◆もしバットマンが◯◯だったら…
バットマンに登場するヴィラン(悪役)は、ほかのアメコミヒーローのそれと比べて圧倒的に知名度が高い。
ジョーカー、キャットウーマン、トゥーフェイス、ハーレイクイン、ペンギン、リドラー、ラーズアルグール、デッドショット、スケアクロウ、ベイン…etc
この中でも3人以上は知っているor聞いたことがあるという人は多いのではないだろうか。
例えばアイアンマンも、バットマンと並んで今や超人気アメコミヒーローだが、アイアンマンの代表的なヴィランを挙げた所で、何人知っているだろうか?マンダリンすら知らないという人が実は大半だろう。
バットマンヴィランズは、アメコミヒーロー界でも飛び抜けて知名度と人気が高い。その人気の秘密は、実はバットマンという作品の特異性にあると思っている。それは、バットマンも、そして犯罪者たちの大半も、みな普通の人間であるという点だ。だから彼らはみな、人間社会から見ればただの犯罪者なのだ。
そして、バットマンを構成する様々な要素【恐怖、正義、二面性、異形、暴力、知力、秩序】は、いずれも暴走すれば凶悪な犯罪者を生んでしまう。
バットマンヴィランズは、それぞれが「もしバットマンが◯◯だったら?」という、バットマンの分身(分岐し得た未来)として描かれているように思われてならない。
※各キャラの出自や特徴が多岐に渡るため、本記事では、実写映画版のヴィランズを主に扱う。
①スケアクロウ(バットマンビギンズ)
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スケアクロウは、バットマンを構成する要素の内「恐怖」に特化した怪人だ。
その不気味なマスクは、毒ガスを浴びた人間に恐怖を植え付けるアイコン=スケアクロウとしての役割と、自身を毒ガスから守るガスマスクの役割の両方を同時に担っている。
バットマンと対峙した際は、その強力な毒ガスで、ブルースの蝙蝠への恐怖や、井戸に落下したトラウマと、両親を目の前で失った絶望までを連鎖的に呼び起こさせ、バットマンを3日間寝たきり状態にまで追いやった。
しかし中盤、復活したバットマンに今度は自分の毒ガスを吸わされ、恐怖に溺れて完全に狂人と化した。
「相手に恐怖を植え付けるための仮面」というのも、2人の大きな共通点だ。そして自らの「恐怖」を武器にしながら、最大の弱点もまた「恐怖」というのが2人の面白いところ。
ブルースの父の言葉が蘇る。
「恐ろしく見える動物ほど、実は臆病なのだ。」
②ラーズアルグール(バットマンビギンズ)
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バットマンの「正義感」が暴走した姿が、ラーズアルグールだ。
影の同盟と名乗る殺し屋忍者集団を率い、太古の昔よりローマやコンスタンティノープルといった大都市を腐敗する前に壊滅させ、今またゴッサムを狙うエコテロリスト。
正義は公平でなければならないとし、人殺しには同じ目に遭わせる(=極刑)ことが信条の過激派でもある。
原作では「ラザラスピット」という泉に浸かることで永遠の命を保ち続けているラーズアルグールの特性を、劇場版では「替え玉を使う」ことによって不死身のように「演出」。
つまり彼もまた「替え玉」というラーズの仮面を(体の外に)つけたコスプレ自警団であり、バットマンの師匠(ほぼ生みの親)でありながら最初にして最大の強敵。
ラーズ自身もブルース同様愛する家族を失っており、その「復讐心」が原動力となっている。
ブルースに愛する人がいなければ、良心とも言える後見人たちがいなければ、ブルースは間違いなくラーズの後を継ぎ、ゴッサムを滅ぼすために凱旋していたに違いない。
③トゥーフェイス(ダークナイト)
バットマンも常に抱えている「二面性」の崩壊がトゥーフェイスを生む。
誰しも二面性を持っている。隠し事や秘め事、他人には見せられない危険な一面。それらが肥大化し、1人の人間の人格の中で抱えきれなくなったとき、暴走した狂気こそがまるで本性であるかのように、表に現れてしまうことがある。仮面もつけず、狂気を剥き出しにしてしまった怪人がトゥーフェイスだ。
バットマンとトゥーフェイスは「愛ゆえの暴走」という点で似ている。
「バットマンビギンズ」でのタンブラーの初陣、多数のパトカーを巻き込んでの派手なカーチェイス。レイチェルを救うためという口実があったにせよ、その危険行為はアルフレッドにたしなめられる。
ハービーもまた、愛する人を失った悲しみを「運」のせいだとして、その瞬間を他者にも迫り、銃を突きつける。
愛と暴力が結びついたとき、人はどこまでも利己的になれる。そしてその隙間を「内なる怪物」は常に狙っている。その怪物に食い殺されるか、怪物を飼いならすことができるか、バットマンもまた常に「トゥーフェイス」に堕する危険な綱渡りをしている。
彼が執着している「運」もまた、ブルースが幼い頃に感じた憤りと同質のものだ。「あのとき僕が早く劇場を出たいと言わなければ…」
悲劇の前には必ず「オモテかウラ」の選択がある。
悲劇を前にしたその路地裏で、今も足踏みを続けているのがトゥーフェイスという男なのかもしれない。
④ペンギン(バットマンリターンズ)
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彼は生まれながらにして奇形児だったが故に両親に捨てられ、行き着いた下水道で育てられたというあまりにも哀しいバックボーンを持つ。
しかし、下水という裏社会の闇で生きていく姿、自身が異形の存在故に感じてきた疎外感。どこかバットマンと重ならないだろうか?
