に面白い設定だと思います。おかげで陳腐なセリフが飛び交うことなく物語が進みます。
増して劇中人類の気持ちになってガメラを見ると…さぞ不可思議な印象を持つに違いありません。
ガメラの神秘性を増すのにこれ以上ない効果を発揮しています。
災いの影・ギャオス
ガメラの正体を把握するためには、最初に開発されたギャオスのことをよく知る必要があります。
ギャオス開発の経緯や根底の思想については「ガメラ3」で倉田が詳しくその仮説を語ってくれていました。
地球環境を破壊し続ける=地球のマナ(万物に宿る生命エネルギー)を消費し続ける人類の幕引きを担う存在としてギャオスが創造された。だからギャオスは恐ろしいほどに徹底して人類を滅ぼすための害獣として設計されています。
単為生殖が可能で、その繁殖スピードはハツカネズミをも上回り、天敵がほぼいない分共食いによって淘汰適応を実現、獰猛かつ凶暴な性格で人間を喰らう肉食性の怪獣です。「3」では復活から5年ほどで現在の地球環境に合わせた遺伝子の変化=進化を始めていることが語られています。
なお、そんなギャオスが最も好む生育環境が、「マナが激減した土地」です。
ガメラの墓場
そして、ギャオスが活動を開始すると同時に眠りから目覚めるのがガメラです。
ギャオスとは逆に、その身体にマナを注ぎ込んで誕生したのがガメラです。
他にもギャオスとは対照的な特徴がガメラには多数見られます。
・生殖機能はなくあくまで単一の個体
・人間(特に少女)と勾玉を通じて交信し成長する
・人間を守るために行動することがある
・身体をより戦闘に特化させた形態に変化させていく
・瀕死の状態から何度でも蘇生できる
碑文にも「最後の希望・ガメラ」と記されたように、たった一匹で大量発生するギャオスと戦うように設計されているようです。
フツーに考えれば、大量繁殖するギャオスに対して同じようにこちらも数で圧倒した方が有利に思えます。が、そうはしなかった。と言うより、出来なかったようです。
そのことは「3」に登場した「ガメラの墓場」が証明しています。作りたくても一匹しか作れなかった。それくらい、ガメラを完全な生物兵器として完成させるのは至難の業だったようです。大量のプロトタイプが海底に放棄されていました。
亀は万年
いずれにせよ、たった一匹で地球を守らなければならない以上、その一個体には圧倒的な生命力が必要です。それゆえ、ベースとなる生物には生命力が高い=マナが多く宿る生物が選ばれたのでしょう。それが、亀だったのです。
亀は非常に寿命が長い生き物として有名です。
ガメラの世界ではもう亀を見ることはできない(既に絶滅している)ようですが、アトランティスの古代文明においても寿命が長い生き物として、つまりマナを多く持つ生物として神聖な動物=もしかすると神の使いのように崇められていた可能性もあります。
(了)