近しい一面があるからか、ブルースはテレビに映るペンギンを一目で「嘘つきだ」と見抜く。
バットマンは「正義の味方」でありながら誰からも理解されない社会のつまはじき者。ペンギン同様、人間と怪物の間を綱渡りするグレーな存在なのだ。
ただ、2人を決定的に分かつのは、「両親からの愛の有無」だったのかもしれない。
2021年公開予定の「ザ・バットマン」にも再びヴィランとして登場予定のペンギン。どのような形で描かれるのか、非常に楽しみだ。
⑤デッドショット(アロー)
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※劇場版よりドラマシリーズ「アロー」版の方が好みなのでこちらで紹介。
バットマンが貫く「不殺の誓い」の正反対をゆく男こそ、デッドショットだ。もし相手を殺そうと思うなら、速くて確実な銃器を極めるのが一番早い。「暴力」を極めるなら、バットマンもデッドショットになっていたであろう。
彼は多くの場合殺し屋として雇われているだけで、殺しそのものに動機はない。むしろ、銃で確実に相手を仕留めること自体を楽しむ「内なる怪物の虜」となった怪人であり、それは即ち「もしもバットマンが内なる怪物に飲み込まれたら…」を象徴する存在でもある。
しかし忘れてはならないのが、彼の妻子の存在だ。
それが彼を単なるヴィランとやや一線を画した複雑かつ魅力的な存在にしているのだが、「アロー」版のフロイドは、戦場で精神を病んだ帰還兵として描かれ、錯乱し妻に銃を向けてしまったシーンは涙を誘った。
銃だけでなく、「家族」もまたバットマンが手にすることのできなかったもの。
デッドショットもやはり、バットマンの鏡写しとなる存在だ。
⑥ベイン(ダークナイトライジング)
ベインこそブルースの影と言える存在かもしれない。ブルースが修行を重ねた「影の同盟」の兄弟子であり、果たされなかったラーズアルグールの使命=ゴッサムの破壊を実現するため、緻密なテロ計画を引っ提げてゴッサムへやってくる。
もしもあのときブルースが殺しを断らなかったら(ビギンズの囚人処刑場面)。ブルースこそが真のベインとして、ゴッサムを破壊する志士となっていたはずだ。
圧倒的な身体能力。多数の部下を命がけで仕えさせるカリスマ性。そして緻密な策略を練る知能。全てにおいてバットマンを凌駕。
ブルースがコウモリを纏い、ゴッサムにもたらしたのは「秩序を取り戻す革命」であった。マフィアたちは成りを潜め、夜の闇に怯え、情勢は一変していく。
ベインがゴッサムにもたらしたのは、「破壊と混沌による革命」である。しかし「革命」と名乗るだけあってその破壊行動には大義名分が与えられていた。デント法の真実を叫んだゴードンの原稿である。それによって犯罪者たちに決定的な動機を与え扇動することに成功。同時多発テロの形をとったラーズをも上回る劇的な手法だった。
しかし、最終的に真の黒幕がタリアアルグールだったことが判明。ベインはその尖兵として働いていたに過ぎなかった事実が明るみになると、ベインの動機=タリアへの愛が僅かながら描かれる。
これをブルースに置き換えてみよう。ブルースの側に、もしずっとレイチェルがいたら。そのレイチェルまでもが司法を捨てて過激な破壊集団の1人になったとしたら。ブルースは正気を保てていただろうか?
ブルースの究極の「What if?」がベインなのかもしれない。
⑦ジョーカー
次回、個別記事の予定。
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